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TOSSランドNo: 2310222 更新:2013年01月25日

集団で学ぶよさと陥りやすい問題点


1.集団で学ぶよさ

 個別化教育が叫ばれている。個性ある人間にするためには、個別化ばかりでなく集団で学ぶ教育も大事である。
 20年近く子供を指導してきて感じることは、個と集団とのかかわりあいを意図的に作っていかないと、教育的効果は上がらないということである。
 集団で学ぶよさを認識し、教育の中に適切に生かしていくことが大切である。集団の中で仲間とのかかわりを作りながら、自己の力を伸ばしていく。そのなかで、個性も磨かれていく。
 集団で学ぶ良さを私の体験から分類すると、次の4つになる。目的に応じて、最も効果の上がる方法を選択してきた。

 1.共同化する 協力して一つの物を作り上げる
 2.共有化する 情報を共有して、分かち合う
 3.集団思考化する 思考を練り上げて、より良い考えをつくりだす
 4.競争化する 競争を通して、力を高め合う

2.共同化する

 第一は、共同化である。集団で協力して、一つの物を作り上げていく時である。
 共同化は一人で行うよりも時間的にも早く出来、仕事量も多くなり効率が上がる。
 千葉市立更科小学校に勤務していた時である。富田分校で秋祭りが行われた。内容は、みこしの練り歩き、踊り、ゲーム、劇、おいも会食である。
 秋祭りでおみこしを作ることになった。一人で作るのは大変である。集団で知恵と力を合わせていったほうが、よいおみこしができる。
 富田分校には、1年生から4年生まで36名がいた。三つのグループになり、それぞれのグループごとにおみこしを作ることになった。
 ほし組はUFO型、とり組は鳥型、しろ組は城型のおみこしを作ることになった。
 4年生が中心になり、どんなおみこしにするのか設計図を書くところから始めた。最初は個人でそれぞれ書き、そのあと全員が持ちより、どれにするかを検討した。
 それぞれの良いところを取り入れ、設計図が出来上がった。4年生のリーダーを中心に、誰がどの部分を作るかの相談をし、仕事の分担がなされた。
 役割の決まった子供は、自分の分担を一生懸命に作り上げた。色を塗り、形を整えて完成した。
 出来上がったおみこしを見て、どの子も満足そうであった。全員の力で一つの作品が完成したからである。
 一つのものを全員の力で作り上げていく時に、集団の力は発揮される。ここで大切な指導は、役割分担を明確にすることである。
 他とのかかわりをどう作っていくかが大事である。自分の役割を果たすことが、よいおみこし作りにつながっていくようにする。

3.共有化する

 第二は、共有化である。情報を集める場合には、個人よりも集団のほうが早く、多くの情報が集まる。
 その中から優れた情報を選択し、身につけるには個人より集団のほうが適している。
 千葉市立稲毛小学校の1年生が生活科の授業で「あそびはかせになろう」という学習を行った。
 この授業の構成は次のようである。

1  地域の人に昔の遊びを教わる 2時間
2  自分の得意な遊びをつくる 2時間
3  自分の得意な遊びを友達に教える 2時間

 最初は、自分が遊んでみたい遊びを地域の人に教えてもらう。地域の人に呼びかけて、子供に遊びを教えてもらうように働きかけた。
 当日は20人近くの方が学校に来て、1年生に昔の遊びを教えてくれた。体育館と運動場に遊びのコーナーを作り子供は好きな場所にいって教わってよいことにした。
 体育館では、お手玉、紙鉄砲、おはじき、千代紙、紙風船があった。運動場には、まりつき、くぎさし、こままわし、いしけりなどが行われた。
 子供は自分の好きなところにいっていいのであるから、喜んで移動した。そこで、地域の人から教わって自分の得意なものをつくるのである。
 「あそびはかせになろう」の単元が優れていたのは、自分の得意な遊びをつくって終わりではなく、集団遊びに発展させていることである。
 自分の得意な遊びができた後、それを友達に教えるのである。紙鉄砲の得意になったK君は、紙鉄砲を教えて欲しいという友達に作り方を教えていた。
 「紙はあまり大きくないほうがいい音がするんだ。」
 自分の教わったことを教えていた。友達に遊びを教えることを通して、仲間とのかかわりあいが出来るのである。
 紙鉄砲を教えたK君は、友達からこままわし、おはじきを教えてもらい遊んでいた。
 集団で学ぶ中で、「遊び」の文化が伝達され、共有化されたのである。これは一人で学んでいたのでは共有化されにくい。
 自分の得意な遊びを友達に教えるという集団のかかわりあいを設けることによって、共有化がされていく。

4.集団思考化する

 第三には、集団思考化である。学習をしたり、みんなで討議し一つのことを決定する時には、集団で考えを出し合い、練り上げていった方がよい考えができる。
 多くの考えを出し、対立した意見を述べ合う中で考えが深まる。個別学習では出来ないものである。
 千葉市立更科小学校で、1年生の算数の授業を参観したことがある。ベテランのT先生の「たしざん」の授業であった。
 集団思考の見事になされた授業であり、展開は次のようである。

学 習 活 動 ・ 内 容
1.暗唱練習

 ○ 頭の運動をしましょう。(くり上がり下がりのたしざん、ひきざん)

