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TOSSランドNo: 7679700 更新:2014年01月14日

二章 「力のある資料」で創る低学年の道徳授業


一 無償の愛   安富篤

一九九八年一一月四日(水)、萩市立大井小学校(槙田健先生の勤務校)で授業をさせていただいた。
授業学年 二年
資料 子どもの作文珠玉集③ 「家族のあたたかい絆」作文32選(明治図書)
ねらい 親(母)の無償の愛に気づかせ、親子の絆をもっと深めていこう(親への感謝)とする心情を育てる。

準備物 大きな人形(赤ちゃん) 心の教育(学習)プリント

五分前に教室へ行き、子どもたちと対面することにした。
「こんにちは」
と、言いながら教室の後ろの出入り口から入って行った。
教卓へ行く間に、図工の作品を大げさにほめた。
子どもたちは、いすに座っている子、立っている子、とそれぞれであった。私は、かまわず話しかけていった。
「先生の名前は、安富篤です。よろしく」
その後、担任からいただいた座席表を見て、名前を呼びながら一人一人と握手をした。その間に、トイレに行っていた子が、もどってきた。その子とも握手をして、次のように言った。
「みんなは、歌が好きなんだってね。聞いてみたいなあ。歌ってくれる。サン、ノー、ハイ」
子どもたちは、元気よく歌い始めた。
私は、あい間に「すごい」「上手」と、ほめた。
子どもたちとコミュニケーションをとりながら、自分の気持ちを高めていった。
私がどこから来たかを説明していると、チャイムが鳴ったので、授業を開始した。

テキストを記入して下さい

「みなさんが、歌を歌ってくれたので、先生は、お礼にお話を読みます」

17 おかあさん、まけないで
   田島 可奈子(一年)
 わたしのおかあさんは、おっぱいが一つありません。どうしてかというと、おかあさんは、こわいがんというびょう気で、わたしが四さいのとき、おっぱいをとったからです。おかあさんは、いまでもよくびょういんにいきます。このあいだ、おかあさんは、とってもとってもくるしいけんさをしました。のどから小さいカメラをいれて、おなかの中を見たそうです。くるしくてくるしくて、いきもすえないとき、わたしとりさ子のことをおもいだして、「がんばらなくちゃ。まだこの子たちのためにしねないよ。」と、こころの中でいっしょうけんめいさけんでいたそうです。
おかあさんは、まい日、くさいくさいかんぽうというくすりをのんでいます。おかあさんは、えいごの先生になったり、中ごくごのおべんきょうをやったりもします。わたしがわるいことをすると、おかあさんはこえがかれるぐらいのこえでおこるので、わたしはあしたからは、わるいことや、おこられるようなことは、やめようとおもいます。それに、おかあさんをたすけるように、しようとおもいます。おかあさんは、いいます。「おかあさんがびょう気のぶん、かなちゃんは、やさしくて、がんばりやさんになるんだよ。」と。よるにわたしがおかあさんに、かたもみや、マッサージや、あたまをとかしてかわかしたりすると、「ああとってもいい気もち。」と、いってくれます。おかあさんの気もちよさそうなかおを見ると、まいばんやってあげたいなとおもいます。
 わたしは、おっぱいが一つなくたって、おかあさんのことが大すきです。おこったってけんかしたって、いつだっておかあさんのことが大すきです。おかあさん、びょう気にまけないでね。
(前掲載書五一、五二ページ)

 少し興奮ぎみだった教室が、シーンとなってきた。
 この変化に、読み手の私が驚いた。ほめたかったが、話を切らずに読み続けた。
 読み終わってから、次のように言う。

お話を聞いて、どんな感想を持ちましたか。

 マイクを持ってインタビューをするように、手を口の前にさし出して、感想を聞いていった。
 ・かわいそう  ・かなしい  ・……
 待ちすぎないように気をつけ、次々に聞いていった。
 緊張して声が小さかったので、私が復唱していった。「かわいそう」「かなしい」「…なるほど」
 全員に聞いてから、学習プリントを配布した。
 すぐに名前を書かせた。「すごい!」「早い!」「ていねい!」
 ワンテンポ遅れていた子が、あわてて書き終えた。
 全員が書いたか確認し、鉛筆を置かせてから、次のように言う。

自分が親にしてもらっていることは、どんなことがありますか。思いつくだけ書きなさい。
 二つ書けたら、プリントを先生のところに持って来なさい。

持ってきたプリントを見ながら、「なるほど」「そうかね」「ふーん」などと声をかけて、丸をすばやくつけていく。
 席にもどったら、三つ目、四つ目を書くように付け加える。
 三分たったら持って来させるのを止め、丸がついていない子をさがし、一つでもいいから丸をつける。
 全員に丸がついていることを確認して、列指名で発表させ板書する。
 ・ちゃわんあらい ・せいふくのじゅんび ・かみをくくる 
 ・つくろい ・へやのそうじ ・ふろの水入れ 
・しょくじのじゅんび ・朝おこす ・お金をかせぐ
・せんたく ・しゅくだいをみる 
・ふとんしき ・いっしょにあそぶ
※同じような内容は、まとめて板書した。
ひととおり聞いて、まだあったので立たせて発表させた。
出つくしたところで、次のように言う。

