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TOSSランドNo: 1216053 更新:2013年08月16日

4「体育授業の法則」とは?


1.飛び入り授業の成果

 岐阜大学の石川忠志氏は、「現代教育の原理」(東大出版会)の中で、次のように述べている。

授業研究の歩みのなかで、教材や教師の指導技術というものをどの地域のどの学校のどの教師でも有効に利用できるように客体化し、共有化することに力点を置く立場がある。(第Ⅲ部 教育の内容、方法及び技術 第二節 多様な教育方法の展開 P226)

 その例として、理科の「極地方式」と「仮説実験授業」を取り上げ説明している。
 TOSS体育授業研究会では、理科だけでなく体育の授業においても、「教材や教師の指導技術というものをどの地域のどの学校のどの教師でも有効に利用できる」と考え、実践を重ねてきている。
 私は、これまでに4回の飛び入り授業を行っている。

  第1回 兵庫県滝野町立滝野東小学校5年生(1989年11月23日)
  第2回 秋田県鳥海町立直根小学校4年生(1990年7月8日)
  第3回 北海道函館市立柏小学校4年生(1990年9月9日)
  第4回 岩手大学教育学部付属小学校4年生(1990年10月20日)

 以上の4回の授業は、すべて閉脚跳びである。授業の展開、流れはほとんど同じである。
 体育授業の法則化が出来ると確信したのは、1989年11月、兵庫県で行った第1回の飛び入り授業である。
 5年生で閉脚跳びの授業を行った。この授業をするに当って、担任の久野勝久氏には次の三点をお願いした。

 1.場作りを5分以内で出来るようにしておいて欲しい。
 2.逆さ感覚、腕支持感覚を育てる動き作りを準備運動の中で育てておいて欲しい。
 3.うさぎ跳びで、10メートルを6~7回で跳べるようにしておいて欲しい。

 この三つが出来ていれば、一時間の授業で跳べない子供の90%を跳ばせることができるという自信があった。
 なぜなら、体育授業の法則化の見通しがあったからである。どんな指導技術があれば法則化ができるのかについては、後ほど詳しく述べる。
 久野学級での授業の結果は、跳べない子供8名中7名が出来るようになった。達成率87.5%である。
 ただ、出来るようになったのではない。子供が楽しみながら学習できたのである。子供は、寒さを吹き飛ばし汗を流しながら運動していた。

 第2回は、秋田県鳥海町立直根小学校の4年生である。
 担任の高橋勲氏には、兵庫の久野勝久氏にお願いしたのと同じ内容を事前に頼んでおいた。
 結果は、跳べない子供8名中6名が出来るようになった。達成率75%である。兵庫と同じように、楽しく、生き生きとした授業になった。

 第3回は、北海道函館市立柏野小学校の4年生で行った。跳べない子供が17名いたが、12名が跳べるようになった。達成率70.5%である。
 担任の白幡俊一氏にも久野氏、高橋氏にお願いしたときの内容を依頼しておいた。
 授業の流れ、子供の反応は兵庫、秋田の子供とほぼ同じであった。
 以上の結果から、どの地域の子供でも指導技術があれば、楽しく、しかも跳べない子供が跳べるようになることが分かった。
 つまり、体育授業の法則化が出来るのではないかと確信を持った。

2.法則化の条件

 体育授業の法則化の条件とは何か。
 私は、それらを向山洋一氏、野口芳宏氏、有田和正氏、林恒明氏などのすぐれた授業から学んだ。
 四人の授業者に共通していたのは、次の指導技術である。