2.たしざんになる問題づくりをする。
 ○ 絵を見て7+8になる問題を作りましょう。①
 ○ おはなし(文)は、いくつあったら良いでしょうか

3.できた問題を発表する
 ○ どんなことばでたしざんになるのかな

4.7+8になる問題を作る ②

 ここにりんごが7こしかありません。でも7+8にするには、りんごをどうしたらよいでしょう。

5.出来た問題を発表する

6.①と②の問題は、どこが違うのでしょう。
  ①は、ここにあるものをいっしょにした
  ②は、かってきてふえた
 ○ 両方ともたしざんになるときですね。でも、これだけで、たしざんにきめることができるかな

7.P72.⑤

 ○ ありの絵は、①と②のどちらでしょう。

 T先生の授業の構成は、最初にどの子供でも答えられるような多様な発問をしている。

発問1:

絵を見て7+8になる問題を作りましょう。①

 7+8だから、どの子も考えられる。発表もできる。授業に参加できるようになっている。
 次に①と異なる視点から、次の発問をした。

発問2:

ここにりんごが7こしかありません。でも7+8にするには、りんごをどうしたらよいでしょう。②

 ①では同時合併、②では追加合併をねらった問題作りである。①と②の発問は、いずれも多様な考えがでる拡散的発問である。広がりのある発問である。これを最初に行うと授業は盛り上がる。
 T先生の見事なのは、次の発問である。

発問3:

①と②の問題は、どこが違うのでしょう。

 「どこが違うのでしょう。」と聞くと、内容が絞られてくる。多様な答えから一般化を図る発問である。こういう発問を集中的発問という。
 答が限られてくるので、討論がしやすい。集団思考が出来やすくなる。
 意見が対立し、それぞれの立場で意見を発表し合う。お互いの考えを練り合う中で、思考が深まっていく。集団でないと出来ない学習である。
 1年生でありながら、自分の考えを出し合い討論のある授業であった。

5.競争化する

 第四には、競争化である。一人で作業や活動をするよりも集団で競争をしながら行ったほうが効率が上がる。集団の中での競争、集団と集団との競争などがある。
 ゲームの楽しさは、競争の楽しさである。仲間と競い合う中で力が高まり、ゲームも楽しくなる。
 3年生の体育の学習で鉄棒遊びを行った。鉄棒遊びは、個人種目である。自分一人で出来るようにしていく。
 個人種目であるからといって、個人に任せておいたのでは上達しない。個別化の場を設定して、個別に練習させておいても上手にはなっていかない。
 子供が自己の力を発揮するには、集団の学習に組織することである。
 3年生で鉄棒の連続遊びを行った。連続遊びを行うには単技を出来るようにすることが最初である。単技ができなければ、連続にはつながらない。
 楽しく単技を出来るようにするには、集団での競争化を行っていく。自分一人だけの練習ではなく、仲間とのかかわりあいを作っていく。集団の中で力や技を伸ばしていくのである。
 筑波大学付属小学校の林恒明氏は、逆上がりの指導で「逆上リレー」を行っている。
 チームを作って、逆上がりのリレ-を行うのである。一人が逆上がりをしたら走ってきて、次の人にタッチをしていく。早く終わったチームが勝ちである。
 逆上がりの出来ない子供は、足ぬき回りでもよい。チームにして逆上がり競争をしていくと、仲間とのかかわりが出来てくる。
 何故なら、逆上がりの出来ない子供がいるチームでは、教え合いが始まるからである。出来ない子供に対しての助言や励まし、補助などが行われていく。
 個人種目であるので、ややもすると出来ない子供は練習しない。出来る子供の練習量は多くなるので、個人差が広がっていく。
 逆上がりリレ-にすると、仲間意識が強くなり、友達との関係も深くなる。チームのためにがんばろうとして、逆上がりの練習にも力が入る。
 ゲームで仲間とのかかわりを作り、競争化することによって子供の力は伸びていく。

6.陥りやすい問題点

 集団で学ぶよさは多いが、逆に陥りやすい問題点も見られる。
 指導者は、常に問題点を意識しながら指導していくことが必要である。

 1.時間がかかり、非能率的である。
 2.人数が多いと、参加者が一部になる。
 3.競争で失敗を重ねていると、攻撃の対象になる。
 4.成功をおめた者は優越感を味わい、他への思いやりが欠ける。

 集団作りがうまくなされている場合には、時間も短く効率的に作業や活動がなされる。
 ところが、リーダーがいなかったり十分にグループをまとめきれない時には、時間がかかり能率が上がらない。
 役割を決め、それぞれの責任を果たすように指導していくことが大事である。
 富田分校のおみこし作りは、4年生がリーダーになりまとめていた。毎年行っているため、4年生のリーダーはおみこし作りの手順、方法を良く知っていた。
 そうでない場合には、事前に教師が指導しておき、作っている間も助言していくことが必要である。
 遊びを教えてもらったり、算数の授業などで人数が多いと、参加者が一部になる危険性がある。
 力のある者が全面にでて、力からの弱い者は傍観者になってしまう場合がある。
 集団の全員が参加できるような工夫をしていくこが大事になってくる。一部の子供だけが活躍し、自己実現している集団ではいけない。
 競争を強めていくと、失敗を重ねている子供を攻撃するようになる。何回やっても勝てないと、力の弱い子供をいじめたり攻撃したりする。
 逆に、成功をおめた者は優越感を味わい、他への思いやりに欠けていく。
 問題点を克服しながら、集団で学ぶよさを生かした指導をおこない、子供が自主的に活動できるようにしていくことが重要である。


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