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TOSSランドNo: 2298427 更新:2014年06月22日

敬語(江副文法を取り入れた敬語指導)


★授業のポイント

 ①敬語指導に、江副文法(中立・うち・そと)を使う。
 ②複雑な敬語を扱うときは、分析批評の「視点」を応用する。
 ③「敬意」という概念を、画像を使って指導する。

★教材研究

(1)外国人に日本語を教える現場から生まれた江副文法

 江副文法とは、新宿日本語学校の校長、江副隆秀氏が提案する日本語文法である。
 日本語を「情報」と「述部」に分け、その間に二列の助詞があるとし、外国人に教えるときは、それらを可視化した教授法を用いる。
 近年、外国人に対する日本語教育のみならず、日本人に対す売る国語教育にも生かすことができると注目を集めている。
 特に、聾学校ではその有効性が認められ、一部の学校で取り入れ始められているという。

(2)敬語指導に、江副文法(中立・うち・よそ)を使う

 わたしたち日本人にとっても、「謙譲語」「尊敬語」の概念を説明することは難しい。
 まして、日本語を学ぶ外国人にとっては、さらに難しいことだ。
 江副隆秀氏は、次のように述べる。

 外国人に敬語を教える時、二つの重要な問題がある。第一に、本当に「いらっしゃる」等の言葉遣いを
尊敬語、謙譲語、丁寧語と分類して教えて当の外国人にわかりやすいかどうかということ。
 第二は、中立的な性格の言葉、例えば「行く」とか「食べる」とかの普通の動詞から教え始めているとき、
途中から「尊敬語」だの「謙譲語」を加えていくようなことになると、急に動詞が難解になり、ここが日本語を
学ぶ際の一つのヤマとなってしまうことだ。このヤマで多くの外国人が日本語の学習を続けることをやめてしまう。
               
                         江副隆秀著『日本語を外国人に教える日本人の本』P199~200

 江副氏は、尊敬語・謙譲語という呼び名ではなく、「中立、うち、よそ」の三つをセットで教えることを提案している。
 「食べる」ならば、「食べる、いただく、召し上がる」だ。

 小学生を対象に、初めて江副文法を使って敬語の指導を行ったのは、伴一孝氏である。
 (2006年 長野県篠ノ井東小学校 授業研究会)

 幸いにも、この授業を参観することができた。
 その後、雑誌『教育トークライン No.303』において、東田昌樹氏の実践が報告された。
 手話を使って、尊敬語と謙譲語(さらに丁寧語)を教える方法がまとめられている。
 
 伴氏と東田氏の実践では、以下の点が違っている。
 
  ①伴氏は、  「普通の言い方」→「謙譲語」→「尊敬語」
  ②東田氏は、 「普通の言い方」→「丁寧語」→「尊敬語」→「謙譲語」

 自分で手話をしながら唱えてみると、伴氏の方が唱えやすかった。
 3つの方がテンポがよい。丁寧語は別に扱った方がよいと考えた。
 語数が多い尊敬語を最後にもってきた方が、唱えやすい。

 手話は、次のように行う。

  中立      ・・・ 手のひらを床に向けて、水平に大きく切る。
  うち(謙譲語) ・・・ 手のひらを胸に当てる。
  そと(尊敬語) ・・・ 手のひらを天井に向けて、持ち上げる。

 また、「中立、うち、よそ」の概念を説明するために、「友達」「わたし」「校長先生」という3つの立場を用いた。
 以下のような流れに従って、「謙譲語」と「尊敬語」の関係を押さえていく。

 1. 「友達」    → 「わたし」     → 「校長先生」
 2. 「食べる」   → 「いただく」    → 「召し上がる」
 3. 「友達が食べる」→ 「わたしがいただく」→ 「校長先生が召し上がる」

(2)複雑な敬語を扱うときは、分析批評の「視点」を応用する

 難しい謙譲語。教科書では、どのように定義されているのだろうか。
 各社について、調べてみた。(H20年度)

