TOSSランド

コンテンツ登録数
(2017/03/27 現在)

21381
TOSS子どもランド TOSSオリジナル教材 TOSS動画ランド TOSSメディア TOSS-SNS TOSS公式(オフィシャル)サイト
TOSS子どもランド
TOSSランドアーカイブ
TOSSランドNo: 1310138 更新:2012年11月01日

重度・重複障害児を喜ばせる歌い方の工夫10


 肢体不自由特別支援学校の重複学級の子ども(重度・重複障害児※)に、歌を歌う。
 しかし、教師がただ歌うだけでは、子どもを喜ばせることができないことがある。
 重度・重複障害児には、歌い方の工夫が必要である。
 次に示す10の工夫で歌えば、重度・重複障害児を喜ばせることができる。

1.  音をたてて息を吸う
2.  目と口を大きく開けて歌う
3.  「メロディー」「リズム」どちらかを強調して歌う
4.  「メロディー」はこの方法で強調する
5.  「リズム」はこの方法で強調する
6.  歌(フレーズ)の終わりで、テンポを徐々に遅くする
7.  歌(フレーズ)の最後の音を伸ばす
8.  歌(フレーズ)の最後の音で、くすぐり遊びをする
9.  歌が終わった後、空白を入れる
10. 歌を突如止め、再び続きを歌う

※ 本論文中の「重度・重複障害児」は、
(1)学校教育法施行令第22条の2に規定する障害のうち、「知的障害」と「肢体不自由」の障害を併せ持ち、
(2)発達年齢が、1歳未満の子ども、
 に限定する。

1.音をたてて息を吸う

 歌う直前には、次のことをするとよい。

音をたてて息を吸う

 歌い始めはもちろん、歌の途中のブレスでも、これをする。
 鼻で吸ったときの方が、「スーッ」と大きな音が出る。
 音をたてて息を吸った後に、歌を歌う。
 なぜ、これがよいか。
 「音をたてて息を吸う」を繰り返すことによって、「息の音の後に、歌が始まる」ことを予測できるようになるからである。
 子どもは次に始まる歌に期待する。
 教師に視線を合わせたり、より笑顔が増したりするようになる。
 「音をたてて息を吸う」と同時に、次のことをするとさらに効果的である。

子どもに視線を合わせ、目と口を開く

 これにより、「耳」だけでなく「目」を使って、今から歌が始まることが予想できるようになる。
 これらの方法は、子どもが元々、教師の歌う歌を好んでいることが、前提である。

【事例1】
 A子(障害名×××、中1、津守・稲毛式乳幼児精神発達診断×××)に「たのしいね」を歌う。
 「たのしいね♪(タタタン)」の手拍子のところで、A子は教師に視線を合わせる。そして、ケラケラ声を出して笑う。
 その後、「空白」があると、A子はさらに笑う。
 しかし、5秒ほど空白が入ると、やがて視線が下がる。笑顔もなくなる。
 次の歌詞を歌う前に、「音をたてて息を吸う」「子どもに視線を合わせて、目と口を開く」をやってみる。
 するとA子は,歌が聞こえる前に、教師に視線を合わせるようになる。
 しばらくこれを続けると、息を吸う音で、A子は笑顔で、視線を合わせるようになる。

【事例2】
 B男(障害名×××、中1、遠城寺式乳幼児分析的発達検査×××)に、「B男さーん♪」と、節をつけながら呼びかける。
 B男はこの歌でくすぐり遊びをされると、笑顔になる。上半身を前後に振り歩きながら喜ぶ。
 視線は合わない。
 歌の後、しばらくすると、B男は笑顔がなくなる。動きもとまる。
 そこで、B男と正面を向き合う。
 「音をたてて息を吸う」「子どもに視線を合わせて、目と口を開く」をする。
 はじめの2回ほどは、歌が聞こえるまで、変化はない。
 3回目くらいから、歌が始まる前に、B男は再び笑顔になる。視線は相変わらず合わない。

2.目と口を大きく開けて歌う

 教師が歌うときは、次のようにするとよい。

目と口を大きく開けて歌う

 なぜこれがよいか。
 目と口を大きく開けて歌うことにより、子どもは教師の顔に注目しやすくなるからである。
 「耳」だけではなく、「目」を使って、教師の歌に気づくことができるようになる。
 あるいは、教師の表情の変化を楽しみながら、歌を楽しむようになる。
 教師に視線を合わせる時間が増える。
 「目と口を大きく開けて歌う」は、本人はやっているつもりでも、実際はそれほど変化がないことがある。
 日頃から鏡を見て、子どもが注目しそうな目・口の表情を作る練習が必要である。

