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TOSSランドNo: 7072732 更新:2012年12月13日

初心者でも挑戦できる「やまなし」分析批評の授業!全発問・説明


 音読については、毎時間、何らかの形で取り入れた。
 TOSS上級者の先生や中級者の先生のクラスであれば、音読なしで、いきなり討論という形態もあるかもしれないが、
初心者のクラスでは、音読は毎時間とるべきと思われる。
 特に最初の2時間は音読だけを中心として授業した。

 向山先生や、長崎の伴一孝先生の音読指導を追試する。

 ・題名の横に○を10個書かせる。(向山先生の追試)
 ・教師が一文を読み、子供に同じ文を一斉読させる。一文読ませる度に、姿勢や声の大きさをほめていく。
 ・この手順で1ページ文を読み終えたら、子供達を起立させ、そのページを各自で音読させて座らせる。
 ・一通り終えたら、合計2回読んだことになるので、○を2つ赤鉛筆で塗らせる。
                           「基礎・基本の徹底システム」 伴一孝 明治図書 より、引用

 その他、教師との一文交代読み、二人組の一文交代読み、グループでの一文交代読み、スラスラ読み、タケノコ読み等行い、
最終的には「指名無し音読」ができるようにする。

 難語句については、その都度机の横にかけてある辞書を使って確認させる。
 辞書は、いつ引いても良いこととしておく。
 クラムボン・イサド等の言葉については、宮沢賢治の背景がわからないと検討できないので、授業計画の一番最後、
小宮孝之先生のHPを印刷した資料を配布した後に、考えさせる。 

発問1:

2枚の青い幻灯とは何ですか。

 この発問をすると、2時間の音読を経ていればすぐに答えは出てくるだろう。
 当然、「5月」と「12月」である。
 
 最初と最後の1文が付け加わることにより、「視点」はかなり複雑な様相になる。
 このような文章の構造を「額縁構造」と呼ぶことを伝え、この2文については、後で検討することを伝える。

 中身は「5月」「12月」とまとまりごとに見出しがついているので、この問いに対する答えを見つけるのは、
比較的簡単である。初心者のクラスでも問題ないと思われる。

 向山先生は、まず視点を検討されたが、初心者のクラスではこれは避けたほうが賢明である。
 いきなり視点を検討しても、子供達が「宮沢賢治の心象風景」であることに気づくような検討を望むのは難しい。
 まして「の」に着目するなど、夢のまた夢である。
 視点の検討は、本文の読み取りが終わった最後に行うのが良いと思う。

発問2:

色以外の正反対に位置するもの(言葉)は何ですか 。

 対比を問う発問である。
 色以外と指定する。そうでないと、ごちゃごちゃとして、整理できなくなる。
 ここでは、「かわせみとやまなし」「かわせみとかばのはな」のように、死をイメージするものと
生をイメージするものという対比を教師の頭に入れておくと、私のような初心者は、整理しやすくなる。
 対比を初めて扱う場合は少し丁寧に対比の概念を説明する必要があるだろう。
 私は、次のような説明をした。

説明1:

 「大きい」の反対は何ですか。→「小さい」
 「強い」の反対は何ですか。→「弱い」
 「正義」の反対は何ですか。→「悪」

 すばらしい。その通りです。
 では、次はどうなりますか。

 「象」の反対は?→「あり」「ネコ」等

 そうです。「象」は大きいですね。それに強そうだ。
 これの反対の動物といえば「あり」のような小さいものがピッタリですね。
 ただ、この場合は答えは「あり」だけでなく、「ねこ」でも「のみ」でも
 良いといえます。答えは一つに決まっていないものもあるのです。

 このように、反対の意味を表す言葉の関係を「対比」といいます。

 対比について、「やまなし」の研究授業をやることになった同じサークルの阿部先生に対して私が返信したメールがある。
 サークルのMLに出したものだが、以下に引用する。

阿部 先生

 千明です。
 対比について考えてみます。
 
 阿部先生は、5月と12月の対比を、どう考えますか?
 向山学級では、「生←→死」も「死←→生」も、両方でましたね。
 5月は普通に考えれば「恐怖」であり、「死」を表します。
 だから、一般的には「死←→生」にしてしまうと思うのです。

 ところが、向山学級は「生←→死」が出てくる。
 5月が「生」で12月が「死」ですよ。
 これ、すごいですよね。

 「魚が食べられるということは、魚にとってみたら死だけど、カワセミにとってみたら生だ。」

 「やまなしは、木から落ちてくる。ということは、やまなしは死んでいることになる。だから、死だ。」

 こういう意見が出るところが向山学級のすごさです。
 そして、それに対する反論もすばらしいです。

 「蟹から見て、カワセミは死を表している。死への恐怖だ。
  5月は黒が多い。黒は死を表す。また、黄金も極楽黄土だから、死を表す。
  青は生と死の中間であり、青の世界の中の黒は、死の世界を表す。」

