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TOSSランドNo: 1116044 更新:2013年08月15日

正岡子規の短歌と俳句の授業で討論を仕組む


私は教材の内容を頭に入れたら,発問を意識して毎日の生活を過ごすことにしている。
 すると,通勤中の車の中やぼーとしている隙間時間に発問が浮かぶことがある。四〇才を越えたのでメモしないと忘れてしまうので,車を止めてメモをすることもある。
 そういうようにして正岡子規の短歌と俳句の発問も作り出した。

くれなゐの二尺のびたるばらの芽の
        針やはらかに春雨の降る

正岡子規のこの短歌を次のように授業にかけた。
 まず,この短歌を読んで,「気づいたこと・わかったこと・思ったこと・考えたこと」をノートに箇条書きさせた。
 これは全員が書けた。そして全員発表の後,「話者の目に映ったものは何ですか」と尋ねた。
 「ばらの葉」「春雨」「くれないの二尺のばら」「赤いばら」「茎についているとげ」が出た。
 ここまでは子どもたちの内部情報を蓄積するための作業である。この後,私は次の発問を投げかけた。

発問1:

ばらの花は咲いているのですか? それとも咲いていないのですか?

 嫌でも二つに分かれる発問である。しかもすぐ決着がつく発問ではない。だから,子どもたちは真剣に考えるだろうと私は考えた。  
 「くれなゐの二尺のびたるばらの芽の針」だけでは,ばらの花が咲いているのかどうかはわからない。しかし,「くれなゐ」という言葉がある。咲いているようにも思える。この曖昧さを子どもたちに考えさせてイメージを深めようと考えた。
      ア 咲いている     11人   

      イ 咲いていない    28人   

      ウ わからない      1人   

予想したようにわかれた。私も「咲いていない」が多いと思っていた。  
 思ったよりたくさんの意見が出た。主な意見を紹介する。
咲いているの意見
  ・紅の色は鮮やかな赤色。バラの芽は赤色ではない。
  ・バラの花が咲いてうれしいからこの歌を読んだと思う。
  ・花が咲いて,花の色が一番はじめに目に入ってきたから,「くれなゐ」と初めに持ってきた。
咲いていない意見 
  ・ばらの芽と書いている。ばらの花とは書いていない。
  ・針が柔らかいのだから,まだ花は咲いていない。
  ・花が咲いていたら,「ばらの花」と書くはず。
反対意見
  ・バラの花が咲いていて,芽は新しくできた芽だと思う。
  ・花が咲いていなかったら,紅の色は何の色なのか。
  ・花が咲いているばらもあれば,咲いていないばらもあるのでは。
 子どもたちの意見を聞いていて,私が一番勉強になった。教材研究の段階ではっきりしなかったことが,子どもたちの意見を聞いていてはっきりとしてきた。
 私は,「バラの花はたくさん咲いている。だから紅色なのだ。でも話者には,鮮やかなバラの花より,まだ咲いていないバラの芽の方が気になるのだ。」という考えを持つようになった。

発問2:

話者はどこからばらを見ているのですか。

      ア 家の中から    1人   

      イ 縁側から(家の中と外の間)  28人   

      ウ 家の外  10人
 ウの子たちの理由は,「バラの芽が見えているのだから近くでないと見えないから外」「外だから春雨がやさしく降っているのがわかる」「針は芽の先だから外でないとわからない」という意見であった。
 これに対して,イの子たちは,「外は雨にぬれるから,縁側なら見える」「話者は病気だと思うから,外へは出られないから縁側で見ている」が出た。
 多くの子がイに変わった。アの子もイに変わった。
 ここは結論を出さなかった。次の俳句でわかるからだ。

 いくたびも雪の深さをたづねけり

 初めは,やはり「わかったこと・気づいたこと・思ったこと・考えたこと」の発表から入った。
 その後,やはり二つに分かれる発問を出した。

発問3:

雪は今降っているのですか? 降っていないのですか?

      ア 降っている      2人    

      イ 降っていない    23人     

      ? 5人
 イの多くの子が,「雪が降っていたら深さが測れない」という意見に対して,僅か二人のイの子は,「雪が降っているから,雪の深さを尋ねている。やんでいたら深さがわかるから,何度も尋ねない」という意見を出した。
 この意見で,多くの子がイに変わった。

発問4:

雪はたくさん降っているのですか? それとも少ないのですか?

     ア たくさん    26人      

      イ 少ない     14人
 この発問は,「たくさん」が優勢であった。

発問5:

 「いくたびも」と「いくたびか」の違いは何ですか?

 子どもたちは国語辞典で調べていた。
 「いくたび」は載っているが,「も」や「か」は載っていない。
 そこで子どもたちは自分で考えていた。「いくたびも」は,「回数が多い」,「いくたびか」は,「迷っている・はっきりしない・少ない」という意味が出された。

発問6:

話者には雪が降っているのが見えているのですか? 見えていないのですか?

 この発問はすごい話し合いになった。
     ア 見えている    13人    

     イ 見えていない   23人
アの意見
  ・雪がたくさん降っているから見えている。
  ・雪が降っているのが見えるから,「たづねけり」と尋ねた。
  ・雪が降っていないと,雪が積もっているのもわからないから,雪の深さを聞かないと思う。
  ・話者は見たことをそのまま俳句にしたと思うから,雪は降っている。
イの意見
  ・雪が降っているのが見えていないから深さを尋ねている。見えたら尋ねない。
 この意見に対して,「雪が降っているのが見えているから,雪の深さを尋ねている」という正反対の意見が出た。 この二つの意見に絞って話し合いを再開した。すると次のようなすごい意見が出てきた。
  ・雪が降っているのが見えていても,雪の深さはわからないから聞いているのだ。
  ・病気だったら雪が降っているのが見えていても,雪の深さはわからない。だから人に尋ねている。
  ・病気だったら動けないから,雪が降っていても雪の深さまでわからない。だから人に尋ねている。
 これに対して,
  ・話者には雪が降っているのが見えていなくて,頭で庭の雪景色を思い浮かべている。だから深さが気になって人に 尋ねていると思う。
 このように,ある場面を限定して,その状況を子どもたちに問うことによって,いろんなイメージを子どもたちは思い浮かべたようだ。それが自分の意見になり,ついにはこの俳句の本質まで近づくことができた。
 私のように力量の低い教師が作る発問でも,かなりの成果が得られることを紹介した。
 発問作りは難しい。特に若い先生は,何時間かかっても作ることができないこともあるだろう。 
 そういう時には,次の発問の原則を使ってほしい。

原則 「Aか。それともBか」というような場面を具体的にイメージできるような発問を作る練習をすること。

私は新任二年目から,この原則で発問を作ってきた。勿論失敗したことの方が多い。
 しかし,思いがけない発問が討論を生む。経験を重ねると,失敗する発問と成功する発問を見分けることができるようになる。これは経験則である。
 原則を知り,原則を使い,実践してみることが一番の近道だ。
 原則は向山洋一氏に学べばよい。私もまだまだ学び続けるつもりだ。


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