【事例3】
 C男(障害名×××、中1、遠城寺式乳幼児分析的発達検査×××)に、「森のくまさん」を歌う。
 C男は、寝返りができない。首を自分で傾けることもできない。
 ゆっくり移動する物を追視することはできる。
 C男の目前で、「目と口を大きく開けて歌う」をする。
 4月は、この方法で歌っても、教師から視線をはずしていた。
 7月になって、徐々に教師の顔を見るようになった。
 9月のはじめには、教師の歌の間、ずっと視線を合わすようになった。

【事例4】
 D男(障害名×××、中2、津守・稲毛式乳幼児精神発達診断×××)に、「どこかで春が」を歌う。
 床の上で座位姿勢にさせる。D男と正面を向き合って、体に触れながら歌う。
 D男は、前傾姿勢になり顔を伏せる。
 D男の顔を覗き込んでみると、笑顔にはなっている。
 視線を合わさないが、教師の歌を聞いているようである。
 そこで、D男の体を起こして、「目と口を大きく開けて歌う」をする。
 できるだけ、大きく顔の表情をつける。
 するとD男は、起こされた体を自分で定位させるようになった。教師の「口」をじっと見るようになった。
 しかし、自分の好きなフレーズがくると、視線を教師からはずして笑っていた。
 2ヶ月たって、今度は教師と「目」を合わせながら聞くようになった。
 さらに、お気に入りのフレーズを聞くと、教師の「目」を見ながら笑いかけるようになった。

3.「メロディー」「リズム」どちらかを強調して歌う

 教師が歌うときは、さらに次のことにするとよい。

「メロディー」「リズム」どちらかを強調して歌う

 なぜか。
 どちらかを強調して歌うことで、より明確に音楽が子どもに伝わるようになるからである。
 子どもの反応は、より強くなる。

【事例5】
 D男(障害名×××、中2、津守・稲毛式乳幼児精神発達診断×××)に「ドレミの歌」を歌う。
 D男は元々この歌が好きである。
 普通に「ドはドーナツのド レはレモンのレ~」と歌う。
 D男は常時手が動いているが、教師の歌が聞こえると、手の動きが止まる。そして、教師の顔を見る。
 笑顔はない。
 次に、「リズムを強調」して、同じ所を歌う。
 「ドはドーナツのド レはレモンのレ~」のように傍点のところで、アクセントをつけて歌う。
 同時に両手で肩にタッチする。
 D男は、笑顔になる。3つ目の「ド」「レ」を特に強調して歌うと、声を出して笑う。

【事例6】
 同じくD男の「ドレミの歌」。
 「ソはあおいそら~」から一転し、「メロディーを強調して歌う」ようにする。
 「ソはあおいそら~」をクレシエンド(だんだん強く)しながら歌う。
 直前までの「リズムを強調して歌う」と、対比させる。
 D男は、普段出さない「ウー」という声をあげて喜ぶ。 

 なぜ、「メロディー」「リズム」のどちらかを強調して歌えば、より明確に音楽が子どもに伝わるようになるのか。
 子どもの反応がより強くなるのか。
 それは、「音楽の3要素」に関係する。
 「音楽の3要素」とは、①「メロディー」、②「リズム」、③「和声」のことである。

 「音楽に注意が向く」というのは、「上記3つのいずれか、あるいはその組み合わせ、に注意が向く」ということである。  (「音の3要素」は、ここでは考慮しない)
 したがって、これらのどれかを強調して歌えば、より明確に子どもに伝わるのである。
 子どもの大きな反応がより強くなる。
 「和声」を強調させるには、音楽の知識が必要である。(センスがある人は、無意識に強調することができる)
 また、教師の歌だけでなく、伴奏もともに工夫しなければならない。
 したがって、ここでは触れない。

 いずれも伴奏がなくても、教師の歌のみで、強調させることができる。
 しかし「メロディー」「リズム」両方を強調して歌うと、どちらか一方の効果が半減する。
 どちらか一つを強調させる方がよい。