 「やまなしは落ちることで死んだのではない。植物の世界では、自分が死ぬことで次の生へと命をつないでいく。
  5月は動物の世界の死、弱肉強食の世界であり、12月は植物の世界の死であり、それは生を表す。
  白は生を表している。」

 そして、3代目の子どもたちは、さらに次のような到達点にたどり着きます。

 「動物の世界の死より、植物の世界の死を宮沢賢治は望んでいる。
  それは、死が生へと転化されるからだ。最愛の妹トシを失った賢治は、そのようになってほしいと願っている。
  その気持ちを12月の世界で表したのだ。」

 「動物の世界の死も、植物の世界の死も、死はそれで終わりではない。死んでから、余計に心の中に強く残るものもある。
  それをクラムボンは表しているし、魚も、やまなしも、それを表している。」

 「そのようなことを含め、賢治の心を全て書ききったからこそ、最後が<おしまいであります>と、
  強く断定しているのだ。」

 すごい峰です。
 この、最高峰の児童の姿には、圧倒されますが、しかし、それを育てたのは、まぎれもなく、向山先生です。
 このように育てることは、私にはまず不可能ですが、しかし、向山先生が残して下さった実践記録を読むことで、
教材研究が深まることは確かです。
 本当に有り難いことです。

 阿部先生も、おそらく向山先生の実践記録は熟読されたことと思いますが、「5月と12月の対比」を授業する前に、
もう一度、授業記録を読まれることをお奨めします。
 年齢別実践記録集第14巻の名取伸子さんの評論文を読むだけでも、かなり勉強になります。
 

 いずれにしても、授業するのは阿部先生です。
 どうぞ、自分のやりたいように授業なさって下さい。
 自分の納得のいかない授業をしても、成功もしないだろうし、何より情熱が子供に伝わっていきません。
 「やまなし」は、先生と子供との勝負ですから、ぜひ、教師も児童も勝負に勝てるよう、やりたい授業をなさって下さい。
 応援しています!!

 勝手なことばかり書きました。
 お許し下さい。

発問3:

それはそれぞれ何をイメージしていますか。

 象徴を問う発問である。
 前時でたくさんの対比が出されるであろう。その全てを認めなくてはならない。
 認めるが、しかし出させっぱなしでは、先に進めないので、次の発問をして整理する。

発問4:

この中で、最も重要な対比は何ですか。

 おそらく、「かわせみ←→やまなし」「かわせみ←→かばのはな」のようにまとまるだろう。
 まとまらなかったら、教師が強引にまとめる。
 初心者では、多少強引なかじ取りも、良しとする。(妥協する)

 「かわせみ←→やまなし」のようにまとめたら、その対比が、何を意味しているのかを考えさせる。
 それが、冒頭の発問となる。
 重要な対比が、何をイメージしているか考えさせることは、作品の主題にかかわる大事な作業となる。

 「イメージ(象徴)」について、初めて扱う場合は、やや丁寧な説明が必要となる。
 私の場合は、次のように説明した。

説明2:

「真夜中にカラスが泣いています。」
 こういう文があるとき、どんな感じがしますか。→不気味・恐い

 そうですね。
 真夜中にカラスが鳴くなんて、なんだか恐いよね。
 それは、カラスが黒い鳥であること、死体のまわりを飛ぶような映像を、テレビや映画で見たことなどが、影響しているよね。
 言葉には、その言葉の持つイメージがあります。
 それをその言葉の「イメージ」とか「象徴」と言います。

 「かわせみ←→やまなし」の場合は、何になるであろうか。
 私は次のようなイメージをもって授業した。

かわせみ  →  死・恐怖

やまなし  →  生・安心

 子供達は教師のもつイメージに影響を受けるのか、私のクラスでは、やはり「死←→生」のようにまとまった。

発問5:

生・死を表す色は何ですか 。

 「かわせみ←→やまなし」を「死←→生」とまとめたら、次は、それぞれを表す「色」について考えさせます。
 やまなしの世界では、色の検討を外すことはできません。
 たくさんの色が出てくるからです。
 基調となるのは「青」ですが、その他にも「黒・銀・鉄色・赤・青白・白・黄金・金」等が出てきます。
 そして、この色は、それぞれ「生や死」に結びつけて考えることが可能です。
 子供達は自分のイメージで、理由をつけて発表しやすいのです。

