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TOSSランドNo: 3615633 更新:2012年12月13日

道徳資料「元服」


  (   )

 僕は今年三月担任の先生からすすめられて、A君と二人で○○高校を受験しました。○○高校は私立ではあるが、全国の優等生が集まってくる有名高校である。
 担任の先生から君達二人なら絶対に大丈夫だと思う、と強く進められて、僕も得意だった、父母も喜んでくれた。先生や父母の期待をうらぎってはいけないと思って、僕は猛れつに勉強した。ところがその入試でA君は期待どおりパスしたが僕は落ちてしまった。
 得意の絶頂から、な落の底へ落ちてしまったのだ。
 何回かの実力テストでは、いつも僕が一番で、A君がそれにつづいていた。だのに、その一位が落ちてA君が通ったんだ。(生成期の下の方が通ってしまったんです)
 誰の顔もみたくない、みじめな思い、父母は心配して、いつも部屋にとじこもっている僕のために、僕の好きなものを運んでくれる。やさしいことばをかけてくれても、それがよけいシャクにさわった。
 何もかもたたき壊わし、引きちぎってやりたい怒りに燃えながら、布団の上に横たわっていたとき、母が入ってきた。「Aさんが来てくださっているよ」僕は言った。「母さん、僕は誰の顔もみたくないんだ、とくに世界で一番見たくない顔なんだ、世界中で一番にくい顔なんだ、誰の顔か言わなくても分かっているだろう。帰ってもらっておくれ。」
 母が言った。「せっかく、わざわざ来てくださっているのに、母さんにはそんなこと言えないよ、あんた達の友だち関係はそんな薄情なの、ちょっと間違えば、敵・味方になってしまうような薄っぺらなものなの、母さんにはAさんを追い帰すなんてできない。いやならいやで、ソッポを向いていなさい、そしたらお帰りになるだろうから。」といって母は出ていった。
 身にしみるそのみじめさは、僕を追い越したことのない者に見下される、こんな屈辱があるだろうかと思うと、僕は気が狂いそうだった。
 二階に昇ってくる足音が聞こえる、布団をかぶって寝ている、こんな姿が見せられるか、胸をはって見せてやろう思って、僕は起きあがった。
 中学の三年間、A君がいつも着ていたよれよれの服をきたA君、涙を一杯ためて、くしゃくしゃの顔で、「B君、ぼくだけ通ってしまってごめんね。」やっとそれだけ言ったかと思うと、両手で顔をおおうようにして駆けおりて行った。
 僕は恥ずかしさが一杯になってしまった。思いあがっていたぼく。いつもA君なんかに負けないぞと、A君を見おろしていたぼく。この僕が合格して、A君が落ちていたら、僕だけ通ってごめんね、と慰めに行っただろうか。ざまあみろ、とよけい思いあがったにちがいないという自分に気がつくと、こんな僕なんか落ちるのが当然だと気がついた。
 彼とは人間のできが違うと気がついた。もし僕が通っていたらどんな恐ろしいひとりよがりの、おもいあがった人間になってしまっただろう。落ちて当然。ほんとうの人間にするために、天がぼくを落としてくれたんだと、気がつくと、悲しいけれども、この悲しみを大切にしよう。と出直すための決意みたいなものが湧いてくるのを感じた。
 ぼくは今まで、思うようになることだけが幸福だと考えていたが、A君のお陰で、思うようにならないことの方が人生にとって、もっと大切なんだということを知った。
 昔の人は、十五才で元服したという。僕も入試に落ちたお陰で元服できたようなきがする。


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