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TOSSランドNo: 3608019 更新:2012年12月30日

音律


音楽の数学的な調和を授業する。
音律の授業。
2009年3月15日(日)。第一回千葉飛翔セミナーでのC表模擬授業。

1.主張したいこと

音楽の数学的な調和を授業する。
中世において、音楽理論は自由七科(文法、論理学、修辞学、算術、幾何学、天文学、音楽)のひとつに分類された。そこでは、音楽の調和(ハーモニー)は、自然界の調和の象徴であるとされ、音楽理論は算術・幾何学・天文学と並ぶ数学的四科のひとつとされた。そして、他の数学的学問と同様、自然界に内在するある種の世界観を追求する学問と考えられていたのである。
2006年にOECD(経済協力開発機構)「生徒の学習到達度調査」(PISA)が実施された。
PISAでの数学リテラシーの定義では、「数学が世界で果たす役割を見つけ、理解し、現在及び将来の個人の生活、職業生活、友人や家族や家族との社会生活、建設的で関心を持った思慮深い市民としての生活において確実な数学的根拠にもとづき判断を行い、数学に携わる能力」とある。
なお携わるとは、数学を使う、数学を使ってコミュニケーションを行う、数学的な視点に立って考えるなど機能的な面から、数学のよさを知り楽しむなど審美的な面までを含めた幅広い意味を持つことだ。
また、文部科学省の『言語力の育成方策について』で、数学・算数科について「予測や推測を生み出しそれらを確かめたり、よりよい予測や推測
をしたりするための指導を行うことも大切である」とある。
 ピタゴラスは弦の長さの比から、いまでいうドレミを作った。
この「音律」の授業では、ピタゴラス音律や純正律、平均律を予測・推測する。
数学的な視点から音楽を考え、音楽と数学の機能的な面、審美的な面を扱う。
数学的根拠にもとづいて、音楽の美しさを認識し、音楽の数学的な調和を授業する。