 ここでは、それぞれ理由をつけて意見が発表できれば良いとします。
 大事なことは、理由をつけさせることです。その内容は、当然向山学級には足下にも及ばないと思いますが、
色を生や死と結びつけ、その理由を発表できることが、素晴らしいのだと考えています。
 初心者でも、そのような哲学的な世界に誘ってあげられるのが、「やまなし」の醍醐味です。

 ただし、「生」なのに「黒・鉄色」、「死」なのに「白」などが出てきたときには、少し突っ込んでみるといいかもしれません。
 「その意見について、賛成の人?反対の人?理由が言える人?」のように聞いてみるのも良いと思います。
 私のクラスでは、そのような意見は出ませんでした。

発問6:

黄金は何を表しますか。

 いよいよ、「やまなし」の検討もクライマックスに近づいてきました。
 黄金は、死を表すのか、生を表すのか。
 前時の段階で、おそらく「黄金は生をあらわす」と答えた児童が多いのではないかと思います。私のクラスではそうでした。
 もしかしたら、「黄金は死を表す」という意見は出ないかもしれません。
 そこが向山学級との大きな違いです。「黄金は死」という意見が出たなら、それは初心者の域を抜けつつあるような気がします。
 いずれにしても、おそらくいても1人2人だと思います。
 しかし、「黄金は何を表しますか」と、改めて発問することにより、何人かは「死を表す」という意見に変わる児童も
出てくると思います。
 そうなれば、討論風に進められるチャンスです。
 文章中の言葉を根拠に、討論にチャレンジさせてみるとの良いのではないでしょうか。

 向山先生は、「赤の検討」「黄金の検討」「青の検討」の順番で検討させています。
 そして、そのどれもが大人も顔負けの深い討論がなされています。
 時間があれば、赤や青についても検討させたかったのですが、ギリギリ10時間までしかとれなかったため、私の場合は
カットしました。
 できれば「青」については、検討したほうが良いと思われます。基調色です。
 生を表すのか、死を表すのか。興味深いです。  

発問7:

やまなしは何を表しますか。

 やまなしの検討も、佳境を迎えました。
 「やまなし」は、何を表しているのか。
 子供の意見が揺れるところです。子供は頭をフル回転させて、いろいろと理屈をくっつけます。
 見ていて、大変楽しい場面です。

 同じサークルの阿部先生の研究授業で、子供から「やまなしは、死んだけどその後、お酒になったから、生」という意見が出ました。
 これについて、私は、次のようにサークルMLにメールしました。

子どもたちの意見の中で、違和感があったのは、次のところです。

 「やまなしは、死んだけどその後、お酒になったから、生」

 ここです。
 授業検討会でも少し言いましたが、やまなしの「生」は、もっと深いところにあると思います。

 植物の「実」は、幹(枝・くき)から落ちて、初めて次の「生」へとつながります。
 いつまでも自分がくっついていたら、次へはつながらず、その場で消滅します。
 滅私の中に、次の生がある。
 宮沢賢治は、ここに強く心を惹かれていたと考えます。
 愛する妹「トシ」を失い、深い悲しみに包まれます。
 しかし、死んで、なお「トシ」は自分の中に生きている、むしろ鮮やかに光を放っている、それが「植物の死」であり
「生」につながったのではないかと思います。
 「トシ」の死を、「植物の死」ととらえたい。
 その気持ちが、12月の「やまなし」になっているのだと思います。
 「トシ」の死に対しての深い悲しみと怒りが5月に、「トシ」の死を受け入れた宮沢賢治の心が12月に表れていると考えます。
 だからこそ、最後の一文がとても重要なのではないでしょうか。

 そう考えると、もし、阿部先生の授業の中で、主題にまで触れるとしたら、

 「やまなしは、死んだけどその後、お酒になったから、生」

のところで、揺さぶりをかけるのが一番良いような気がしました。

 「そうかな。先生は、お酒になったから生だとは考えないな。それじゃあ、カワセミのえさになった魚と一緒じゃない?」

のように。

 自分の学級で実践したとき、子供達に意見をまとめさせました。
 その時、同じようにサークルのMLに次のようなメールを流しました。

 やまなしのイメージ「やまなしは何を表しているか」の題で、宿題に出し、原稿用紙にまとめさせました。
 ノートに書いた自分の意見を再び原稿用紙にまとめるというような作業です。
 気の利いた児童は、ノートの意見を更に強化して書きあげてきます。
 しかし、そうは言っても、私の未熟な指導ですので、平均1枚程度です。
 今まで、同じようにして、「生を表す色・死を表す色」、「黄金は何を表しているか」の2つのテーマについて
宿題で原稿用紙にまとめさせました。

