TOSSランド

コンテンツ登録数
(2017/11/20 現在)

21450
TOSS子どもランド TOSSオリジナル教材 TOSS動画ランド TOSSメディア TOSS-SNS TOSS公式(オフィシャル)サイト
TOSS子どもランド
TOSSランドアーカイブ
TOSSランドNo: 5976582 更新:2013年08月23日

算数障がい(ディスカリキュリア)の子どもの認知特性を支援するタブレットアプリを使った授業


1 医教連携で学んだ算数ができない子どもの脳の構造

A 医教連携学習会で大きく変わる教育の世界

発達障がいの専門医、安原昭博ドクター(安原こどもクリニック医院長)とTOSS大阪しあわせサークルがつながり、医教連携の会議が行われるようになった。現在、月に一度の学習会を開催している。毎回、2つの事例を取り上げてドクターにアドバイスをもらう。それまで、どの指導法がよくて、どの指導法がよくないのかが、はっきりとはわからなかったのだが、ドクターの解説により、よくわかってきた。「教えてほめる」という指導法の大切さなど発達障がいの子どもへの対応の基本方針がしっかりとわかってきた。そして、ドクターの話の中で、大きな学びがあるのが、最新の脳科学の知見である。特に算数障がいに関するお話に衝撃を受けた。

B 算数障がい(ディスカルキュリア)と近藤春洋先生

安原先生のYCCこども教育研究所に、算数障がいの専門家の近藤春洋先生(元交野支援学校特別支援教育コーディネーター・元大阪府特別支援教育分野指導教諭)がいる。近藤先生に、算数障がいについての講義をしてもらった。21世紀の最新脳科学によって明らかになった算数の学習に関する知見である。

算数障がいの定義(イギリス教育省バターフィールド教授による)

算数障がいの学習者は、シンプルな数の概念を理解することの困難や直感的に数を捉える力の欠如があり数的事実と処理手順の学習に問題を抱えている。たとえ、正しい答えを出し、正しい方法を使ったとしても、機械的に答え出してしているのであって、確信をもった理解をしていないと思われる。

C 頭頂間溝を刺激する学習で算数ができるようになる

脳は、5つに分けられる。前頭葉、2つの側頭葉、頭頂葉、後頭葉である。このうち算数の学習に最も深く関係するのはどこだろうか。
それは、頭頂葉である。特に、左脳と右脳にそれぞれある頭頂間溝(とうちょうかんこう)だ。ここが、算数の量の表象と空間認知に大きく関わっている。算数・数学的能力が普通にあった大人が、脳梗塞などで、頭頂間溝の細胞が働かなくなると、それまで数を固まりで捉え、物の集まりを見た瞬間に数をとらえられていたのが、一つずつ数えないと数がわからなくなるのだというのである。さらに驚くことには、この頭頂溝間を刺激する学習をしていけば、算数の能力が活性化していくというのだ。そのためには、具体物の操作や、百玉そろばん・九九尺などの半具体物の操作、そして、パソコンソフトやタブレットPCのアプリを使った学習が効果的だということなのだ。このような学習で算数脳が活性化していくとそれまで算数が苦手であった子どもたちが、算数が得意になるという可能性があるというのである。
数の能力が頭頂葉に関わるというのは脳梗塞の病気やベトナム戦争で頭頂葉に損傷を受けたが、奇跡的に助かった症例で、算数的な能力が失われたということからわかってきた。現在は、生きている人間の脳の中を画像として解析する技術が発展してきており、急速に、学習中の脳の活動について解明されてきている。また、ウィリアム症候群という遺伝的に頭頂間溝の細胞の密度が低い子どもの事例の研究もなされてきた。これらの研究により脳の頭頂間溝が算数・数学の学習に大きく関係していることがわかってきたのである。この頭頂間溝は、量の表象と空間認知に関わっていることがわかってきている。
左は、フランスのスタニスラス・ドゥアンヌによる
「5-3の式を見たときの答えにたどり着くまでの脳の中の働きのモデル」である。
まず1番上から。5-3の式を見る。(Visual input)それを右脳と左脳で認識する。(Visual number form)ここからの処理の仕方は、左脳と右脳で分かれる。
右脳では、その情報が頭頂間溝に送られて量感としてとらえられて理解され、処理される(Quantity representation)。左脳では、その情報が2つの処理のされ方をする。1つは、かけ算九九のように、暗記に頼る計算法の場合に使われる処理の仕方だ。脳の頭頂葉の角回(かくかい、側頭葉との接続部分にある)で言語の表象(Verbal representation )として処理される。もう1つは、左脳の頭頂間溝に送られて量感としてとらえられて理解され、処理される。(Quantity representation)このモデル図からわかることは、算数・数学の理解には、2つあるということだ。1つは、言語の表象としての理解(九九の丸暗記や計算ドリルの繰り返しによる習熟)であり、もう一つは、頭頂葉の頭頂間溝での量感をともなった理解である。頭頂間溝を使っているかどうか、つまり、具体物や反具体物の操作、また、百玉そろばんや九九尺などで量感を伴って理解しなければ、算数・数学脳は目覚めないということなのだ。算数・数学脳を刺激するような学習を続ければ、算数が苦手だった子どもも算数・数学ができるようになるというのである。算数・数学の指導に大きな示唆を与える21世紀の脳科学の研究成果である。

