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TOSSランドNo: 5079232 更新:2013年11月28日

文中の数値の意味を読み取って「日本のものづくり」のすごさを実感する


 ある冬休みの問題集の説明文のページに、小関智弘氏の『ものづくりに生きる』の一節が問題文として掲載されていた。
 この本は光村教育図書の教科書でおすすめの百冊としても紹介されている。
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 (前略)わたしたちのような旋盤工がふだん使う測定器は、千分の一ミリとか百分の一ミリを単位にしたもので、じゅうぶん間に合う。髪の毛の太さが百分の七ミリくらいだから、「間一髪セーフ」なんていうのは、ずいぶんラフ な仕事のうちである。
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・・・「千分の一ミリ・百分の一ミリ」といった数値が何気なく出てくる。数値を具体的にイメージすると旋盤工はすごい単位の仕事をしているのだということが分かる。
  問題集に書かれた「ポイント」には「説明されている細かい内容をとらえ、文章の展開を読み取ろう」とある。
 今回のような文章内容の場合は、数値の意味や価値を考えさせないと、どんな驚異的な数値も素通りしてしまう。
 この箇所に出てきた「髪の毛は百分の七ミリ」などは数値をイメージするための1つの基準になるだろう。
 この後、「工場で働いたことなぞない中学生」でも千分の五ミリの段差は判断できるのだと書かれている。それも驚きだ。
 そして、千分の一ミリを測定する機器を作るための測定器=マスターの解説が続く。

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  マスターがなければ、測定機器を作ることはできない。
とすれば、そのマスターはどうやったらできるのだろう。そのマスターが正確だということを判断するためには、さらに精密な測定機器が必要ではないのか・・。そう考えると、地獄の底に落ちてゆくほど、精密という言葉の底は深い。その世界となるともう、素人の指先ではとうてい及ばない。
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 問題文の一部であることも忘れて、「地獄の底に落ちてゆくほど」という比喩の見事さにうなってしまう。
 しかし、氏が「地獄の底~」と比喩した真意は、生徒には実感しにくい。
 ぜひ、別の資料も提示しながら、数値の意味=日本の技術のすばらしさに着目させたいと考えた。

 
 上記の文章を範読して、簡単に内容をつかむ。

 0・5ミリのシャープペンの口先が0・5ミリぴったりだったら芯は通らないよね。
 少しでも穴が大きければ芯はスルスル抜けてしまう。
 そんな細かなサイズでシャープペンの芯が作られ、シャープペンの口先が作られているんだね。

 0.5ミリの仕事について話すだけで感心している。
 たかだか0・5ミリのシャープペンの話でも子どもはうなる。
 千分の1ミリの精度というのは、どんな意味を持つのだろうか。
 小関氏の別の書物を使って数値を隠した資料を用意し範読した。(紙面の都合で一部略)

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   ( )分の一の世界

  工場で「師匠」と呼ばれる木村さんは、マスターのマスターにあたる原器を作る仕事を任されている木村さんは中学を終えるとすぐ、この会社(ミツトヨ)の工場に入った。以来四十数年ほとんどを仕上げの工場で働き通した、

 今は、つくば市にある研究所で「四直角マスター」と言って、四十センチ角くらいの真っ平らで正確な直角のものを作っている。
  一年ほどかかって、ほぼ( )分の二ミリまで正確なマスターができた。 しかし木村さんはそれに満足できないで( )分の一ミリに挑戦している。
  定盤に研磨材を塗って、ゆっくりと、重さ二十キロほどのマスターを滑らせる。キーという軽い金属音がして、一往復半くらいでもうやめた。
  たった、それだけで、その日の作業は終わる。二時間、そのまま待つ。一往復半しただけで、摩擦熱でマスターがふくらんでいる。

  そういう気の遠くなるような作業を 繰り返すことによって、木村さんはなんとか退職するまでには、( )分の一のマスターの原器を完成させたいのだという。
  こういう人が、精密測定器の質を下から支えている。こういう人なくしては、どんなハイテク製品も生まれない、ということをぜひ知ってほしい、とわたしは強く思う。
        (小関智弘著 『ものづくりの時代』13~16頁)
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 ( )の中にはどんな数値が入りますか?