 本日の課題で、なかなか深い読み込みができた児童がいたので、嬉しく思いました。
 次のメールで、これを紹介します。

みなさま

 千明です。
 児童の書いた作文は、以下の通りです。
 (名前は仮名です。)

(ここから)

 ぼくは、やまなしは死を表す言葉だと思います。
 死を表す言葉には、この物語に出てくる言葉に、「かわせみ」があります。
 かわせみが表す死は「殺す・生き返らない」です。
 やまなしが表す死は、かわせみが表す死と対比できます。
 なぜなら、やまなしの実は「木から落ちる=死ぬ」ということですが、それは実の人生が終わり、その後に芽が出たりして、
植物としての生が始まったわけです。
 つまりやまなしが表す死は、「死ぬ。しかしまた生き返る」ということなのです。
 作者は死んだ後に、また生き返るような死にあこがれていたのではないでしょうか。

(ここまで)

 このレベルまで書けた児童はこの小林君ただ1人でした。
 うちのクラスでは、10人中7名がやまなしは死を表していると、考えています。
 初めは、8名が「やまなしは生を表している」という意見だったのです。
 かわせみとの対比、あるいは12月のやさしい印象から、
「生」だと思い込んでいた面があります。
 意見を発表している中で、1名の男子が、「やまなしは木から落ちた段階で死んでいる」と発表してから、
文章に着目するようになりました。

 小林君のような意見は授業中は出ませんでした。
 本日宿題を提出させて、それを読み、驚きました。
 その他の児童の意見も授業中よりは深まっていると感じました。
 やはり、書かせることは大切であると改めて思いました。

<小林さんの作文>

 私の考えは、やまなしは「幸運・生」を表している、のではないかと考えました。
 それは何故かというと、聞いたことがあって、パッとひらめきました。「人間は、亡くなったときや、悲しいとき、苦しいとき、
とても辛いときなどに、嬉しさや楽しさや喜びを頭の中でイメージすることがある」っていうのを知っています。
 実際に私は、辛いとき、悲しいときに浮かんできます。やまなしも人間と同じで生きているのだから、同じだと思いました。
 木から落ちたやまなしは、魂が抜けて、ただやまなしの良い香りが水の中に広がっていったんだなと思いました。
 自分自身、やまなしだったら、冬の寒い冷たい風がやまなしに当たり、風に吹かれて水の中に落ちたので、自分は限界だと
思ったけれど、
水の中では生きている、香りが広がっているんだと思っているのかもしれません。
 やまなしは水の中でも匂いが広がっていて、生きているのは一緒なんだと考えたからと思いました。
 作者もやまなしと同じ気持ちなんだと思いました。自分(作者)のイメージをやまなしに加えているから。
 あと、作者は、やっぱりやまなしを何かにイメージしていると思った。
 私たちが考えているものより、もっと具体的な例があるはずです。
 やまなしは木から落ちたのだから、やっぱり次の文でわかると思った。
 怖いものみたいなミステリーじゃないのだから、怖い文が続いていないので、生を表していると思った。

(ここまで)

 小林さんは、とっても前向きな子です。
 昨日の宿題も、原稿用紙2枚にまとめてきました。
 ちょっと自分の想像が入り、文章から離れている部分もありますが、後半の部分は、かなり鋭いと思いました。

<吉原君の作文>

 やまなしは、死を表す。
 かわせみは、生き物の死を表していて、やまなしは植物の死を表している。
 やまなしの死は、水の中の生き物に良い香りを与えて、自分が犠牲になっても、水の中の生き物に良いことをしたことを表している。

<金子君の作文>
 ぼくは、やまなしが表しているのは、死だと思いました。
 かわせみと違うところは、かわせみが表している死は、殺すという方の死だと思いました。
 でも、やまなしは、死んだ方の死で、しかも下に沈んでくると、かに達の食料となって役に立っている。
 作者は、やまなしの方の死が良いと思っていると思った。
 なぜなら、かわせみの方の殺すという死より、やまなしの方の自然に(勝手に)死ぬというほうが、良いと思っていると思った。

(ここまで)

 男子は、圧倒的にやまなしは死を表している、と考えているようでした。
 最終的に生を表していると書いたのは、女子の3名だけでした。

<鈴木さんの作文>

 やまなしは生を表している。
 P12L11に、最初にやまなしが落ちてきたときに、「かわせみだっ。」って、子供のかにはかわせみを思い出して
恐怖を感じていたけど、お父さんのかにがかわせみじゃなくて、やまなしって言ったときに、すごく安心してたし、やまなしが落っこちたとき、
やまなしは死んだけど、かにたちはやまなしにすっごく喜んでいたから、やまなしは生を表していると思う。
 それと、弟のかにが泣きそうになって、その上、黒い丸い大きなものが落ちてきて、すごく悲しんでいるときに、
やまなしが出てきたら、かにたちはすごく喜んで、悲しみが無くなったから、やまなしは生を表していると思う。
 やまなしは落っこちて死んじゃったけど、やまなしが落っこちたおかげで、かに達は喜べたんだから、やまなしは死じゃなくて、
生を強調する存在だと思う。