2 頭頂間溝を活性化させる学習法

近藤春洋先生のソフト・アプリは体系的で多くの算数の分野にわたって開発されている。全体像は以下である。

1 どのような分野が苦手なのかを見つけるアセスメント
  A.空間認知のアセスメント B.算数のアセスメント
2 空間認知のトレーニングソフト 
3 算数のトレーニングソフト(量感を鍛える)

(近藤先生は、パソコンやタブレットは有効ではあるが、それだけでは不十分で具体物や半具体物の操作も十分にさせる必要があると言われている。)

1 どのような分野が苦手なのかを見つけるアセスメント

A.空間認知のアセスメント ―みるちから―

近藤先生が開発した空間認知のアセスメント用ソフト。全部で5つに分かれている。やってみると、算数が苦手な子どもの多くが、空間認知に大きな課題を抱えていることがわかる。

B.算数のアセスメント ―さんすうクイズ―

算数のアセスメント用ソフト。全部で14に分かれている。やってみると、算数が苦手な子どもの多くが、計算はできるが、問題場面を見て式をたてることができないということがわかる。数や式を扱うことはできるが、量としてとらえることができていないのである。

2 空間認知のトレーニングソフト 

空間認知を鍛えるソフトである。空間認知はWISKⅢの「積み木」、「組み合わせ」に当たる。様々なパターンが用意されている。例えば、左下は、同じになるように□をタッチして色を赤に変えるトレーニングである。また、真ん中と右は、同じ形をマッチングさせるものである(神経衰弱のように)。
このようなトレーニングで全体と部分の関係を見る力などを鍛えることができる。

3 算数のトレーニングソフト(量感を鍛える)

近藤式ソフトの一部を紹介する。このようなソフトが様々な算数の学年、単元にわたってラインナップができている。

【しきを つくろう①】
【かずを かぞえよう②】
以上のアニメーションを見て式をつくる課題である。正解は、8-2である。算数が苦手な子どもは、これができない。6+2、8+2、6-2など様々な式を立ててしまう。計算はできても、式の意味を量感として捉えられていないのだ。
【しきを つくろう②】
 かけ算の式をつくる課題である。向山氏の実践にもあるお皿と具体物による図である。九九尺の思想と同じである。
このような課題を次々と与え、トレーニングをするには、タブレットアプリやパソコンソフトが有効である。画面が動くことが重要である。近藤先生はこれらのソフトを使って、発達障がいの子どもの支援を数年にわたり、行ってきており、成果を出されている。

近藤先生の算数学習ソフトのラインナップから発達障がいとその支援法について、大きな
学びを得ることができる。TOSS版の発達障がい対応学習ソフト、学習アプリを開発して
いかなければならない。
TOSS版の発達障がい対応算数学習アプリの中心となる考え方として、
頭頂間溝を刺激する学習法 ①空間認知トレーニング ②算数―量感トレーニング
を提案する。最新脳科学の知見の算数・数学教育への応用である。

3 参考文献

1「ADHD・LD・アスペルガー症候群かな?と思ったら」安原昭博 明石書店
2「数覚とは何か?―心が数を創り、操る仕組み」 Stanislas Dehaeneスタニスラス・ドアンヌ 早川書房
3「脳からみた学習 -新しい学習科学の誕生」OECD教育研究革新センター著 小泉英明 監修 明石書店
4「だれでも天才になれる脳の仕組みと科学的勉強法」 池谷裕二著 ライオン社
5「進化しすぎた脳―中高生と語る「大脳生理学」の最前線 」ブルーバックス 池谷裕二 講談社
6「向山洋一全集81 向山が切り拓く特別支援教育」向山洋一 明治図書
7「向山洋一全集100 ノーベル賞級?特別支援教育の実践提案」向山洋一 明治図書


0回すごい!ボタンが押されました

コメント

※コメントを書き込むためには、ログインをお願いします。
New TOSSランド