4.「メロディー」はこの方法で強調する

 「メロディー」を強調して歌うには、この方法がよい。

音の進行が上がり傾向であれば、声を徐々に大きくしていく。
音の進行が下がり傾向であれば、声を徐々に小さくしていく。

 自然にメロディーを歌ってみれば、このような歌い方がここちよい。
 意識的に、この方法でメロディーを強調させる。
 より大きな反応として返ってくる。

 この方法は、「音楽表現法」(鈴木慎一著、全音楽譜出版社)から学んだ。

【事例7】
 E男(障害名×××、中2、津守・稲毛式乳幼児精神発達診断×××)に「大きな栗の木の下で」を歌う。
 E男は、普段この歌を聞くと、「アー」と声を出して喜ぶ。
 「あなたとわた(し)」のところで、「声を徐々に大きくしていく」をする。
 さらに次の「なかよくあそびましょう」で、「声を徐々に小さくしていく」をする。
 E男は、さらに大きな声で「アー」と言うようになる。

5.「リズム」はこの方法で強調する

 「リズム」を強調して歌うには、これらの方法がよい。

(1) アクセントをつけて歌う
(2) アクセントに合わせて、体に触れる
(3) アクセントの前に、「間」を入れる

 腕、足から触れていくのが、抵抗がないようである。
 また、「唇」を触れられると喜ぶ子どもも多い。
 しかし、子どもによっては、過敏により触れられることが嫌がる子どもがいる。
 注意が必要である。

 (3)は、「旋律法入門」(熊田為広著、春秋社)の次の文から学んだ。

4 間をとるアクセント
ある印象的な音や強調しようと思う音の直前に、突然「間」をとりその効果をあげる
方法である。(138ページ)

 とくに、各小節の1拍目に入れると効果的である。
 「間」といっても、わずかなものである。長くても0.5秒以内である。

【事例8】
 F男(障害名×××、中2、津守・稲毛式乳幼児精神発達診断×××)に「てとてとてと」を歌う。
 F男は、普段からこの歌を聞くと、「アー」と声を出して喜ぶ。
 「はーるだ はーるだ はーるだ」の傍点のところで、「アクセントをつけて歌う」「アクセントに合わせて体(腕)に触れる」をする。
 さらに、3つ目の「は」で、「アクセントの前に、『間』を入れる」をする。
 F男は、さらに大きな声で「アー」と言う。興奮し、両足を交互に動かすようになる。

6.歌(フレーズ)の終わりで、テンポを徐々に遅くする

 歌の終わりに近づいたら、次の方法で歌うとよい。

テンポを徐々に遅くして歌う

 なぜこれがよいか。
 歌の終わりにテンポを徐々に遅くしていくと、緊張が生まれる。
 そして、歌の終わりを予測しやすくなる。
 教師の歌に、より集中するようになる。
 聞き慣れている歌であれば、次の方法もよい。

各フレーズの終わりでも、テンポを徐々に遅くして歌う

【事例9】
 G男(障害名×××、中3、遠城寺式乳幼児分析的発達検査×××)に「チューリップ」を歌う。
 G男は、普段この歌を聞くと、膝立ち姿勢のまま上体を上下に揺らし続ける。笑顔になることも多い。視線は下に伏せがちである。
 「チューリップ」の歌が終わっても、上体を揺らし続ける。
 しばらくすると、歌の終わりに気づいたのか、動きが止まる。
 歌の最後「どのはな みても きれいだな」のところで、「テンポを徐々に遅くして歌う」をする。
 するとG男は、突然、上体の動きが止まるようになった。
 繰り返してこの方法で歌い続ける。
 G男は、歌の最後のところで、上体の動きが止まるだけでなく、教師に視線を合わせるようになった。

7.歌(フレーズ)の最後の音を伸ばす

 「6.歌の終わりで、テンポを徐々に遅くする」と合わせて、歌の最後で次のことをするとより効果的である。

歌(フレーズ)の最後の音を伸ばす

 なぜこれがよいか。
 歌の終わりが強調されるからである。
 歌の終わりの音で、子どもたちは「快」を感じることが多い。
 強調されると、さらに「快」の気持ちが大きくなる。
 さらに、次の方法もよい。

