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TOSSランドNo: 4246587 更新:2014年01月06日

非行に歯止めをかけるのは教師の仕事だ!  ー河田孝文ー


一 子どもを非行に走らせないことも大切な心の教育である

TOSS道徳における「生き方を教える道徳授業」とは、

「心から大切と思うことを」「具体的な場面を通して」「断固として教えること」
「学校の失敗」向山洋一著 (明治図書)

である。
 ありきたりの資料を読んで、無責任にバラバラと発言をさせ、しまりのないおしゃべりで締めくくるような道徳授業とは、大きく一線を画す。やってもやらなくても変わらないような道徳授業は、TOSS道徳の範疇には入らない。
 たった一時間の授業で子どもたちが変わる、そんな道徳授業をたくさん創り出したいと考えている。
 少年非行は、人間の生き方を大きく踏み外した行為である。
 子どもたちを非行に走らせないことも大切な心の教育である。
 TOSS道徳は、このような少年非行の歯止めとなる道徳授業も創っていきたいと思っている。
 これまでの道徳授業ではほとんど扱われなかった分野である。

二 「盗み」に歯止めをかけた実践

もう何年も前、盗みが常習化しているという子を担任した。
 担任してまず思ったのが、何としてもその子の盗みグセに歯止めをかけなければいけないということである。
 また、「盗み」は、その子だけの問題ではない。どの子も手を染める可能性を多分に孕んでいる。
 そこで、学級全体に向けて次のような道徳の授業を実践した。

1 窃盗の具体的場面を提示

少年の窃盗事件(新聞の切り抜き記事)を読み上げた後で、「盗みをはたらいた子について自分はどう考えるか」を書かせ発表させた。
 「盗みはいけない」「盗んだ人はいけない」「人の迷惑を考えていない」・・・・などがでた。
 批判的な意見ばかりである。
 規範意識が正常であることがわかる。
 しかし、ここで終われば、これまでの道徳授業と変わらない。決して盗みへの歯止めとはならない。
 歯止めをかけるには、どうすればいいのか。
 盗みをはたらいた子が、その先どうなるかという見通しを持たせることが大切である。

2 「盗み」を続けたらどうなるか話す

子どもたちの意見が出尽くしたところで、次のように話した。
 「先生は、盗みをした子はとってもかわいそうだと思います。」
 そして、次のように話を続けた。

① 「人のものを盗む」ことは、一回目はドキドキするそうです。でも、それで成功してしまうともう止められなくなってしまいます。人間というのは、やってはいけないことでも、続けていくうちに慣れていくものです。二回目からは、平気で人のものを盗むようになるそうです。やった人が心からやめようと思わなかったら止めることはできません。まわりの人がいくら言ったってだめです。止めようと思わなかったら、この先ずっと、人のものを盗らないと我慢できなくなるのです。お金にちょっと困ったらすぐ人のお金を盗むような人間になります。誰も見ていないと思うかもしれません。でも、必ず誰かが見ているのです。絶対に見つかりっこないと思うかもしれません。でも、神様は絶対に見ています。神様なんていないよという人もいるでしょう。でも、どんなにうまくやったと思っていても盗みを最初から最後まで見ている人が必ずいます。誰だと思いますか。(「自分!」と子どもたち)そうです、自分はその盗みを最初から最後まで詳しくはっきりとみているのです。自分をごまかすこと、ウソをつくことは絶対にできません。盗みをはたらいた人は、そのいやなことを死ぬまでずっと引きずっていかなければならなくなるのです。また、証拠は絶対に残ってますから、必ず見つかります。最初に見つかったときは、子どもだからまだ謝っただけで許してもらえるでしょう。でも、その先またすると、もう許してもらえなくなります。うわさはすぐに広まります。そして「あの子はドロボーだ」と後ろ指さされるようになるのです。そうなるともうおしまいです。盗んだ子だけじゃなく、その子のお父さんもお母さんもお兄ちゃんもお姉ちゃんも家族全員が陰口を言われるようになります。そこに住めなくなります。お父さんもお母さんも仕事をやめないといけなくなるでしょう。また、どこへ行ったってそのうわさはついて回ります。盗みをしたということから逃げられなくなるのです。

② 盗みは人間として絶対にやってはいけないことなのです。法律でもきめられています。盗みは、「窃盗」とも言います。(ここで、刑法から引用した次の文章を見せて読む)

第三十六章 窃盗及び強盗の罪
  (窃盗) 
  第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役に処する。

人の物やお金を盗んだ者は、10年間刑務所に入らなければならないと書いてあります。
  人の物を盗むことをやめられず大人になってやったら、絶対いつか見つかってつかまるのです。日本の警察は優秀ですから、どんなに上手くやったと思っていても絶対につかまります。そして、盗みグセが治るまで刑務所の中で何年も生活することになるんです。

③ じゃあ、大人になるまでに止めればいいと思うかもしれません。でも、子どもでも、盗みグセが治るまで入らないといけないところがあるのです。少年鑑別所といって、親から友達からも学校からも離れて一人で入らないといけないところなんです。少年鑑別所に入った人の話を見つけてきたので読みます。
 人の家にだまって入ってお金を盗り続けた少年の話です。

