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TOSSランドNo: 7382485 更新:2012年12月16日

体育における新しい学力観(ポートボールの授業)


 千葉敬愛短期大学から教育実習に来ている長谷川育子さんが4年1組で体育の精錬授業を行った。単元は「ポ-トボール」である。
 指導案、資料の準備もよくされ、よい授業であった。長谷川さんの授業を通して、体育における新しい学力観について考えてみたい。

1.体育科における新しい学力観

 体育科における新しい学力観はどのように考えたらよいのであろうか。
 新しい指導要録の「観点別学習状況」では次のようになっている。

(観点 ……趣旨)

運動や健康・安全への関心・意欲・態度……進んで楽しく運動しようとする。また、健康・安全に関心を持ち、進んで健康で安全な生活をしようとする運動や健康・安全についての思考・判断 運動の課題の解決を目指して、活動の仕方を考え、工夫している。また、身近な生活における健康・安全について考え、判断している。

運動の技能 ……運動の楽しさや喜びを味わうために必要な技能を身につけている。

健康・安全についての知識・理解 ……身近な生活における健康・安全に関する基礎的な事項を理解している。

 新しい指導要録の「観点別学習状況」では「関心・意欲・態度」が「技能」、「知識・理解」よりも先に記述されている。
 これをどのように考えたらよいのであろうか。
 体育科では、昭和52年度告示の学習指導要領から「楽しい体育」が入ってきた。 小学校低・中学年では「運動を楽しくできるようにし」、高学年では「運動の楽しさを体得」し、そして中学校では「運動の楽しさを味わわせる」という表現になっている。
 「楽しい体育」が入ってきたのは生涯体育を目指し、小学校から運動に親しむ子供を育てていこうというねらいからである。
 技能中心の体育ではなく、運動そのものの楽しさを体験させていこうというものである。
 つまり、新しい学力観で重視している「関心・意欲・態度」を先駆けて実践してきたのである。
 今まで重視されてきた技能のかわりに、関心・意欲・態度、思考・判断が重視されている。“やる気”と“考える力(思考力)・判断力・表現力”を指導していこうという考えである。

2.新しい学力観による体育科の授業

 では、新しい学力観による体育科の授業はどのように行えばよいのであろうか。
 「関心・意欲・態度」、「思考・判断」、「技能」、「知識・理解」の力をどのようにつけていったらよいのであろうか。
 小林篤氏は「斎藤喜博における体育指導の特質」(兵庫教育大学研究紀要第13巻)の中で、次のように述べている。

 子どもたちの学習意欲を高め、自己学習力を育てるためには、理にかない、子どもたちをうまくする教師の技術指導が不可欠であることがわかる。

具体的な内容として次の三点を説明している。

 ①運動の本質を踏まえ、的確に子どもたちの運動技能を伸ばしてやる指導によって、子どもたちの中に運動をする楽しさや喜びが生まれ、
 ②その楽しさ・喜びがべ-スになって、自主的・創造的な学習集団が育ち、
 ③ひるがえってそのような学習集団が、いっそう運動技能の伸びを促し、その結果、運動の楽しさ・喜びがいっそう高まる、ということである。

 「意欲」を育てる骨格は、運動技能を高めてあげることだという。私もこの考え方に賛成である。
 しかし新しい学力観では、直接技能を高めるのではなく、子供の「やる気」や「思考力・判断力・表現力」を育てながら技能を高め、運動の楽しさや喜びを体験させるようになっている。
 「やる気」は具体的な教材を学習する中で出来ていく。「思考力・判断力・表現力」も運動を行うことによって形成されていく。
 私は、新しい学力観に基づいた授業を行うために、次の三つの観点から指導している。

 1.場作り
 2.発問・指示
 3.テクニカルポイント

 「やる気(意欲)」をどう育てるか。
 船井幸雄氏は『運を創る運を開く』(東洋経済新報社)の中で「やる気」について、次のように説明している。

 「やる気」は別の言葉でいいますと、「ワクワクする」ことです「ワクワクして行いたくなること」です。

 体育で子供がワクワクして行いたくなるのはどんな時だろうか。
 教材が面白く、興味・関心がある時である。「面白そうだからやってみたい」という気持ちになる教材に出合った時である。

 精錬実習のポ-トボールの授業のねらいは「簡単なル-ルで総たり戦を行い、チ-ムで協力し合ってゲ-ムを楽しむ」になっている。
 ポ-トボールの授業の流れは、次のようである。展開は8時間扱いの第4時である。

1.準備運動をする ・チームごとに分かれて、つきゆび予防の為、手首、指などを重点的に行わせる

2.本時のめあて、相手チームを確認する(5分)    A-D  B-C
  ・リーダーが中心になって、カ-ドを見て確認する

ねらい1 簡単なル-ルで総たり戦を行い、チ-ムで協力し合ってゲ-ムを楽しむ

3.第1ゲームを行う(12分)

  ・前、後半………5分
  ・ハ-フタイム…2分 ・ルールやマナーが守られているか、コートの特性をうまく利用しているか観察する

4.ゲーム後の話し合いをする(8分)