2.教材研究

 音は、空気を振動させることによって伝わる。耳で聞く音は空気を媒介とする音波である。初めに振動を発生させるものを音源という。ハープ、ギター、ピアノでは弦が音源である。
ギターの弦や笛の中の空気は、それぞれ特有な振動をする。両端を固定して張った弦をはじくと、一定の高さの音が出る。
ピタゴラスは、箱の上に弦が一本張ってあるモノコードとよばれるもので、弦の長さを変えてはじいてみた。弦をはじくと澄んだ音がでる。これを基音とよぶ。
弦の中心を押さえて、弦をはじくと弦の両半分が同じ音を出す。基音より1オクターブ上の音である。弦を3:2に分けたとき、それぞれの部分をつまびくと、基音より5度上の音(ドに対してソ)になる。
弦が単純な「比」のとき音は調和し、そうでないとき音はうまく調和しなかった。1オクターブと5度の比率関係から、「ピタゴラス音律」と呼ばれる音律を作った。
音律とは、美しく響く音の振動数の比率であるが、古い時代においては弦の長さの比率である。
この振動数または弦長数の比率を数学的に規定したものを「音律」という。また、美しく響く音を、「うなり」(音の大きさが周期的に変化してワーン、ワーンというように聞こえる音)がない「純正」な音(純音)と言う。
ピタゴラスは、「比」は音楽の美しさ、数学の美しさ、自然の美しさを支配していると考えた。
音楽、数学、自然の美しさが、惑星モデルにつながった。
ピタゴラスの考えは、地球はすべての中心にあり、太陽、月、惑星、恒星はそれぞれ、地球のまわりを回っており、地球からの距離の「比」が秩序だっていて、太陽、月などが動くことで音楽が奏でられていると考えた。
外側の木星と土星はもっとも速く動きもっとも高い音を、月などの内側の惑星は低い音を出し、動いている惑星によって、“天体のハーモニー”を生み出す、数学的なオーケストラと考えられていた。
このような考えから、ピタゴラスは「万物は数である」と言ったのである。
17世紀、天文学者のケプラーは、惑星間の関係を音程比によって算出し、宇宙の調和というピタゴラスの観念を、数値によって証明しようとした。
 「ピタゴラス音律」は単旋律を美しく響かせる音律として、グレゴリオ聖歌が中心的な存在であったヨーロッパ中世から13世紀に至るまで幅広く支持されていた。
 5度を重ねていくと、7オクターブ上の音で、「純正」なオクターブの響きがしない。本来の7オクターブ目の音よりもやや高い音が鳴り響く。これが、「ピタゴラス・コンマ」として知られているものである。
また、3度(ドとミ)の弦長比は64:81と複雑になり、かなり濁った響きであった。3度に「うなり」のない「純正」な響きを求め、音律は「ピタゴラス音律」から「純正律」へ移っていく。
 中国の三分損益法も「ピタゴラス音律」と同じ理論である。紀元前3世紀頃編集された『呂氏春秋』に述べられている。
黄帝は、怜倫に音律を作るように命じた。怜倫は、崑崙山で節の均等な竹を切って、その竹の管を吹き鳴らして黄鐘という基準の音にした。この伝説にある竹の管は「律管」と呼ばれる楽器である。
 古来より中国では、国の秩序と尺度を関連付けて考えてきた。国が栄えるということは正しい尺度が適用されているからであり、誤った尺度が用いられると国が没落すると考えられていた。尺度の中でも、律管の長さや音律の制定が重要視されていた。
なぜなら、音律という音の秩序は自然の摂理を反映したものであり、その自然の摂理に従うことによって、社会の安定が保たれるという考えがあった。音は、古代人が畏怖した自然や宇宙と照合したとき、はじめてその力が現れてくる。
 「純正律」は、「ピタゴラス音律」の8度の弦長比(1対2)と5度(2対3)の弦長比と、アルキタス(紀元前4世紀ごろ)による「3度の弦長比を4対5にする」ことを組み合わせたものである。基音と3度上の音と5度上の音(ド、ミ、ソなど)を3和音と言う。
 純正律は、アリストクセノス(紀元前4世紀)が提唱したので、「アリストクセノス音律」といわれることもある。また、16世紀にその理論を新たに提案したツァルリーノ(1517~1590)にちなんで「ツァルリーノ音律」とも言われる。
 ドとミが美しく響くようにしたものが、純正律である。
しかし、純正律は、隣の音の比率が一定ではないので、転調や移調をすることができない。
 今では、ドから1オクターブ高いドまでの12個の音を平均した倍率で調整してある。それが12平均律と呼ばれるものだ。
 フランスのマラン・メルセンヌ、朱載?(1536~1610)が『律呂精義』(1584年)において十二律の各音程を平均化して、現在の十二平均律とほとんど同様のものを発表しているが、当時は実用化されなかった。
日本では、中根璋が「律原発揮(元禄5年、1692)」において、1オクターブを12乗根に開き12平均律を作る方法を発表した。12平均律によって、転調や移調が自由にできるようになった。 
12平均律は、ピアノの大量生産にともなって、19世紀に世界中に広まっていった。

3.単元構成(4時間)

1 ピタゴラス音律 整数比
ピタゴラス音律の弦の長さ
2 中国の音階 3分損益法
3 純正律 三角関数 フーリエ
三角関数のグラフと和音
音の分析をするフーリエ関数と耳の構造
4 平均律 12乗根 指数対数
12乗根・フェヒナーの法則
指数関数・対数関数のグラフと平均律
 

4.授業の流れ

発問1:

ハープ、ギター、こと。何楽器ですか。

「弦楽器です」

発問2:

ドレミの違いは、弦の何が違うからですか。

「弦の長さです」

説明1:

弦の長さからドレミを作った人物がいました。ピタゴラスです。

説明2:

ドの弦の長さを1とします。2/3倍してソを作りました。

発問3:

ソを何倍すると高いレになりますか。ノートに書きなさい。

「3/2倍です」

指示1:

高いレの長さをノートに求めます。

「いくつですか」「4/9です」
「できた人は赤で丸」

ド  …  ソ  ド  レ  
1     2/3   【4/9】

説明3:

高いドの長さは1/2です。2倍すると低いドになります。

発問4:

高いレを何倍すると低いレになりますか。ノートに書きなさい。

「2倍です」

指示2:

低いレの長さをノートに求めます。

「いくつですか」「8/9です」「できた人は赤で丸」
ド  レ  ソ   ド    レ
1 【8/9】2/3  1/2   4/9

説明4:

このようにして、ピタゴラスはドレミを作りました。

ド   レ ミ    ファ  ソ    ラ    シ     ド  レ 
1、8/9、64/81、3/4、2/3、16/27  124/243、1/2、4/9

説明5:

ピタゴラス音律では、ミやラやシのように、単純でない分数がありました。
それらの音が、美しく響かなかったのです。そこで、ドを4/5倍して、ミを作りました。

発問5:

ラの長さを求めます。

「できた人はパッと手を挙げます。不安な人は画面を参考にします。」
「ラの弦の長さはいくつですか。できた人で言います」
「3/5です」

ド  レ ミ   ファ  ソ  ラ
1 8/9 4/5  3/4 2/3【3/5】

説明6:

同じようにソからシを作りました。響きの美しい純正律といいます。
みんなで、純正律。

ド  レ ミ  ファ  ソ  ラ   シ   ド 
1、8/9、4/5、3/4、2/3、3/5、8/15、1/2

説明7:

純正律では、隣同士の倍率が一定ではありませんでした。
変化の大きい曲に対応できなかったのです。
そこで、ドから高いドまでを12個に分け、隣同士の倍率を平均して、0.96倍にしました。

発問6:

そのときの弦の長さです。
この形ととても似ている楽器があります。
その楽器にきづいた人。

挙手させて指名「(グランド)ピアノです」

説明8:

ピアノの弦は、このようになっています。平均律といいます。みんなで平均律。

説明9:

ピアノの普及とともに、平均律も広まっていきました。

説明10:

さらに美しく、調和のとれた音律を作るのは、いま、音楽と数学を学んでいるみなさんかもしれません。

5.先行実践

國廣浩一氏「音階」東日本フレッシュセミナー(2007年10月8日)

6.参考文献

  1. 藤枝守『[増補]響きの考古学』平凡社ライブラリー
  2. 平島達司『ゼロ・ビートの再発見 復刻版』ショパン
  3. 平島達司『ゼロ・ビートの再発見 技法編 復刻版』ショパン
  4. 大塚正元『楽譜の数学』早稲田出版
  5. 桜井進『数学で美人になる』マガジンハウス
  6. T・Gゲオルギアーデス『音楽と言語』講談社学術文庫
  7. 岩田通徳『音律入門』五十心堂
  8. 小島英幸『音階入門』音楽之友社
  9. 黒澤隆朝『音楽起源論』音楽之友社
  10. 江崎公子編『音楽基礎研究文献集 第一巻』大空社
  11. ジョン・R・ピアース『音楽の科学』日経サイエンス社
  12. 近森 一重『音楽通論 新訂』音楽之友社
  13. 竹井成美『音楽を見る!』音楽之友社
  14. 小方厚『音律と音階の科学』講談社
  15. 『数学教育 2005年5月号』明治図書
  16. エリ・マオール『素晴らしい三角法の世界』青土社
  17. 木村信夫『考察 立体周期律表 音階律の立体化』東京図書出版会
  18. チャールズ・サイフェ『異端の数 ゼロ』早川書房
  19. 『物理Ⅰ』啓林館
  20. 出光英則『ピタゴラスのくれたおくり物』国土社
  21. 秋山仁『数学センスをみがこう《生活応用編》』NHK出版
  22. 水崎高浩『数式を使わずに物理が分かる本 第Ⅱ集』秀和システム
  23. 国立教育政策研究所編『生きるための知識と技能』ぎょうせい
  24. スティーブン・スキナー『聖なる幾何学』ランダムハウス講談社
  25. PISA2003(数学リテラシー)及びTIMSS2003(算数・数学)結果の分析と指導改善の方向』文部科学省
  26. ヨハンネス・デ・グロケイオ『音楽論 全訳と手引き』春秋社

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