TOSS越前 前田哲弥
★6年生を対象に、シャボン玉をたらしこみでぬる方法を教えた。その後、描いた風景画の中で、たらしこみを使って美しい空を描かせることができた。以下、指導の手順を紹介する。
1 たらしこみとは
たらしこみとは、水をぬった画面に色水をたらしこみ、にじませていく方法である。自然な色の変化や広がりがとても美しい技法である。また、この技法の中には、水彩画の大事な基本も含まれている。酒井臣吾氏は、以下のように述べている。
『この技術は単に一つの技術というよりも、水彩画の基本を教えていることでもある。その基本とは画用紙の上では絵の具をいじくり回さないということである。水絵の具が自分でジワジワと動きながら美しいにじみを作っていく世界は、東洋の美術に通じるもので、とても美しい。 (酒井臣吾著『酒井式エチュード&シナリオ厳選23』127頁<明治図書>) 』
2 たらしこみのやり方
1 準備物
水性サインペン、または、クレヨン
(色は何色でもよいが、鮮やかに仕上げるためには、ピンク、水色といったものの方が良い)
大筆(16号以上のもの)1本
中筆(4号~8号)3本(手早く効率的に仕上げるためには、3本あるとよい。)
絵の具(赤、青、黄色)
パレット
水入れ
八つ切り白画用紙(あまり薄いものはさける。紙が反りやすく発色が悪い。)
2 手 順
シャボン玉をぬるという設定で、やり方を説明していく。なお、シャボン玉を吹く子の絵は、子ども一人ひとりに描かせてもよいが、今回は時間短縮のため、シャボン玉をふいている子どもが描かれた画用紙を、子どもに配った。
(1)水性サインペンかクレヨンを使って、シャボン玉を描く。
・形や大きさは自由。様々なものがある方が良い。5個程度。
(2)絵の具(赤、青、黄色の三色)をパレットの小さい部屋に出す。
(3)1色ずつ、パレットの大きい部屋で水と混ぜ、「色のジュース」を作る。
・パレットの白さが透けて見えなくなるくらい水をたっぷり入れて作る。
・赤、青は強い色なので、黄色より水を多めに入れる。
・大筆は「赤係の筆」「青係の筆」というように、それぞれの色に1本ずつ使うようにすると効率的。
いちいち色を変える時、筆を洗う必要がなくなる。
(4)ペンで描いたシャボン玉の中の部分に水をたっぷりぬる。
①大筆に水をたっぷりつけ、シャボン玉の形に添って、中で円を描くように水をぬる。
②水を塗り残したところがないか斜めからのぞいてみる。ぬれているところは光って見える。
(5)水をぬったところに、色水をそっとおいていく。水が乾かないうちにおいていく。
①中筆に色水をつけ、画面にそっとふれるようにおいていく。
「チョッ」「チョッ」とイメージ語を言いながらそっとおかせる。
②色水がジワーッと動いて広がったらよい。
③絶対やってはいけないのは、この時、紙の上で色水を自分で筆でかき混ぜないこと。
あくまで、絵の具自身がジワジワと動きながら美しいにじみを作っていくことが大切。
(6)空いているところに、ちがう色の色水を加えておいていく。
・シャボン玉の中の部分で、まだ色のついていない空いているところに色水をおいていく。
・2色が紙の上で自然に混ざったところは、自然な色の変化が生まれる。(例)赤+青=紫
(7)できあがった作品は乾くまで動かさない。
・せっかくきれいにできたたらしこみが流れて、ぐちゃぐちゃになってしまう。
3 様々な絵の中でたらしこみの活用
たらしこみは、それ自体でも美しく、塗っていく活動を楽しめるが、様々な作品、 シナリオの中で活用することができる。例として、以下のものが挙げられる。
・「ジャックと豆の木」の木の部分
・「教室から見える風景」の空の部分
以下、「教室から見える風景」の児童作品をあげる。
最後に空をぬる場面でたらしこみを使った。空をぬる場合は、色水をおいていく時に「スーッ」、「スーッ」と筆をひっぱるように長めにおいていくのもよい。雲のような自然な空の色の変化を表現できる。
参考文献
・酒井式エチュード&シナリオ厳選23 酒井 臣吾 著(明治図書)
・小学校の苦手な絵をマル秘技で完全攻略 酒井 臣吾 著(PHP)
・酒井式! 場面場面での千変万化での対応術 上木 信弘著(明治図書)
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