 正解は「1万」である。
 私自身「1万分の一」という精度も、マスターを一往復半しただけで仕事にならないという状況も想像することができない。
 だからこそ「気の遠くなるような作業」という言葉に圧倒されてしまうのだ。
 このプリントの最後の部分「こういう人が、精密測定器の質を下から支えている。こういう人なくしては、どんなハイテク製品も生まれない、ということをぜひ知ってほしい。」と言うメッセージをしっかりつかませたい。
 それは数値のすごさを意識しない限り理解したことにはならないだろう、

 続いて次の資料を提示(一部略)。
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 (  )分の一の世界
 
 精度( )分の一ミリというのは、 直径十センチのレンズを東京ドームの大きさに拡大してもなお、髪の毛一本分の誤差も許されない、という途方もない精度だが、そんな精密なレンズを作ってほしい、ということになった。
 (中略)なにしろ高級カメラのレンズといったって千分の一ミリ程度なのに、 今度は( )分の一ミリという途方もない要求である。
  レンズを研磨する機械は、研磨材を溶かした水で、ひっきりなしにレンズやお皿を冷やしているのだけれど、それでも磨いているうちに熱を帯びる。
 熱を帯びれば、レンズは変形してしまう。「そこで、熱の発生をできるだけおさえる皿ができないかと考えました。それが網目皿です」
  網目模様の入った皿で磨くと、その網目を伝って摩擦熱が逃げ、レンズに狂いが生じなくなった。
  こうして前人未踏の( )分の一という精度の投影レンズの量産化に成功した。
          
       (前掲書19~21頁を一部修正)
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 高級カメラのレンズの誤差が千分の一ミリ程度です。
 では( )の中には、どんな数値が入りますか。

 正解は「10万」が入ります。
 「10万分の一ミリの誤差」は「東京ドームの広さに大きさに拡大してもなお、髪の毛一本分」なんだって。
 すごすぎる数字だね。

 この後、1999年に完成した世界最大の天文台「すばる」の精度について次のような話をした。
  (『メタルカラーの時代5』P467)

○「すばる」以前の反射鏡の精度は10万分の一ミリ(0・01ミクロン)であった、
○「すばる」の反射鏡は有効口径が8・2メートルで、鏡の表面は20万分の一ミリの凹凸なく研磨されている。 
○これは、関東平野全域を直径百キロとするとプラスマイナス0・5ミリの精度で地ならしするのに相当する。

 井関氏は、ものを作らせたらものすごい腕を持っているこのような人々を「現場の神様」と呼んでいます。
 山根一眞氏は、このようなハイテクの最先端の人たちを「メタルカラー」と呼びました。
 学校の図書館にも、本がたくさん入っています。
 事務職者の「ホワイトカラー」・肉体労働者が「ブルーカラー」に対する「鉄の襟」=メタルカラーなのだそうです。 
 次の資料を提示し、範読する(一部略)。

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  こういうメタルカラーの人々との交流を重ねるにしたがって、世界のトップ水準を走ってきた日本の工業、巨大 土木の壮大で精密な技術は、日本の誇 りであり、これを知ることは元気を失いかけている日本人が自信を取り戻すことになると確信するようになった。
 次の時代のためにも、ホワイトカラーでもブルーカラーでもない、メタルカラーの人々に光を当てていきたい。(『メタルカラーの時代3』P454)
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 日本のハイテクの最先端は、このような「現場の神様」が支えているんですね。

 生徒の感想を以下に示す。
◆精密な機械を作るのに、それより精密な機械を作らないといけないことに驚きました。
 そして、その機械をつくる人もすごくてあこがれました。
 私は数字が嫌いなので1万分の1ミリとか10万分の1ミリなどという数字を見るだけで気が遠くなる感じでした。
 数字の世界も奥が深いなと思いました。

◆私の知らないところで10万分の1の精度のものを作っていると知り驚きました。
 東京ドームくらいに大きいんなら1センチくらいずれても別に大した事ではなさそうに感じるのに1ミリでもずれてしまってはいけないと思うと、とても大変だ
 なあ、さすがプロだなあと思いました。
◆僕たちはこういう人たちのおかげで生活できていると思った。見えない小さい部品を作るという目立たない仕事だけど、すごく素晴らしい仕事だと思う。
◆精密という言葉は限りがないと思った。

・力のある文章は範読(黙読)するだけで、生徒の心に響く
・書物の実物があるなら提示するとよい。図書館にある書物ならしっかり宣伝し貸し出しを促す。

【参考文献】
  赤池学 『ローテクの最先端は実はハイテクよりずっとスゴイんです』
      『日本のモノづくりはいつの時代も世界のお手本なんです。』


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