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TOSSランドNo: 4827318 更新:2012年12月31日

輪郭漢字カードはどのように誕生したか


<要旨>
漢字を教えたいなら、漢字を主役に、絵を脇役に。絵はギリギリまで情報量を減らし、漢字に目が行くようにする。

<輪郭漢字カード> 上が おもて面 下が うら面

Omote
Ura

1 従来の漢字カードの分析

 輪郭漢字カードは、従来のカードを分析し、その欠点を克服することを考えて作った教材です。
 新しい教材を開発するには、従来の教材の分析がなによりも必要です。

Juurai

私はこれまで上図のような従来品を使って、漢字指導を行ってきました。
 クラスの知的障害がある子供は、表を見せると、「イチゴ」と答えることができましたが、裏だけ見せても、なかなか「イチゴ」と答えることができるようになりませんでした。
 なぜこのようになってしまうのでしょうか。山本いずみ氏と私は、カードそのものに問題があるのではないかと考えました。
(従来品のような)絵がメインのカードだと、漢字の読みを、いつまでも絵に頼ってしまうのです。漢字に目が行かず、絵だけ見て答えているのです。
 我々は、「子供の目はどこに行くか」の観点から、従来のカードには三つの問題があることに気づきました。

(1)位置
 絵が中心にある。当然子供の目は中心のものに行く。左上にある漢字に行きにくい。
(2)大きさ
 絵が大きくて、漢字が小さい。当然、漢字に目が行きにくい。
(3)リアルすぎる絵
 漢字を教えるために絵がある。絵は必要なのであるが、絵に子供の興味が行き過ぎてしまう。絵にしっかり色が付いていて、本物のイチゴのように見える。絵に情報量が多いのである。主張しすぎているのである。

つまり、問題点は次のようにまとめられました。

漢字を教えたいのに、絵が主役になっている。

 改善の方針は明らかになりました。

漢字を主役し、絵を脇役にする

 漢字は裏面のように中央に配置すれば良い。あとは絵です。工夫の中心は、絵をどのように脇役にしていくかでした。

2 輪郭漢字カードの誕生~絵の情報量を減らす

 絵はそれだと分かれば良い。それだと分かるギリギリの情報量。それは「線画」です。さらに情報量を減らすと、「輪郭だけの絵」になります。
 この輪郭の絵を漢字の周りに配置して完成したのが、試作版の輪郭漢字カードでした。
 試作版では漢字も絵もマジックで描いてありました。このことによる問題点は二つありました。

(1)子供は、全体を一つとして認識してしまう。漢字と輪郭線で一つと思ってしまうのである。線のタッチを、漢字と絵で違わせる必要がある。
(2)まだ絵の印象が強すぎる。マジックだと、きつすぎるのである。

 そこで輪郭線を、色鉛筆で描くことにしました。それも「薄く」です。
 このことで右記の二つの問題点をクリアすることができました。

輪郭線を「薄く」描く

 これが輪郭漢字カードの最大の特長になりました。ここに輪郭漢字カードは完成に至ったのです。

3 「絵と漢字が一体化」の効果

 輪郭漢字カードは、実物を示す「絵」と「漢字」が重なり合って一体化しています。両者の距離はゼロということができます。そのことを、障害児における認知学習の研究者が高く評価してくれました。慶應義塾大学教授の山本淳一氏です。
 山本氏は、講演の中で次のように述べられました。

 一般のカードは、左上に小さく「漢字」があり中央に「絵」がある。このように両者が離れていると、障害がある子供は別のものとして認識してしまう。ちょっとでも離れていると、子供は混乱してしまい、二つが結びついていかない。
 子供の認知の世界、とくに発達障害をもつ子供の認知の世界というのは、物と物がちゃんとそこに接近して関連性があるっていうふうなことがないと、それを結びつけてとらえるということが困難なのである。(平成一五年三月、本校における講演会より。文責:五十嵐)

 絵と漢字が少しでも離れていると、それだけで子供は混乱するということです。ましてや、表に絵、裏に漢字という作りでは、子供は両者の関連性をまったく分からないとのことでした。
 輪郭漢字カードの開発の方向は正しかったのです。

※この論文は、教師向けの教育誌『教室の障害児』(明治図書)第五号に書いた論文を、一部書き改めたものである。


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