「ピンポーン」とチャイムがなり、玄関に出ると刑事さんが立っていた。
  「Mくんだね。○○警察だけれども、君に窃盗罪と住居不法侵入で被害届が出てるから署まで着てください。」(窃盗とは、人の物を盗むこと。住居不法侵入とは人の家に黙って入ることを説明した。)
Mは、すぐに警察に連れて行かれた。つかまった夜、警察署の取調室で今までやったことを全部聞かれた。もうごまかせないと思ったMは全部自供した。(自供とは、自分でやったことを話すことだと説明した)その後、他の盗みはやってないか全部調べられた。それから約20日間、ずっと警察署で調べられた。それから、家庭裁判所審議を受けて少年鑑別所に入れられることになった。鑑別所までバスに載せられ護送される最中は目隠しをされ自分はどこに行くのか不安になった。鑑別所に入ると身体検査などを受け、衣服は鑑別所のジャージに着替えさせられ独居房に入れられる。(一人で入る狭い部屋のことで、外から鍵がかけられて許しが出るまで何日もそこにいなければならない所という説明をした)鑑別所で過ごした夜は、後悔でいっぱいだった。Mはその独居房に一週間も入れられていた。他の人との生活で問題があるらしいという検査結果がでたからだそうだ。それから、やっと5~6人で生活する雑居房に移された。鑑別所の中では、昼間は体育をしたり授業を受けたり反省の作文を書かせられたりする。一番辛かったのは、体を横にして寝転んだりしてはいけないということだった。体を横にすることは禁止されているのである。具合が悪いときは、看守の人に横になる許可をもらってからでないと絶対に許されないそうだ。Mはそんなところに何週間も入っていた。鑑別所から出てきたMは、次のように友だちに話した。「今度はいいかげん懲りた。鑑別所に入ったら考えた。本当に悪いことは止めようって。だから、おれ、今回つかまってよかった。二十歳こえたら新聞に名前がのって、家族にも知り合いにも迷惑をかけるもん。もう鑑別所にも入らない。」

読み終えてから、次のように話した。

説明1:

「もしも、みんなの中で人のお金を盗むようなことがあったら、この話のようになります。必ずなり
ます。」
 「絶対いや」と子どもたち。
 「そうでしょう。人の物がほしくなるときは、誰だって一度や二度はあります。もしも、この先君達
が、人の物を盗りたいという気持ちになったとき、今日の道徳の時間を思い出してください。」

といって、話を打ち切った。
 みんなシーンとして聞いていた。
 さて、その後である。その子が人の物を盗んだという話は聞いていない。

三 従来の道徳授業では歯止めはかけられない

その子は、「盗み」が常習化していた。
 とにかく、「盗み」に歯止めをかけたかった。
 そう思って、このような働きかけをした。その時の私に考えられる精一杯のはたらきかけであった。
 このまま続けたら、どんな悲惨な結末が待っているのかということを資料を通して教えた。
 説教も叱責もしていない。ただただ資料を読み聞かせただけである。
 それでも、その子の盗みグセに幾ばくかの歯止めをかけることができた。
 従来の道徳授業のやりかたで「盗み」という現象を取り上げたとしても歯止めをかけることはでいないだろう。
 なぜなら、「盗み」という行為に関わった人(当事者及び被害者)の気持ちばかりを想像させるからである。
 子どもたちは、「盗み」をやっちゃいけないことくら十分わかっている。被害にあった人がどれだけ迷惑になっているか、悲しい気持ちになっているかもわかっている。
 しかし、盗みをする子は、そのような罪の意識を乗り越えて(あるいは麻痺して)臨んでいるのである。
 「罪の重さ」を考えさせるのも必要である。
 が、盗みという行為に歯止めをかけるには、もう一つの手立てがいる。 
 その一つが、「盗みをはたらいた子が先々どうなるか」という見通しを持たせることである。悲惨な結末が待っていることをきちんと教えてやることである。

四 「少年非行防止」という道徳授業の新分野

少年非行防止は、「ならぬはならぬ」を教える大切な心の教育である。
 このようなことを道徳授業として組み立てていきたい。
 少年非行の誘惑に例外はない。どんな子だって踏み外す危険性を孕んでいる。
 一つや二つではダメだ。いろんなケースごとに何種類も必要である。
 あらゆる非行のケースに対応できる資料と授業が必要である。
 TOSS道徳はこれまで誰もやらなかった道徳授業の新分野を切り開いていく。
 大きな志と多くの知恵が結集したTOSS道徳だからこそできる挑戦である。
 本書は、その第一である。従来の道徳授業とは一線を画した力のある授業ばかりである。
 ここに紹介された授業を是非とも教室で試していただきたい。
 そして、修正・批判・反論・代案など事務局までお送りいただけたらと思う。
 そこから、より深くて広い授業実践を蓄積し、第二第三弾を発信していきたいと考えている。

TOSS道徳「心の教育」シリーズ8巻(明治図書)より


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