 A 自分や身内の者の動作をけんそんして言うことによって、その動作を受ける人への敬意を表す。
                                        【光村図書】
 B 自分や身内にかかわることを低めて言うことで、話し相手や話題になっている人に敬意を表す言い方。
                                         【東京書籍】
 C 自分や身内にかかわることを低めて言う言い方。
                                         【教育出版】
 D 自分や自分に関係している事がらについて、へり下って言い表し、相手に敬意を示す言葉づかい。
                                         【学校図書】
 E 動作のおよぶ人を高める言い方。
                                         【大阪書籍】

  大阪書籍以外は、「自分の動作・事柄」ということがポイントになっている。
 だが、次の例は、どう説明したらよいだろうか。

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 あんなやつでもご褒美がいただけるのか。        『ほんとうの敬語』P173

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 (校長先生が生徒に言った言葉で)担任の先生から通知表はいただいたかね。
                     『みなさん、これが敬語ですよ。』P228

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 こららの文の問題を指摘しているのが、萩野貞樹氏である。
 これらは、「自分の動作が謙譲語」という従来からよくされてきた定義では、説明できない。
 また、動作が及ぶ相手への敬意もない。
 萩野氏は、謙譲語の定義を「話題となった人物同士の間に上下関係がある場合に、その関係を表現するのに使う敬語」(『ほんとうの敬語』P66』)とし、
「ハギノ式敬語しくみ図」という独自の図解を使って、説明している。
 始めは、萩野氏の定義に従って、謙譲語指導の授業を作ったのだが、教師相手に模擬授業を行ってみると、かえってわかりにくいと不評であった。
 また、教科書の説明と大きく違うため、テストに対応しにくい。
 この問題を解決するヒントとなる本を渡辺喜男氏に紹介していただいた。三浦つとむ氏の『日本語はどういう言語か』という本である。
 三浦氏は、時枝誠記氏の理論に寄りながら、「追体験」というキーワードを用いて、以下の敬語が使われた文を説明している。

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 お母さんは、おつかいにでかけるわよ。

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 親が子どもに話すとき、自分で自分を尊敬する表現をする表現をすることがあるが、
これは、子どもの世界における把握の仕方を母がそのまま用いて、母子一体の気持ちを表現したものである。
 もっとわかりやすく言えば、視点が母親から子どもへ移っているということだ。
 (分析批評の授業で、視点について扱っていれば、子どもはより理解しやすい。)
 萩野氏の指摘した問題も、単なる「視点の移動」と考えれば、従来からの「自分の動作・事柄」という説明をそのまま使うことができる。
 今回、この点も授業化してみた。 

(3)「敬意」という概念を、画像を使って指導する

 先に、各教科書会社における謙譲語の説明を示したが、敬語の説明では、子どもにとって身近でない難しい用語が出てくる。
 「敬う」「けんそんする」「高める」「低める」「敬意」「へりくだる」…。
 ただでさえわかりにくい敬語を、これらの用語がよりわかりにくくしている。
 「尊敬語」「謙譲語」の指導において、最低限必要な概念は何か。
 わたしは、「敬意」だと考える。敬意を示したいから、尊敬語や謙譲語を使うのだ。
 あとの用語は、とりあえず置いておいてよい。敬意の概念をシンプルに示す。

  敬意 ・・・ 尊敬する気持ち。 

 これだけを、画像コンテンツを使って押さえる。
 また、敬意を示す人物関係も、画像を使ってわかりやすく押さえるようにする。

★授業の展開

(1)敬語の概念

 教師が歩いて来る画像と次の文を提示する。

A 先生が来たー!   B 先生がいらしゃった。

発問1:

先生が「にっこり」するのは、どちらですか。

説明1:

Bです。「いらっしゃった」という敬語には、尊敬する気持ちが含まれています。
尊敬する気持ちのことを、「敬意」と言います。言ってごらんなさい。
敬意を表したいとき、敬語を使います。

