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TOSSランドNo: 1216151 更新:2013年01月02日

西田幸二氏の開脚跳びの指導


1.開脚跳びの原理

 跳び箱運動で最初に跳び越す達成感を味わうのは、開脚跳びである。跳び箱を跳び越えた時の達成感は、何ともいえない喜びである。
 向山洋一氏が提唱した腕を支点とした体重移動の実践は、多くの跳べない子供にとって効果的であった。
 基礎技能が十分に育っていなくても、体重移動を体感させるだけで跳べるようになったからである。
 「またぎ越し」ではあるがそれでも跳び箱を自力で跳び越えられた自信と喜びは大きい。  
 専門的には、跳び箱運動の原理は「腕支持と突き放し」である。「腕を支点とした体重移動」と「腕支持と突き放し」とでは、どこが違うのであろうか。跳び箱運動の原理を考える時に重要なポイントである。
 筑波大学の高橋健夫氏は開脚跳びの中核的技術は、切り返しによって一瞬体が空中に浮くことだと述べている。
 向山氏の腕を支点とした体重移動でもこの技術は可能である。しかし、やっと跳び越せた子供の動きは、最初から最後まで跳び箱に手が着いたままである。
 またぎ越しでは、空中に体が投げ出される瞬間がないのである。跳び箱が跳べる最初の段階である。
 それに対して腕支持と突き放しでは着手したあと、突き放しによって動きの切り返しが行われる。その結果、空中への投げ出しがはかられる。
 跳べない子供が上達していくステップとしては、腕を支点とした体重移動を体験した後に、腕支持と突き放しの動きを身につけていくようにする。
 跳べない子供にいきなり「腕支持と突き放し」を練習させるのではなく、「腕を支点とした体重移動」を練習させる。跳ぶ成功感を体験させた後、腕支持と突き放しによって、空中に体が投げ出された動きが出来るようにしていくのである。

2.開脚跳びの習熟過程

 西田幸二氏は開脚跳びの習熟過程にそった実践をされている。開脚跳びに必要な基礎感覚作り、基礎技能作り、運動課題作りの流れで指導を行っている。

(1) 開脚跳びに必要な基礎感覚作り

 基礎感覚作りの中では逆さ感覚、高さ感覚、平衡感覚が必要になる。
 中でも逆さ感覚がないと跳び越せない。いきなり跳び箱で練習させてもこれらの感覚は出来ない。
 1~2年生の間に足打ち跳び、壁逆立ちなどの動き作りをしておく。手で体を支え逆さになっても動けるようにする。
 あるいは固定施設を使って高いところでも動けるようにする。開脚跳びは跳び箱という高いところを跳び越える運動である。
 ジャングルジム、登り棒、うんていなどの運動は高いところでの動き作りであり、腕で体を支える物である。
 これらの感覚作りは低学年のうちがもっとも伸びる。基本の運動の中で身につけさせていく。

(2) 開脚跳びに必要な基礎技能作り

 基礎技能作りとしては、うさぎ跳び、タイヤ跳び、馬跳びがある。開脚跳びの下位教材である。遊びの中でタイヤ跳びや馬跳びの経験のある子供は、開脚跳びがすぐに出来る。
 腕を支点とした体重移動が習熟しているからである。強い突き放しがなくても跳び越えることが出来る。
 ここで大切なのは、腕で体を支えるということである。体重が両腕にかかる感じをしっかりつかませることである。そして肩が着手よりも前に出るようにする。タイヤ跳びは横からも縦からも跳べるようにする。
 腕支持と突き放しを身につける動き作りは、うさぎ跳びである。うさぎ跳びは、足-手-足の順番に行う。床に着手したあと突き放し、足が着地する時には手は床から離れていなければならない。
 またぎ越しの場合は、最初から最後まで手が着いたままで離れていない。これを直すには、うさぎ跳びで「両足が床に着く時には、手を離しなさい」と指導する。
 うさぎ跳びが出来るようになったら、馬跳びを練習する。馬跳びは、「板目馬跳び」を練習する。
 板目馬跳びは2人一組になって馬跳びをし跳び越して着地した時の板目を数える。2人一組で行い、多くの板目を跳び越したほうの勝ちとする。
 遠くに跳ぶためには突き放しが必要になるので、腕支持と突き放しの中核的技術が習得出来る。このような段階的な指導を行うことによって、基礎技能が付いていく。

(3) 跳び箱での開脚跳び

 基礎技能が十分習熟した後に、跳び箱で開脚跳びを行う。
 跳び箱は低いほうが良いだろうと考えるがそうではない。身長によって適切な高さがある。低すぎても跳べないし高すぎても跳びにくい。腕支持と突き放しが一番良く出来る高さで練習することが大切である。
 1~2回跳べると高い跳び箱に次々に挑戦させるのではなく、ちょうどよい高さで腕支持と突き放しを完全に習熟するまで練習させる。
 またぎ越しから入って、体が空中に投げ出される動きが出来るようにする。そのためには、高さへの挑戦ではなく踏み切り位置を遠くしていく練習が重要である。
 遠くから跳ぶためには着手した後、強く突き放しをしなければならない。板目馬跳びの原理と同じである。適切な跳び箱で正しい開脚跳びが出来るようになったら、少しずつ高さに挑戦していく。
 動きが崩れずに、いつでも跳べるようになったら完全に習熟したといえる。教師は子供の跳ぶ姿を見て、習熟過程のどの動きの段階かを見抜いて指導の手を差しのべていくことがポイントである。

