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TOSSランドNo: 3738909 更新:2014年01月26日

「力のある資料」で創る中学年の道徳授業


子どもの作文は、教師の説教より効果がある                   石川 裕美

 1 人の気持ちなんてわかんないよ!

 一〇年ぶりに三年生を担任した。
 三九人の大所帯で、なかなかの強者ぞろいのクラスであった。もめごとは日常茶飯事に起こった。
 興奮した時の子どもの言動は、高学年の荒れを連想する時もあった。
 三年生ですでに……と、びっくりさせられたこともある。
 その中でも、特にトラブルが多いのが、K男であった。
 K男は、じっとしていられないワンパクな男の子である。普段は、愛嬌があって子どもらしい。
 がトラブルが起こると、自分のしたことは、過小評価し、人からやられたことは過大評価する、とまことにややこしくなった。
 もめごとが起こる度の注意は、まるで効果はなかった。
 ある日、K男が乱暴して困るという訴えが相次ぎ、ちょっと度を越していた。あきらかにイライラしていた。
 「あなたが乱暴するって、何人ものひとが言ってきたけど、どうなの?」
 とたんに彼は、自分がどれだけ、他の子からイヤなことをされているかを訴えはじめた。
 そうした不満であふれて自分のしていることが、他人に響いているかまでは、気が回らないようだった。
 こうしたことが続くと、みんながあたなから離れていってしまうよ……そうゆっくりと話しても、彼は、どうして自分ががまんしなくてはいけないのか、みんなの方が悪いのにというところから、動かなかった。
 そして最後にこう叫んだ。
 「人の心なんて、わかるわけないよ。人の心なんて、どうやってわかるんだよ!」
 衝撃であった。そして、彼だけでなく、三年生の発達として、そこから出発することなのだと、痛感した。

 「自分は悪くない」から、「相手も傷ついている」と、気づくまで

 「相手のことを考えられる」ための手だてが必要になった。資料として子どもの作文を利用した。

2 「つもり」は伝わらない

子どもたちのトラブルの始まりは、軽い気持ちの「からかい」から始める。
友達になりたいのに、その方法を知らない。
いっしょにふざけたいのに、やり方を知らない。
最初は、手加減をしているのが、コントロールがつかずに、とことんまでやってしまう。

 ①自分はそのつもりでなくても、相手がいじめと感じたら、それはいじめになる。
 ②自分の「つもり」は、相手に伝わらない時がある。

「自分がどれくらいやったか」ではなく、「相手がどう思ったか」へ視点を変えることである。

資料1 
     いじめられたこと                         山本 正祐
 いじめられて、「ただすけべ」と言われた。ぼくはかなしい気もちになった。
 (人をきずつけるようなことをいうなんて。)(自分だっていわれたら泣くくせに。今度あったら、同じようなことをいってしかえししてやろう。)
 ぼくは、同じようなことをいってやった。そしたらまた、いわれた。ぼくはむかっとした。今ど、あかえさんにいおう。だけどやっぱりよそう。-略-
ぼくはもうどうすることもできない。だって、はじめは、一人だったのに、いう人がだんだん多くなったからだ。それにもっとひどいことをいわれるようになった。
(だれかたすけてくれ。)とこころの中でさけんだ。かなしくて、なきたいのをがまんしていえにかえった。
(教室で読み聞かせ:子どもの作文珠玉集1子どもをかえた“親の一言”作文25選 明治図書)

この後、母親の上手な話しかけで、この子は気にしないようになって強くなっていく。
そのやりとりが詳しく表現されている。
読んだ後、全体に聞く。

「ただすけべ」と言った子は、相手を怒らせようとわざと言ったのですか。
それとも、おもしろがってちょっとからかったのですか。
自分が思うほうに手をあげなさい。

 全員が、ちょっとふざけてやったと思うほうに手をあげた。

やった人は軽い気持ちだったのだから、これはいじめですか、いじめではないですか。

 これも全員がいじめだと言った。

 「ただちょっとふざけたんだよ」って説明されたら、言われたほうが気分よくなりますか。なりませんね。
 みんなが、遊んでいる時にも、このクラスで過ごしている時でも、きっとあると思います。
 どんなちょっとしたことでも、とても傷つく人は、いるのです。
 ある人が悪口を言われました。でもその人は、「やめろよ」と言いながら、にこにこしていました。
 にこにこしていたからこの人は、うれしかったのでしょうか。ちがいますね。無理してにこにこしているかもしれません。
 楽しそうにふざけあって、けんかごっこやっているようにみえても、ひょっとして、その遊びがとてもいやな人もいるかもしれません。
 無理やり楽しそうにしているかもしれません。外側からは、わからないのです。
 そういうこと、このクラスにもあるでしょう。
 それでは、自分が、いつもふざけてからかって、人をきずつけていたことがあったか、考えてみましょう。
 自分のやったことを、振り返ってかんがえられるということは、大切なことです。
 やったことをわすれてしまったら、もう直せませんね。
 自分で、やってしまった、と反省できる人は、必ず直すことができるのです。
 ここに書いて、これから直していきましょう。
 それからお友達にいやなことを言われたことがある人も、書いておきましょう。