  ・尊敬する気持ちのことを、何と言いますか。→(敬意)
  ・敬意とは、何ですか。→(尊敬する気持ち)       

  繰り返しで、習熟する。

(2)江副文法で、尊敬語と謙譲語を教える

 手話(水平・自分に・上向きに)を付けて、真似させる。

 「友達・わたし・校長先生」

 「行く・うかがう・いらっしゃる」

 「友達が行く・わたしがうかがう・校長先生がいらっしゃる」

 上記、3つのステップで動作主と動作の対応を押さえあと、以下の言葉を扱う。

 「食べる・いただく・召し上がる」

 「話す・申す・おっしゃる」

 「見る・拝見する・ご覧になる」

 テンポよくやっていくが、途中で、「【言う】でできる人?」「【見る】でできる人?」を問い、考えさせる場面を作る。

Keigo1
Keigo2

(3)謙譲語と尊敬語のまとめ

 パソコン画像を使って、尊敬語と謙譲語の定義を押さえる。

 謙譲語 … 自分や身内の動作に使って敬意を表すとき
 尊敬語 … 相手の動作に使って敬意を表すとき

(4)謙譲語の問題

 ①女の子のわたしが、校長先生にノートを渡します。
  正しいのは、どちらですか。
    A 校長先生は、わたしからノートをお受け取りになった。 
    B 校長先生は、わたしからノートをもらった。

 校長先生の動作に尊敬語を使って、敬意を表す。【A】

Keigo3

 ②校長先生が、女の子のわたしにノートを渡します。
  正しいのは、どちらですか。
    A わたしは、校長先生からノートをもらった。  
    B わたしは、校長先生からノートをいただいた。

 自分の動作に謙譲語を使って、敬意を表す。【B】

Keigo4

 ③校長先生が、わたし(女の子)の母にノートをわたします。
  正しいのは、どちらですか。
    A わたしの母が、校長先生からノートをもらった。  
    B わたしの母が、校長先生からノートをいただいた。

 身内の動作に謙譲語を使って、敬意を表す。【B】

Keigo5

以降は、応用問題。

 ④校長先生が、女の子の担任の先生にノートをわたします。
  正しいのは、どちらですか。
    A わたしは、校長先生からノートをお受け取りになった。 
    B わたしは、校長先生からノートをいただいた。

 担任の先生の立場から考えて、謙譲語を使う。【B】

Keigo6

 ⑤校長先生が、わたし(女の子)に聞きました。
  正しいのは、どちらですか。
    A 「そのノートは、担任の先生からもらったの。」  
    B 「そのノートは、担任の先生からいただいたの。」

 正解はBであるが、問題が二つ生じる。(過去の学級では、Aを主張する子の方が多かった。)
 「いただく」は、校長の動作でも身内の動作でもない。
 また、校長先生は、女の子や担任の先生に敬意を表す必要はない。
 では、敬語を使う必要はないのか。ここでは、視点の移動で説明を行う。

Keigo7

説明2:

(校長先生が誰の立場で言っているか聞いた後)
視点を女の子へ移してみましょう。
女の子の立場になると、担任の先生へ敬意を表す必要がありますか。ありませんか。
敬意を表した方が、先生は「にっこり」するのでしたね。
よって、謙譲語の「いただく」を使います。
このように、敬語はどの立場から見るかによって、使ったり使わなかったりするのです。

【主な参考文献】

『教育トークライン』No.303/『日本語教育学特殊研究(2)講義ノート』江副隆秀(早稲田大学講義ノート)/
『日本語を外国人に教える日本人の本』『日本語の助詞は二列』江副隆秀(創拓社)/
『日本語はどういう言語か』三浦つとむ(学術文庫)/『ほんとうの敬語』萩野貞樹(PHP新書)/『みなさん、これが敬語ですよ。』萩野貞樹(PHP文庫)/
『敬語の指針(答申)』文化審議会 / 新宿日本語学校ホームページ


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