3.開脚跳びのつまずきと指導方法

(1)助走・踏み切りのつまずきと指導

 跳び箱を跳ぶ時に助走がゆるみ、踏み切りで止まる原因には、次の二つが考えられる。

 1.跳び箱の高さが恐くて、ゆるんでしまう。
 2.踏み切りへ入る助走のリズム悪く、ゆるんでしまう。

 一つは、跳び箱の高さが恐いためである。遠くにいる時にはさほど恐くないのであるが、目の前に立ちと恐くなり、立ち止まってしまう。
 解決の方法としては、跳び箱の高さを徐々に高くしていくことである。低い跳び箱で十分に跳ばせた後、高い跳び箱に挑戦させる。
 その時、着地のところにマットを何枚か重ねておいて、安心感を持たせる。子供が恐怖心を持つのは、着地が見えないためである。
 二つめは、踏み切りへの助走のリズムが悪いためである。踏み切り板に入る一歩前が狭いと跳び箱の手前に両足が着いて、踏み切れない。
 踏み切り板に入る一歩前が広くなるように、踏み切りまでの助走のリズムを指導していく。
 方法としては、子供の片手を持って一緒に走る。そして、踏み切り板に入る一歩前の歩幅が広くなるように、手で合図をしてあげるようにする。踏み切りに入るタイミングが分かれば、スムーズに跳べるようになる。

(2)突き放しのつまずきと指導

 開脚跳びのつまずきの大部分は突き放しができないことである。つまり、腕を支点とした体重の移動ができない。
 向山型A式とB式によって体感させていく。ポイントは次のようである。

 ○ 肩を前に突き出すようにする。
 ○ 腕を支点とした体重移動をする。

 跳び箱に腰をかけて、両腕に体重がかかるようにして跳び下りる。そのときに肩を前に突き出すようにする。
 跳べない子供は腕を支点とした体重移動ができないために、肩が前にいかない。体重が前に移動しないので跳び越せないのである。
 体重移動を体感させるには跳び箱にまたがり、両腕でしっかりと体を支え跳び箱を突き放す練習をする。それが向山型A式である。それでもできない子供には腕と股を持って補助する向山型B式で行う。ほとんどの子供は跳び越せるようになる。

4.発展学習と補充学習

(1)集団跳び箱による発展学習

 発展学習として、西田氏は集団跳び箱を紹介している。跳び箱運動は個人で行う種目である。グループでの教え合いはあるが、出来るかどうかは個人の問題にる。
 出来る子供は自分の目当てに向かってどんどん練習できるが、できない子供にとっては、同じ種目の練習になり技の進歩が見られない。
 また、助け合いや教え合い学習の大切さが強調されているわりには、グル-プ学習も深まらない。
 筑波大学の高橋健夫氏は、開脚跳びを連続で跳ぶ方法を提唱している。一人で一台の跳び箱を跳んで終わりではなく、何人かで連続して跳んでいくのである。
 4~5台の跳び箱を5~6人で連続して跳んでいく。そうすると、一人が失敗すると後が続かなくなるので、全員が緊張して跳び越すようになる。
 上手に跳べなない子供も全体に合わせることによって、リズムカルな跳び方が出来るようになる。一度に4~5台跳ぶのであるから、運動量も多くなり上達も早くなる。
 一人で跳んでいた時よりも、集団でリズムカルに跳んでいく楽しさを味わうことができる。
 一つのグループで出来るようになったら、いくつかのグループで一緒に跳んでいくようにする。クラス全員で跳ぶことができ、クラスの一体感、連帯感も出来ていく。

(2)タイヤ跳び、馬跳び、平行棒による補充学習

 開脚跳びのできない子供に共通しているのは、基礎感覚、基礎技能が十分に身に付いていないことである。そのために、補充学習として次のような動き作りをしていく。

 ① かえる倒立
 ② うさぎ跳び
 ③ 固定施設から跳びおりる
 ④ タイヤ跳び
 ⑤ 馬跳び

 中でも大切なのは、うさぎ跳び、タイヤ跳び、馬跳びである。これらの動きによって、開脚跳びが出来るために必要な腕を支点とした体重移動と突き放しが体感出来る。
 基本の運動の中でこれらの基礎技能作りを行っていけば、子供は自然に開脚跳びが出来るようになっていく。
 特に大切なのは、うさぎ跳びである。うさぎ跳びは、足で蹴って着手し、両足で着地する動きである。このうさぎ跳びの運動構造は、開脚跳びや抱え込み跳びの運動構造と同じである。
 跳び箱運動も両足で踏み切り、そのあと着手してから突き放して両足で着地する。
 うさぎ跳びは床で行なうだけである。だから、うさぎ跳びができれば跳び箱運動も簡単にできる。
 跳び箱運動に必要な基礎技能が習得できるのである。いきなり、開脚跳びや抱え込み跳びを行なうのではなく、うさぎ跳びをできるようにしてから行なっていく。
 うさぎ跳びは平面の動きである。いきなり跳び箱にいくのではなく、タイヤ跳びや馬跳びの練習を行なう。
 西田氏は跳べない子供の補充指導として、馬跳び、タイヤ跳び、平行棒の指導を紹介している。
 馬跳び、タイヤ跳びは、高さのあるところでうさぎ跳びを行なうのである。タイヤ跳びや馬跳びはまたぎ越しではあるが、障害を跳び越すという動きづくりができる。
 高いところでも跳び越せたという体験が跳び箱運動につながっていく。
 このような跳び箱運動につながる基礎感覚・基礎技能づくりを行う中で、跳び箱が跳べるようになっていく。
 全員跳び箱が跳べるようにしていってほしい。


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