(ここまで)

 やってみるまでは、やまなしのどこまで迫れるか、不安でした。
 表現の素晴らしさを味わって終わりかも・・・と、思ったときもありました。
 しかし、順序を入れ替えて、少し時間をとって(本日で7時間目)やってみると、なんとなく向山型分析批評の授業に
ほんの少し近づけたような気もしています。
 もちろん、向山先生のはるかな峰から見れば、まだふもとにもたどり着いていないのが現実ですが・・・。

発問8:

スクリーンはどこにありますか。

 いよいよ、視点の検討です。
 「やまなし」における視点の検討は、大変難易度が高いのです。
 「やまなし」における視点を検討させる、向山先生の考え出した天才的な発問について、次のようにサークルMLにメールを出したことがあります。

 向山先生は、A「所有」B「同格」C「関連」の3つのうち、どれか、ということで分析されています。
 そして、この分析の後、他に誰も考えつかないような天才的な発問を作りだすのです。
 その発問は、次の通りでした。

 スクリーンの位置はどこか、図で示しなさい。

 向山先生は、比類なき天才だと思います。

 残念ながら、この天才的な発問を使っても、「の」について検討させられることはできないと思われます。
 少なくとも私のような初心者の域を出られない教師には難しいことです。
 子供達は、谷川の絵を描き、そこにスクリーンを描きます。
 私はそれを褒め、「の」について辞書を引かせました。
 そして、それを読ませました。
 そうすることで、「作者自身のことだ」という意見の広がりが見られました。
 「の」について辞書を引かせてしまうことも、有効な方法だと思われます。(本当は、児童が自らそこに気がつくと良いのですが。)

発問9:

 宮沢賢治にとって5月や12月は何を表していますか 。

 最後の問いになります。
 これは、資料がなければ解けない問題です。
 本来、「向山型分析批評の授業」は、「無人島の批評」です。
 作者の情報など必要ありません。
 しかし、「やまなし」は別です。
 ここまで、分析してきたなら、やはり最後は作者論にまで踏み込まざるを得ません。
 作者の情報を子供に与えるには、良質の情報が必要です。
 それには、小宮孝之先生のHPが最適です。

TOSSランドNo,1116184 作家論に限りなく迫る「やまなし」の授業

 このHPから必要な資料を印刷し、配付します。
 これで、宮沢賢治について、子供達は必要な情報を蓄積できます。
 この後、5月は宮沢賢治のどんな状況を表しているのか。
 12月は、どんな状況を表しているのかを考えさせます。

 ちなみに、私はここで「クラムボン」について考えさせました。
 多くの児童が「トシ」であると考えていました。

 残念ながら、評論文指導はできませんでした。
 力も時間も足りませんでした。
 そのかわりに、授業後の感想文を書かせました。
 中には家に帰って書いてきた児童もいました。
 これを学級通信でまとめ、それをサークルのMLでメールにして流しました。
 以下に紹介します。(名前は仮名です。)

みなさま

 千明です。
 最近、教育に関する発信ができないので、終業式の日に出した学級通信を紹介することにします。
 長文になってしまうので、ちょっとずつ引用して、皆さんの負担にならないようにしたいと思います。(^^)

<通信引用、ここから>

やまなし!完結編
 「やまなし」の授業の終わりに、授業後の感想文を書かせました。
 感想文ではありましたが、みんな原稿用紙2~3枚にまとめることができました。
 中でも、鈴木妃代里さんと小林優さんは、家にまで持ち帰り、これを仕上げてきました。その数が、驚きです。
   鈴木さん  ・・・ 8枚
  小林さん  ・・・11枚
 大変見事です。これだけの枚数の感想文は、なかなか書けるものではありません。授業でやったことを、ほとんど網羅しています。
 鈴木さんと小林さんの能力の高さ、学問に対する姿勢のすばらしさを感じます。このような姿勢は、誰にでもあるというものではないのです。
 今回は、クラスで最高の枚数を書いてきた小林さんの感想文を紹介します。どうぞ、お楽しみ下さい。