  ・ゲームの反省をし、必要な練習はないか考える
  ・ルールやマナーは守れたか ・グループごとに第1ゲームの内容を参考にし良かった点、反省点に対して助言をする
  *誰のパスが良かったか
  *誰の動きが良かったか
  *どうしたらパスがもらいやすいか、わたしやすいか

5.第2ゲームを行う(12分)

・試合時間は同じ  

6.本時のまとめ、反省をチーム内で話し合う(6分) ・カードが上手に利用させているか観察し、必要に応じて指導、助言する

7.後始末をする(2分)

ポ-トボールの授業ではコートの種類を工夫している。本時では、アイスホッケ-コ-トでゲームを行っている。

【ル-ル】
 1.ゴ-ルエリアがコ-ト内にある
 2.どこからでもシュ-トのチャンスがある
 3.ゴールマンの動きに変化があるので得点のチャンスが増える

 このコートの利点は、ゴ-ルエリアがコ-ト内にあるので、どこからでもシュ-トのチャンスがあることである。そのため、得点のチャンスが増える。
 前半のゲームでは、この利点に気付かず正面からのシュートが多かった。正面からシュートすれば当然ゴ-ルマンがいるので、カッとされることが多い。
 どのチームもアイスホッケ-コ-トの利点を活用することができなかった。
 前半が終わった後、チ-ムごとに反省が行われた。教師の助言によって、正面ばかりでく、ゴールの横や後ろからでもシュートできることに気付かせていった。後半のゲームでは、アイスホッケ-コ-トのよさに気付いて、動けたチ-ムの得点は増えた。
 その結果、得点の入ったチ-ムの子供たちは意欲を持ち、進んで学習に参加するようになった。
 このように「場作り」を工夫することによって「意欲」を育てていくことができる。どんな教材(場作り)をしていったら子供の興味・意欲・関心を高めていけるかが重要なのである。
 第2点は思考・判断の力をどうつけるかである。指導要録では活動の仕方を考え、工夫するとなっている。具体的には、自分のめあてを持ち、問題解決していく力を付けることとなっている。
 本時でも前半のゲームが終わった後、チ-ムごとに反省し、問題点を発見させ後半のゲームに生かす流れになっている。
 思考・判断と言った場合に、自分のめあてを持ち、問題解決していく力だけでなく、運動の原理・原則について考え、判断していく力を付けていくことが大切である。
 運動についての「わかる力」を付けていくことである。
 ポ-トボールの授業では、十分にそれらの指導ができていなかった。アイスホッケ-コ-トの利点に気付かせる指導が十分にできなかった。
 チームごとの反省をしている時、教師は次のような指導をおこなった。

 教師:今の試合で一番気を付けたのは何か。こんどはどうしたらよいか。
 子供:青い線に入って、もっとパスをもらう。
 教師:パスをもらうというのはどうすることか。
 子供:パスしやすいところに動いていく。
 教師:パスしやすいところに動いて行くんだよ。練習。

 パスしやすいところに動いていくと言葉で説明しても、誰がどこに動けばいいのか分からなかった。
 だから、後半のゲームでアイスホッケ-コ-トの利点を活用することのできないチームがあった。
 「わかる力」をつける指導法として、私は発問・指示を活用している。発問によって、動きを考え、判断し、自ら学習していく力を付けさせていく。
 前半のゲームが終わった後、チームごとに問題点を出せた後、私なら次の発問・指示をする。

 点をたくさん入れるには、どこに動いてシュートしたらよいですか。
 チームで作戦を立てて練習しなさい。

 どこに動いたらよいのかを学習ノ-トに書かせ、点の入る場所をグループで発見させていくようにする。
 作戦を立て、実際にゲームで確かめる中で「思考力・判断力・表現力」が身につくようにしていくのである。
 一方的に教え込むのではなく、子供の自主的・創造的な活動を取り入れていくことによって、新しい学力観で強調している「思考力・判断力・表現力を」が育っていく。
 作戦を立て、ゲームをしていく中で、勝つ原則を発見していくようにする。
 第3には、技能の指導をどのようにしていくかである。
 この教材のテクニカルポイントはシュートをたくさんして、得点を入れることである。どんなシュートがいいのか、どこからシュートすれば良いのかを指導していく。
 シュートの原理が分かれば、「知識・理解」として定着していき、教材が変わっても活用できる。それが生きた学力につながっていく。
 シュートの練習はアイスホッケ-コ-トの工夫、発問とからめて指導していくことが重要である。
 関心・意欲・態度、思考・判断、知識・理解を育てる中で、シュートの技能もついていくのである。
 今までの体育のように、直接技能作りを目指すのではなく、子供の「やる気」や「思考力・判断力・表現力」を高める中で技能が高まっていく指導を行っていく。
 運動の楽しさ・喜びを体験させ、生涯にわたって運動に親しむ子供を育てていくことが究極のねらいである。
 そのためには、どんな力を伸ばし、どんな授業をしていくかが大切である。


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