みなさんは、たくさんのことをしてもらっていますね。
では、みなさんがおやにしてあげていることは、どんなことがありますか。思いつくだけ書きなさい。

三分間書かせてから、挙手指名で発表させ板書した。
・しょくじのじゅんび ・ペットのえさやり ・ふきそうじ ・花の水やり
・かた(せなか)たたき ・しょっきあらい ・ふとんしき ・朝おこす
親にしてあげていることが多くあることをほめ、次のように言う。

みなさんは、赤ちゃんの時のことをおぼえていますか。みなさんは今七才ですか。ハーイ、六才になりました。五才になりました。(催眠術をかける時のような言い方で、)四才です。三才、二才、一才です。(子どもたちは次第に体を縮めていき、机の下にもぐりこんでいった)ハーイ、〇才になりました。みなさんは、赤ちゃんです。(子どもたちは、喜ぶように笑った。)ありがとう。もとにもどっていいよ。
赤ちゃんは、ふつう一〇ヶ月ぐらいお母さんのお腹の中にいます。その間にだんだんと大きくなっていくのです。そして、生まれる時はふつう三〇〇〇グラムくらいあります。(と、言いながら一〇ヶ月、三〇〇〇グラムと板書する)。
先生は、今日、赤ちゃんを連れてきました。(えーっ。)
よしよし、大井小の二年生が顔を見たいそうだよ。(と、言いながら教卓の下から人形を取りだす)。
ちょっとはずかしいみたい。(すこしじらす)ハーイ、こんにちは。人形を抱きかかえ、子どもたちの前に立つ。
人形と子どもたちの対面である。

これからが、向山洋一氏(TOSS道徳)が言われる、「体験・知見に支えられた語り」(のつもり)である。
以下の四点について、語っていった。

1 乳児期の授乳 三時間ごとに授乳すること。夜中でも三、四回起きて授乳すること。
2 授乳時の鼻汁の吸引 授乳時は口がふさがり、鼻汁がたまると息ができなくなるので、親が口で吸引すること。
3 排便の処理 ほとんどがゆるく、においがきついこと。二、三日分が急に出はじめ、思わず手で受けとめたこと。
4 急病の対応 夜中に急に発熱し、病院に無理なお願いをしたこと。急にはいて、畳やじゅうたんんを汚したこと。

私も二児の親であり、赤ちゃんの抱き方、風呂に入れたりオムツを替えたりの体験はある。
人形を抱き、実際にやってみせながた語り続けた。
あやす時に、「七つの子」を歌った。
語りを終え、次のように言った。

みなさんは赤ちゃんの時、これらのことをしてもらっていたと思います。家に帰ったら聞いてみて下さい。
もう一つお話を読みます。

12 わたしのたんじょう日
   井出内 理香(六歳)
きょうは、わたしのたんじょう日です。お母さんに、あかちゃんのことをおしえて、といったら、たいけんはっぴょうのテープを、きかせてくれました。わたしは、6かげつでうまれて8ぴゃく80ぐらむでした。あかむらさきいろで、あたまが、たまごぐらいで、ふとももが、かんごふさんの、こゆびぐらいで、しんぞうが1日10かいとまっていました。のところをテープがいったら、お母さんも、わたしも、なみだが、ベタベタでました。ごほんぞんさま、ありがとうと、おもいまいした。大きくなったら、目をなおしてくれたせんせいみたいになりたいし、ようちちゃのせんせいにもなって、たかはしせんせいと、はぎもりせんせいの、あかちゃんに、べんきょうをおしえたり、おもらししたら、パンツもかえてあげたいです。パーマのお手つだいもします。クツをあらうとき、お父さんと、お兄ちゃんのも、あらってあげます。(前掲書三七、三八ページ)

今、思っていることをプリントに書きなさい。思っていることがない人は、今日の勉強の感想を書きなさい。(二つの指示が、二年生には混乱をまねいたようだ。←何を書くのかの質問が出た。)
三分あまり書かせて、三名発表させた(意図指名)それで、授業を終えた。

○ぼくがあかちゃんのとき、ミルクをくれてありがとう。とてもかんしゃしています。
○きょう、べんきょうしてあかちゃんのころは、お母さんがいろいろしてくれるんだなと思いました。
○きょうこんなべんきょうをしたのは、はじめてでした。ぼくは、お母さんまけなきでおきたとき「つらかったんだろうなー」と、おもいました。ぼくがあかちゃんのとき、いろいろなことをしてくれました。せんせいのべんきょうは、たのしかったです。

数日後、その日の日記のコピーを送っていただいた。

きょうぼくは、四時間目のどうとくで田中先生とちがう先生のじゅぎょうをうけました。先生の名前はわすれました。いちばんべんきょうしたのは、「お母さんたちは、くろうしてくれる」ということです。これからもお母さんたちをだいじにしたいです。

 TOSS道徳「心の教育」5心に響く「 力のある資料」で生き方を教える道徳授業(明治図書)より


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