  やまなしを読んで
                         小林 
 私は、宮沢賢治の作品「やまなし」を初めて読み終わったとき、あまりにも知らない言葉がたくさんあった。中には、クラムボンと
いうのが出てきたりして、ごちゃごちゃしていて、本当に何だかわからなかった。なぜ、5月と12月に分かれているのだろうか。
やまなしがトブンと落ちてきて、どうして作者はそこでやめたのか、等と、不思議に思った。
 でも、読んでいるうちに、何となくわかった気がしてきた。勉強がだんだんと進んでいくのが楽しみであった。
 「かわせみと、やまなし。かわせみとかばの花。この2つのイメージしているものは何か。」を考えている時私はノート
1ページにいっぱいなるほど考えた。
 恐怖と安心。強と心。闇と光。悲と嬉。
 殺と生までたどりついた時、先生に「生と反対になるもの」と言われたので、すぐ分かった。
 この対比は、「死と生」だ。
 それぞれを表す色は何か。かわせみ(死・恐怖・不安)の色は、やはり黒色だなと思った。8ページ1行めの「そのかげは、黒く静かに
底の光のあみをすべりました。」と書かれていて、この文では、2つ黒とイメージされるものがあるから。
 一つは、影。影ができるということは、暗いところで、恐怖が伝わるから。
 二つ目は、黒く静かに底の光と書かれてあり、シーンとした暗い底をすべったから。底をすべったのなら、何ものかがきたとあわて、
やっぱり恐怖を与えているな、と思った。
 8ページ6行目「はっきりとその青いものの先がコンパスのように黒くとがっている。」で、コンパスのように黒の色が出てきて、
針が黒いのと同じだから、危ない物で黒く、これは恐怖を表しているからだと思った。
 でも、中には、黒ではなく、鉄色、青という意見もあった。その意見を聞いても聞かなくても私は黒だと思った。
 かばの花、やまなし(生・優しさ・安心・生)を表す色は白だと思った。どうしてかというと、6ページ14行目の「波からくる
光のあみが、底の白い岩の上で、美しくゆらゆら伸びたり縮んだりしました。」と書いてあり、白い光で元気をもらい、安心している
感じがした。
 きれいにゆらゆら伸びたり縮んだりして、急にゴムみたいな感じで伸びたりするのではなく、ゆっくり優しく伸びたりしたんだなと
分かったから。10ページ1行目「あわといっしょに、白いかばの花びらが、天井をたくさんすべっていきました。」の文で、花びらが
天井いっぱいになり、ゆっくりとすべっているからだと思った。黒い静けさから、だんだん白っぽくなっていく様子だなと思った。
そこら中の水の中は、花びらでおおわれているから、安心すると思ったから。
 10ページ10行目「白いやわらかな丸石も転がってき、小さなきりの形の水晶のつぶや金雲母のかけらも、流れてきて止まりました。」
の文で、そっとやわらかい丸石が転がったという文は、優しさが詰まった文だなと思った。
 でも、これについて意見はそろわなかった。そろわなくても、一人一人の考え方が違うって良いなと思った。もし、1人の人が
自分の意見と違っても、これからはそういう表し方もあるんだなって思えるから。十人十色だ。違う意見も聞いたけれど、白だと思った。
黒の反対って白だから、死の反対は生と同じで、その意見は通った。
 黄金は何をイメージしているのかでは、この課題でもノートいっぱいに書いた。最初は全く分からなかったけれど、やまなしを
読んでいるうちに、私は生だと思った。
 理由は、6ページ12行目のクラムボンが笑って楽しんでいたところで、「にわかにパッと明るくなり、日光の黄金は、夢のように
水の中にふってきました。」の文で、パッとすみからすみまでが明るくなって、黄金が夢のように優しく降ってきた様子がイメージ
できた。夢のようにと書かれているので、ありえないように降ってきたり、パラパラ降ってきたり、はねながら降ってきて、楽しさが
感じられるから生かなと思った。
 また、7ページ14行めの「魚が、今度はそこら中の黄金の光をまるっきりくちゃくちゃにして、おまけに自分は鉄色に変に
底光りして」とある。これは5月の頃のことだ。自分ていうのは魚のことで、そこら中の黄金の光をくちゃくちゃにしても、また底に
沈んでから光り出すのではないかという考え方で、「あっ・・くちゃくちゃにしちゃった・・」と思っても、底に行ってから光るので、
ホッとした安心を持たせていると思った。
 8ページ10行目の「それっきりもう青いものも魚の形も見えず、光の黄金は、ゆらゆらゆれ、あわは、つぶつぶ流れました。」の
ところで、かわせみが勢いよく飛び込んできたから、さらさらっと揺れながら、あわと一緒に流されたのではないかと考えた。
 12ページ13行目やまなしが落ちたときに、黄金の明るい色が、ピカピカっときれいに光ったからだと思った。黄金のぶちというのは