 1.授業を成立させる片〃の指導技術
 2.出来るようにさせる指導技術
 3.授業を組み立てる指導技術
 4.子供の反応に応じる対応の指導技術

 授業を成立させる片〃の指導技術というのは、体育の授業でいうと次のようなものがある。

 1.整列の仕方
 2.集合の仕方
 3.器具・用具の出し入れの仕方
 4.師範の仕方
 5.発問・指示・説明の仕方
 6.準備運動の仕方

 体育の授業だから運動ができればいいだろう、楽しくできればいいだろうと言う人がいる。
 それは、間違いである。決められた時間の中で、効率よく指導していかなかったら、できる喜びも伸びる楽しさも味わわせることができない。
 器具・用具の準備に20分かかったとしよう。授業の半分が使われ、主運動が十分にできなくなってしまう。
 集合に時間がかかり、しかも教師の話し方が悪かったとする。教師にすぐれた指導技術があっても、子供には伝わっていかない。
 筑波大学の高橋健夫氏は、授業のマネージメントと呼んでいる。授業を成立させる指導技術がなければ、飛び入りの授業は不可能である。
 秋田の直根小学校の子供と授業をした時である。準備運動で、リズム太鼓に合わせて走り始めた。ところが、走っている時に真ん中に集まってきてしまった。
 その後に、足打ち跳び、かえる倒立を予定していたので集まっては困るのである。子供の動きを止め、次の指示をした。

指示1:

太鼓がなり終わった時に両手を広げて、隣の人と1メ-トル以上離れていたら合格です。

 この指示で、子供たちの動きは変わっていった。こような方法を身につけていなければ、授業の成立は難しい。

 2番目に、出来るようにさせる指導技術があることである。
 閉脚跳びであれば、跳べない子供を跳ばせる指導技術である。授業の法則化では、これが一番必要とされる。
 初めてのクラスにいって、跳べない子供の90%をできるようにさせるには、跳ばせる技術を持っていなければ指導できない。
 閉脚跳びで私が行った方法は、次の二つである。

 1.うさぎ跳びをできるようにさせる。
 2.かかえ込みの体感をさせるために、補助をして跳ばせる。

 うさぎ跳びについては、事前に担任の先生にお願いしておいた。10メートルを6~7回で跳べる基礎能力が身についているかを授業の中で診断していった。
 うさぎ跳びは、逆さ感覚、腕支持感覚を身につけるのに最も適した運動である。うさぎ跳びができていれば、閉脚跳びは容易にできる。
 うさぎ跳びができていて跳べない子供には、補助をしていく。補助で、跳べない子供の80%はできるようになる。
 それでも跳べない子供が残る。跳び越すことに恐怖心を持っている子である。

 写真のように跳び箱の先に安全マットを置いて、次の指示をした。

指示2:

マットに手を着いて、うさぎ跳びをしなさい。

 マットに着手するために、有効着手角度が大きくなり、跳び越せるのである。
 この方法によって、跳びこせなかった子供が次々に跳べるようになったのである。
 跳ばせる指導技術を身につけていることが、体育授業の法則化では必要なのである。

 3番目には、授業を組み立てる指導技術である。
 TOSS体育は、追試のできる授業づくりを目指している。そのために、発問・指示を明示するようにしている。
 閉脚跳びの授業では、次のように行った。岩手大学教育学部付属小学校で行った時の指導案である。
 授業の組立てが明確になっているために、どこに行っても同じ授業ができるのである。

 4番目は、子供の反応に応じる対応の指導技術である。
 これが一番難しい。なぜなら、子供がどんな反応をするか事前に考え、それに対応できる指導技術がないとできないからである。
 秋田県の直根小学校の子供と授業をしたときである。マットの準備で、子供たちはマットを引きずって運んでいた。
 すぐに止めさせ、もう一度やり直しをさせた。すぐにできるようにさせる方法がなければ、対応することができない。
 そのためには、どんな反応が出てくるか予想し、対応できるようにしておく技術が大切なのである。

3.今後の課題

 岩手大学教育学部付属小学校の4年生で行った授業では、十分に跳ばせることができなかった。
 跳べない子供が13名いて、跳べるようになった子供が5名であった。達成率38.4%である。
 4つの指導技術を駆使して行ったが前回までのようにはいかなかった。勿論、授業の全体の流れ、組立てについては同じようにいった。助言者の筑波大学の高橋健夫氏も、マネージメントについては評価してくださった。
 あとは、閉脚跳びができるようになるための基礎能力の問題である。一つの技ができるためには、どんな動きがどの程度できていれば良いのか、それを解明していくことがき体育授業の法則化につながっていく。多くの追試を通して明らかにしていきたい。
 そして、「どの地域のどの学校のどの教師でも有効に利用できる」指導技術を開発し、体育授業の法則化を目指していきたい。


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