各フレーズの終わりの音も、伸ばして歌う

【事例10】
 G男に「チューリップ」を歌う。
 「どのはな みても きれいだな」の最後の「な」で、「歌の最後の音を伸ばす」をする。
 歌の最後で視線を合わせて聞くようになったG男は、この「な」を聞くと、さらなる笑顔で、視線を返すようになった。

8.歌(フレーズ)の最後の音で、くすぐり遊びをする

 6「歌(フレーズ)の終わりで、テンポを徐々に遅くする」、7「歌(フレーズ)の最後の音を伸ばす」とあわせて、さらに、次のことをすると、いっそう効果がある。

歌(フレーズ)の最後の音で、くすぐり遊びをする

 子どもは、歌の最後で「くすぐり遊び」があることを期待するようになる。
 期待するようになると、歌の終わりごろから、反応が変わる。
 歌の最後の音でくすぐり遊びをすることは、多くの子どもに喜ばれる。
 初めて出会う子どもにもこれをすると、子どもとかかわるきっかけができる。
 しかし、触覚が過敏な子どもにはしない方がよい。

【事例11】
 G男に「チューリップ」を歌う。
 「どの花見ても きれいだな」の最後の「な」で、くすぐり遊びをする。
 腰のあたりをくすぐる。
 G男は、「キャッキャッ」と言って、興奮する。
 繰り返し行うと、「どのはな みても」の歌詞を歌うころから、教師の目を見て伺い、体を構えるようになった。
 くすぐり遊びをした後、教師の手をつかみ、催促するようになった。

【事例12】
 G男が「チューリップ」を聞くのに慣れてきたので、
 6「歌(フレーズ)の終わりで、テンポを徐々に遅くする」
 7「歌(フレーズ)の最後の音を伸ばす」
 8「歌(フレーズ)の最後の音で、くすぐり遊びをする」
 を、「各フレーズ」した。
 「各フレーズ」は、以下の2つである。
 ①「さいたさいた チューリップのはなが」
 ②「ならんだならんだ あかしろきいろ」

 「チューリップの~」「あかしろ~」からテンポを徐々に遅くする。
 傍点部分の音を伸ばす。
 そして、くすぐり遊びをする。
 フレーズごとでも、テンポが遅くなると、じっと教師の顔を見るようになった。
 くすぐり遊びをすると、「キャッキャッ」と言って喜ぶようになった。

9.歌が終わった後、空白を入れる

 最後は、次のことをするとよい。

歌が終わった後、空白を入れる

 なぜこれがよいか。
 「歌が終わったこと」がより明確に感じ取れるようになるからである。
 歌が終わったことが明確になると、余韻を楽しんだり、教師に次の歌を催促したりするようになる。
 空白は、3秒~5秒程度でよい。

【事例13】
 D男に「大きな栗の木の下で」を歌う。
 歌の最後の歌詞「おおきなくりの きのしたで」のところで、「6 歌の終わりで、テンポを徐々に遅くする」「7 歌の最後 の音を伸ばす」をする。
 その後、「歌が終わった後、空白を入れる」をする。
 D男は、笑顔で教師に視線を合わせ、最後の音で、声をあげる。
 歌が終わった後も、笑顔のまま視線を合わせ続ける。
 しばらくして、教師の口を触って、歌を催促する。

10.歌を突如止め、再び続きを歌う

 教師が歌うとき、これをすると喜ぶ子どもがいる。

歌を突如止め、再び続きを歌う

 なぜか。
 予想が裏切られて、無音になるのが、楽しいからである。
 メロディーを聞かせる歌より、リズム感のある歌の方が、途中でとめられると楽しいようである。

【事例14】
 H子(障害名×××、中2、遠城寺式乳幼児分析的発達検査×××)に「さんぽ」を歌う。
 H子は、歌を歌っても、あまり大きな反応を示さない。
 アクセントをつけて歌い、さらに歌の終わりを強調すると、表情が変化する程度である。
 「さんぽ」の最初の部分「あるこう あるこう わたしはげんき」で、止める。
 すると突然、H子は「ハハハハ」と笑い出した。
 一度笑った後は、継続させても、もう笑わない。
 しばらくして、再びさんぽを歌う。
 同じように、途中でとめると、再び笑い出す。


2回すごい!ボタンが押されました

コメント

※コメントを書き込むためには、ログインをお願いします。
New TOSSランド