やまなしのもようだなとわかった。また、黄金のところに、死を表している文が全くないから。 でも、黄金は死を表しているという
意見が意外に多かった。中でも、山田君の意見で「その時トブン。と何かが落ちてきたときに、かにの子供らは、かわせみだと叫んだから
死を表している」という意見は、なるほどと思った。けれど、その次の文で「あれはやまなしだ。」とあって、黄金のぶちは、かわせみの体の
色ではなく、やまなしの皮のことだったから、死ではないと思った。
 これらのことから、黄金は死ではなく、生を表していると思った。
 やまなしは何を表しているか。私は「幸せ(生)」を表していると思った。 人間は、亡くなったときや、悲しいとき、苦しいとき、
とても辛いときなどに、嬉しさや楽しさや喜びを頭の中でイメージすることがある。実際に私は、辛いとき、悲しいときに浮かんでくる。
やまなしも人間と同じで生きているのだから、同じだと思う。木から落ちたやまなしは、魂が抜けて、ただやまなしの良い香りが水の中に
広がっていったんだなと思った。
 作者(自分自身)、やまなしだったから、冬の寒く冷たい風がやまなしに当たり、風に吹かれて水の中に落ちたので、「自分は
限界だ」と思ったけれど、水の中では生きている、香りが広がっているんだと思っているのかもしれない。
 やまなしは水の中でも匂いが広がっていて、生きているのは一緒なんだと考えたからと思った。作者もやまなしと同じ気持ちなんだと思う。
やまなしが自分の木から離れたからもう仲間と会えないつらさで、作者も辛いことか何かがあったなと考えられた。自分(作者)の
イメージをやまなしに加えているから。
 あと、作者は、やっぱりやまなしを何かにイメージしていると思う。私たちが考えているものより、もっと具体的な例があるはずだ。
 怖いものみたいなミステリーじゃないのだから、怖い文が続いていないので、生を表していると思った。これも、死を表しているという
意見の方が多かった。でも、やっぱり生じゃないかとずっと思っていた。
 スクリーンはどこにあるのかの課題では、水の中だと思った。それは、水の中はこの話の中だからって言う、そのままの理由だ。
 でも、山田君は「心の中」と言った。これを聞いて、私もその意見に賛成になった。作者の心の中。心の底に写されているのだ
と思った。それは、作者(自分)の想像が加わっていて、「私の幻灯はこれで終わりであります。」とあって、物語の中に出てくる
ものは例えになっている。小さな谷川だというのは、小さな小さな薄い幻灯が光っている心だと思ったから。底と言ったのは、暗い
イメージで、心を暗くイメージしていて、作者は悲しい心を写しているのだと思った。
 そして、スクリーンは心の中にしまっている大事な映像、心の中のこと、という意見だ。心の中に、グサッとバラのとげが刺さったんだと
思った。苦しみを写している。心は寂しく小さくなってしまって、クラムボン等の実際にはない言葉を作者が作った。誰にも知られたく
なかったと思った。「私の幻灯」の「の」というのは、同格で、自分自身であるということなのだった。
 やまなしを書いたときの、作者に起こった事件と心の課題。私の考えは、病気のことを知って、2年間の間に作った最後の作品なんだな
と思った。
 悲しい気持ちをどうやって表せばいいのか、すごく悩んだ。だから、死と生で表していたんだなと思った。だから、魚やかわせみでなくても、
死を表せれば何でも良かったけれど、川の底だから魚やかわせみを作者は選んだんだなと思った。
 でも、12月には、やまなしが落ちて、やまなしは種で生きていて、心が共につながっているということで、作者は、もし万が一の時、
亡くなってしまったらという時のために、やまなしを書いたのだと思う。作品で生きていけば良いんだって思ったんじゃないかと思う。
 作者はやまなしの話しで、死と生をイメージさせた。やまなしは自分だから、苦しい中でも、楽しさを見つける工夫をすることに、
喜びを見つける。そうしたら、未来に希望を持つ。それが作者の心がける考え方であった。そして、この勢いをやまなしに
ぶつけている。
 作者は、妹ととても仲良く、いつでも心は一緒だった。自分の心の中で描いているのを唯一理解できたのが妹だった。
 妹が亡くなってしまったけれど、自分は心(やまなし)として出ているから、妹も作品の中で生きていけばいいという妹思いな兄。
でも、なかなかイメージがうまく合わず、誰にもわからないものにしようとして、クラムボンという不思議な、誰にも分からない言葉を作った。
 「やまなし」を勉強し終わった今、作者のことでいっぱいだ。いろいろわからなかったところがわかった。クラムボンていうのは、
妹のことだと今は思う。
 勉強してみて、一人一人の個性は、みんな違ってみんな良いと分かった。いろいろな考えを持って自信をつけ、これからも努力し、
困っている人を助ける優しい人になりたい。
 作者の考え方が、今はすごく分かるようになった。(おわり)