紙を配って書かせた。

①悪口を言われたことだけ書いた子 一五人
②自分の言ったことと言われたこと両方書いた子 一一人
③自分で言ってしまったことだけを書いた子 六人
 以上のような結果だった。一人、よく友達を追いかけまわし、言葉がきつい子がいて、気になっていた。
 しかし、この子は、自分のしたことだけ、それも複数書いていた。それは、自覚できていたということで少し安心した。

3 体の悪口

太っている子で、人から「デブ」とか「ぶた」とか言われていやだったと書いた子がいた。
いじめの対象に体の欠点についての悪口も多い。そこで次は、体のことに対する悪口の資料を使った。
これは、足にあざがあり、それを大変気にしている子の作文である。

資料2
  ぼくはお母さんの子                           大矢 哲
 
 ぼくの足のうらには、あざがあります。左足の太もものうらで、半ズボンをはくと、ちょうど見えるところです。
 今まで、だれもあざのことを言う友達は、いなかったので、すっかりわすれていたのに、二年生になって
「足にきたないものつけている」
 と言われて、気になりはじめました。何度も言われると、
 「ぼくはきたなくないよ」と、言いかえそうと思いました。
 でも声にならなくて、くやしくて泣きそうになりました。-略-
 (教室で読み聞かせ:子どもの作文珠玉集1子どもを変えた“親の一言”作文25選 明治図書)

 このあと、この子は、母親をせめる。
 しかし、母親は、あっけらかんと、「ああ、あのこと。あれはお母さんのこどものしるしなんだよ」と言い、
 いろいろな話をして、子どもの心を軽くさせる。
 我がクラスには、母親を病気で亡くした子がいるので、印刷して配布せず、私が読み聞かせするだけにした。

体のことで、人から言われるといやだなと思うことがある人は手をあげなさい。

ほとんどの子が手をあげる。

 みんなまわりをみまわしてごらん。みんな、どこかにそうした人に言われたくないことがあるんです。
 自分だけではなくて、みんなあります。体のことは、言われても、努力しても直せないことなんです。
 自分が言われていやなことは、人もいやなことなんですよね。

この時は、短い時間だったので、これで終了にした。

4 身体の障害についての意識

最後は、体の障害がある子への接し方の作文である。

資料3
    ななちゃんのこと                            石原 亜紀
 私の学校に、右手と左足がなくて、ほんの短い手と、ぎ足の子がいる。
 六年生で、名前をななちゃんという。ある日、私と同じクラスの男の子が、ななちゃんにむかって、
 「手なし人間しわくちゃん」
と言った。私は、むねがドキンとした。なんてひどいことを言うのだろう。
 ななちゃんは、ふじゆうな体でも、いっしょうけんめいがんばってきているのに。
 いつだって、私がしってるななちゃんは、がんばりやで、いつも明るくすてきなお姉さんだ。
 体育もみんなといっしょにやっているし、おそうじだってやっている。-略-

最初に、この部分まで読む。そして尋ねる。

 この作文は、一年生が書いたものです。ななちゃんという子は、六年生ですが、一年生がひどいことが書いてあります。
 これには続きがあります。では、同じ六年生は、ななちゃんにどのようにせっしているでしょうか。  
 ①一年生と同じでいじめている。  
 ②ふつうにお友達として、接している。 
 ③親切にめんどうをみてあげている。
 このうちどれでしょうか。

 子どもたちの考えは、全員が①のいじめているという反応であった。
 残念であるが、一年生もいじめているから…という理由である。次に前文を印刷して配布して、教師が読んだ。
 かなりひどいいじめで、体がかなり不自由なのに、そうじを、他の子がおしつけているという作文である。
 読みおわった後、感想を書かせた。

○男の子は、ななちゃんをきずつけて、どう思っているかと思いました。
○たとえ右手と左足がなくても、こころと気持ちがあるから、不自由でも「手なし人間…」なんていうのはよくないと思います。
○6年生の人たちがすごくひどいとおもう。むりなことはやってあげればいいとおもった。石原さんみたいなこころをもってほしいと思った。
○よくがんばれるなあとおもいました。

衝撃的だったようで、以上のような感想が続いていた。
以上のように同じ「からかう」ということをテーマに、日常的なことから三つの作文で構成してみた。
子どもの作文を資料にしたのは、教師のよけいな話よりずっと理解しやすいと考えたためである。この作文も心にしみる。

赤ちゃんは、いつも泣いてまわりの大人に訴えます。大人の都合なんて、まったく考えません。
おなかがすけば泣くし、おむつがぬれたら泣く。お母さんが忙しそうだから、泣くのよそうなんて、考えませんね。
でもだんだんと大きくなるにつれて、他の人の事を考えられるように成長していくのです。
みんなも、その「他の人のこと」を考える勉強をしている時なんですね。

〈引用文献〉
TOSS道徳「心の教育」5心に響く「 力のある資料」で生き方を教える道徳授業(明治図書)より


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