説明1:
小説・物語の基本は、「主人公が、ある事件をきっかけにして、心情や考え方を変えること」です。
例を示す。
例1 「ごんぎつね」
兵十に分かってもらえないごん
↓(きっかけ つぐない)
兵十に分かってもらえたごん
例2 「走れメロス」
単純なメロス
↓(きっかけ 友のために走り、苦難にぶつかったこと)
人間の複雑さを知るメロス
以下、「羅生門」の話に戻る。
発問1:
下人の悩みは何でしたか。(盗人になることを肯定する勇気がないこと。)
下人の心情変化を探るための助走である。
ノートに書けた生徒に答えさせる。
発問2:
下人の悩みは解決したのですか。(した)
挙手で確認する。
「解決した」に挙手した生徒に「どこから分かりますか」と問う。
「ある勇気が生まれてきた」という箇所から分かるはずだ。
発問3:
解決したきっかけは何だったのですか。(老婆の台詞)
指示1:
隣の人に言いなさい。
これも、簡単に答えさせれば良い。
指示2:
念のため、老婆の台詞を読みます。
みんなで揃えて。
特に、「されば、今また、わしのしていたことも悪いこととは思わぬぞよ。」が手がかりになる。
発問4:
仮に、老婆と下人のしていることを「悪」と呼ぶとします。
老婆と下人の「悪」のレベルは同じくらいですか。
指示3:
ノートに、マルバツと理由を書きなさい。
理由が一文書けたら見せに来ます。
全部の理由を認め、次々と赤鉛筆でマルをつけていく。
坂本の授業はここでチャイムが鳴ったので、第4時を終了した。
指示4:
ノートを開けます。
前回書いたことを、指名なしで発表しなさい。
生徒が発言に慣れていれば、自分たちで立つ。
そうでない場合は、「自信の無い人から」「列順に」と促す。
マル(同じレベル)派の意見・・・どのみち、盗みをしていることに変わりは無いから。
バツ(同じではない)派の意見・・・老婆は生きているのに、下人はその老婆から着物を剥ぎ取っているから。老婆は死人から髪を抜いたはずだ。
ただし、この段階では、ほとんど水掛け論にしかなっていないことが分かるはずだ。
よって補助発問を入れる。
発問5:
下人の、「老婆の着物を剥ぎ取った」という行為は、実はきわめて不自然なのです。
どうしてだと思いますか。近くの人と相談します。
発言できる生徒がいれば、指名して言わせる。
ポイントは、【着物を着ている死体もあるのに】老婆から剥ぎ取った、という点だ。
そこが指摘されれば80点以上で評定する。
坂本の授業では80点以上が出なかったので、さらに次の補助指示を入れた。
そこに触れていない意見は、15点以下で評定する。
指示5:
【老婆の】着物を剥ぎ取る理由は本来ないのです。
それが分かる部分に線を引きなさい。
この補助指示に対しては、10人の生徒が一気に正解した。
「(裸の死骸と、)着物を着た死骸とがある」である。
つまり、わざわざ老婆から着物を剥ぎ取らせているのは、作者の意図的な仕掛けだと考えて良い。
説明2:
もし2人の悪が同じレベルなら、死骸から剥ぎ取れば良いはずです。
下人が老婆の台詞からヒントを得つつ、老婆よりも悪になることを通して、作者は何かを伝えたかったのでしょう。
この下人の変化から主題を書かせ、終わる。
例 人は、先人の知恵を借りつつ、より大きく成長していくものだ。
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