いかがでしたか。大変すばらしい大作です。見事でした。
 他の児童のやまなしの感想文も紹介したいので、一部を抜粋して、以下に紹介します。(順不同・敬称略。)

みなさま

 千明です。
 小林さんの感想文だけでは、しまらないので、
全員の感想文を一部抜粋という形で紹介しました。
 
<学級通信、ここから>

山田:だから、「やまなし」は、木から落ちて自分は死んでも、川の中の
   生物たちに良いことをしたり、「やまなし」の種でまた新しい芽が
   出てきて、新しい生物として生きていく。これがやまなしであること、
   やまなしは死んでも、また新しい命を与えること、これを読者に
   伝えたかったのだと思いました。
木村:12月は妹が死んでしまったが、植物のようにもう一度生き返って
   ほしいという気持ちを書いたものになる。そのことを自分がカニの
   視点で見ると、5月はかわせみなどの殺すものになり、そして
   12月は植物が生き返るような物になると考えています。
高橋:「やまなし」を勉強し終わった今、私は「やまなし」という
   物語には、大変悲しいことや楽しいことがたくさん入っていたと
   言うことがわかりました。これからも、「やまなし」をずっと読んで
   いきたいなと思います。
小林:宮沢賢治は、クラムボンの死、魚の死等を通して、悲しみを読者に
   教えてあげるために書いたんじゃないかなあと思いました。賢治の
   妹がクラムボンなんだと感じました。
星野:和雅君が「かわせみは死んだら生き返らないけど、やまなしは
   死んだら生き返る」って言って、僕はそういえばそうだなと
   思いました。それは、かわせみは死んでも生き返らないのに、
   やまなしは種ができて芽が出て生き返るから、かわせみとやまなしの
   死は違うと思ったからです。
金子:「やまなし」を勉強し終わった今、ぼくは作者は悲しみの中で
   やまなしを書いたんだなあと思います。物語も、深く考えると
   作者の気持ちが分かるんだなあと思いました。
新井:僕は、黒が死を表していると考えます。何故かというと、
   やまなしの中にはたくさんの色がありますが、やまなしの中の
   1ページに、「黒くとがっているもの」と書かれていたので、
   死を表すと思います。とがっている物は、いろいろな物に
   突き刺さるので、死を表していると思います。
鈴木:最初やまなしが落ちてきたときに、まだ落ちてきた物の正体が
   分からなくて、子ども達はかわせみと思っておびえていたけど、
   13ページ5行目「そうじゃない。あれはやまなしだ。」って
   お父さんが言った時は、すごく喜んで、もう恐怖は無くなったから、
   やまなしはかわせみの恐怖をかき消す存在で、対比していると思った。
   (中略)
   やまなしという話は、最初ちょっと読んだだけだと、意味が
   分からないけど、調べていくと、すごくいっぱいの意味を持って
   いることがわかった。やまなしは終わったけど、今度から
   宮沢賢治の本を読んでみたいなと思った。そして、ちょっと
   意味が分からなかったら、調べてみようと思った。本当に本当に
   宮沢賢治はすごいっていうことが分かった。

 「やまなし」を授業することで、子ども達は確かに変化しました。
 言葉の裏側、目の前に見えているものの裏側に隠された主題について、少し考えられるようになりました。
 主題にたどり着くための武器となるのが、「対比」であり「イメージ」であり「象徴」です。これらの使い方を、少し学ぶことができました。
 もちろんまだまだ未熟ですから、主題までたどり着けていないのが、現実です。 
 それは当然のことで、これからこれらの技術の使い方に磨きをかけ、自在に操れるようになれば、自然と主題にたどり着けるようになります。
 その第一歩を確かに踏み出したな、という実感があります。2学期の財産の1つです。
 子ども達は、難しい課題にあきらめることなく、取り組むことができました。すばらしい子ども達です。

<学級通信、ここまで>

 打ち上げの時、校長先生が、「6年生の感想を読んで、自分(校長)よりも読み取りが深いと感じた。
 子どもに教えられた。子どもは、千明先生と出会えて、幸せだったと思うよ」と言っていただきました。
 酒の席ですから、そのまんまは受け取れませんが、でも、嬉しかったです。

 TOSSで学んできて、本当に良かったと思いました。
 もっともっとTOSSから真摯に学び、子どもたちに力をつけてあげたいです。


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