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TOSSランドNo: 1216090 更新:2013年08月16日

林恒明氏に見る弾力的な「授業の流し方」


1.林恒明氏の授業の組立て

 1989年2月16日、筑波大学附属小学校の林恒明氏の授業を参観した。
 1年生の授業で教材は、「短なわとび」と「鉄棒・固定施設遊び・補助逆上がり・ダンゴ虫リレ-」であった。
 林恒明氏の授業は弾力的な流れであり、子供の興味・関心・意欲を大事にして組み立てられていた。
 最初に指導案から、本時の指導を紹介する。

5.本時の指導

 ① 目標
  ・短なわ種目とびの練習と,スピ-ドとびがめあてを持ってできるようになる。
  ・鉄棒や固定施設で,いろいろな動きがたくさんできるようになる。
  ・補助逆上がりの兄弟運動ができるようになる。
  ・2人組での練習を通して,仲間と教えあって運動することができる。

 ② 準備
   ・踏み棒逆上がり,(タイヤ・とび箱),タイコ,体育ノ-ト,学習カード

 ③ 展開の概要(指導上の留意点は略)

学 習 活 動
 ① 4列横隊に整列し,挨拶をする。本時の教材,ねらいを確認する。
 ② 短なわ種目とび
   ・いろいろな種目に,めあてを持って練習させる。(1分とび)
   ・30秒,スピ-ドとびをする。
 ③ 鉄棒固定施設のコ-スまわりをする。
   ・フトンほし,あしぬきまわり
   ・ジャングルジム逆上がり
   ・登り棒まわり
 ④ 鉄棒,ダンゴ虫リレ-をする。
 ⑤ 踏み棒逆上がりに挑戦する。

 ① 示範する。
 ② 観察する。
 ③ 発問:「この運動とにている運動はないかな?」
 ⑥ 踏み棒逆上がりをする。
 ⑦ まとめをする。

 林氏は授業の山場を③鉄棒固定施設のコ-スまわりをするにおいていた。授業後の反省の中で次のように述べている。
 「感覚づくりの運動で、今日は単元を構成してみました。それで、今日のズレは、授業の山場というものがあるとすると、私は③のところに授業の山場を持って行きたかったのですが、ズレてしまいました」
 林氏の授業の組立てでは③鉄棒・固定施設のコ-スまわりで盛り上がるようになっていた。
 ところが実際の授業で一番盛り上がったのは次の④鉄棒,ダンゴ虫リレ-をする場面であった。
 本時のねらいは、「鉄棒や固定施設で,いろいろな動きがたくさんできるようになる」ことと「補助逆上がりの兄弟運動ができるようになる」ことであった。
 つまり、鉄棒固定施設のコ-スまわりでいろいろな逆上がりを練習させたかったのである。
 逆上がりに必要な基礎感覚を、遊びを通して身につけさせる場面が中心だったのである。

2.山場の変更

 実際の授業は次のようであった。

 運動場には、鉄棒、かべ倒立、はんとう棒、ジャングルジムが用意してある。
 鉄棒ではふとんほし10秒、投的板ではかべ倒立10秒、はんとう棒では前後にはんとう棒回り、ジャングルジムでは逆上がりを行う。
 子供は自由に行い、4つの場を使って運動する。教師は腰をおろしてじっと子供の動きを見ている。
 子供は、自分の目標に向かって黙々と練習する。どの子供の動きもよい。どの種目もよくできる。
 他の子供との関わりが少ない。助け合いや応援する場面は見られない。次々に場を交換していく。

 ここの場面は盛り上がらなかった。決められた動きをただ繰り返すだけだったからである。
 子供同士の関わり合いや新しい発見がなかった。林氏もじっと見ているだけであった。
 林氏は子供の動きを見て、無理に山場にすることをあきらめた。指導案の組立てを弾力的に扱い、山場を次の活動に持っていった。
 次のダンゴ虫リレ-は子供の意欲をかきたて盛り上がった。

林  今度はこれだよ。四人で力を合わせて、頑張りダンゴ虫リレ-。
 さあ、作戦タイム。ただいまよりダンゴ虫リレ-大会を始めます。
 (各チームとも作戦をたてる)
 (決まった!決まった!と叫ぶ)
 (約48秒後)

林  ダンゴ虫が10できたら、ひまわりのシールをはって花を咲かせましょう。一人でもできない人がいたら、虫食いになってしまう。用意はいいかな?

C  は-い。(元気よく)

林  アンカーの人、帽子いいですか?

C  は-い。

林  応援いいですか?

C  は-い。

林  用意トン。
 (リズム太鼓で合図をする)
 (太鼓でリズムを取る)
 (そのリズムに合わせて、子供が「いち、にい、さん、し、ご」と大きい声で数えていく)

林  ○○チーム、リードです。
 ○○君がんばって。(応援の子供は数を数えたり、手拍子を打ったりして盛り上げる)(ダンゴ虫をする子供と一体になる。中には立ち上がって、手を振って応援する子もいる。最後に残った一人を全員で応援する)

林  本日の一位の記録を発表します。その前に一位立って、二位立って三位立って。一位の記録は三分三十三秒でした。三回、二回、一回のばんざいどうぞ。

C  ばんざ-い!

C  ばんざ-い!ばんざ-い!

C  ばんざ-い!ばんざ-い!ばんざ-い!

 子供の集中度、盛り上がりは最高であった。指導案にこだわらずに、子供の動きに対応した指導がなされていた。

3.弾力的な指導の秘密

 なぜ、このような対応ができたのか。弾力的な指導ができたのか。
 授業後林氏は次のように述べている。

 子供たちの意欲や興味・関心が大事なのです。

 ③鉄棒固定施設のコ-スまわりが盛り上がらないと判断すると、子供の興味・関心のあるダンゴ虫リレ-を山場にしたのである。
 教師の一方的なねらいを押しつけていく授業では、授業は盛りあがらない。学力も着しない。
 林氏の授業がすぐれているのは、子供の実態を見抜き、それに対応した弾力的な指導ができたことである。
 林氏は授業後の反省で授業観について語っている。
 「やっぱり、いつもやらせるんじゃなくて、子供がやりたい、どんどん進んで能動的に活動する姿勢が大切です」
 こういう授業観があるからこそ、弾力的な指導ができるのである。子供の意欲・関心・興味を大切にする組立てができるのである。
 ダンゴ虫リレ-はチームの競争である。全員が一体となって応援し、ダンゴ虫リレ-を行っていた。
 子供の欲求と教師のねらいが一致したのである。授業が盛り上がった理由として、佐藤真健氏は次のように分析している。

 ① どんな小さなことでもほめてその子だけでなく、周りの子にやる気を高めていた。また、「がんばれ!がんばれ!」という励ましは、子供といっしょになって行っていた。励まされる子にとって、同じクラスメートからの励ましが何よりも力強いはずである。
 ② ダンゴ虫リレ-の時、ある女の子がとてもよく頑張っていた。それを林氏が見つけ、「ホレッ、いいぞ!がんばれ○○!」と励ました。この女の子の頑張りを認めてあげたのだ。

 その結果はどうなったか。まわりの子から「○○がんばれ○○がんばれ」の大声援が始まった。林氏の認める言葉により、周りの子供もその女の子のがんばりを認めたわけである。
 個を認めることにより、全体にその効果が波及していくのである。すばらしい対応である。
 そういう自立を支援する弾力的な指導が大切なのである。


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