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TOSSランドNo: 9797047 更新:2013年01月01日

アートで脳をきたえる


1.主張
アート作品を作る時や自分で作った作品を見る時に、自分の脳がどのように使われたのかを知る授業を提案する。

2.脳科学とは
 「脳科学」とは、「神経系学」の俗語である。
 神経系は神経細胞のネットワークとそれをサポートする細胞群(グリア細胞など)から成る。神経細胞はその集合として機能的な回路を形成しており、個々の回路は個体の行動やふるまいに必要な特定の機能を担うと考えられている。このため、神経科学は様々な異なるレベルでの研究が可能である。
 分子レベルにおける神経科学の研究対象には、個々の細胞がどのように分子シグナルを発現しまた反応するか、あるいはどのような分子シグナルによって軸索がその複雑な接続パターンを形成するか、などがある。このレベルでは、分子生物学や遺伝学に由来する研究手法が応用され、神経細胞がどのように発達し死んでいくか、遺伝子の発現がどのように細胞の生物的な機能に影響するのかが調べられている。
 杉谷英広氏に検定授業を見てもらう機会があった。その際、脳科学を深く学ぶこと、酒井式と脳科学の関係について学ぶこと、アート作品と脳科学について学ぶことを教えてもらった。以下に学びを記す。

3.林成之教授の「脳を鍛える10の方法」と、酒井式描画指導法との関係について
 以下の表にまとめた。「長い長いへび」の指導について考えただけでも、酒井式描画指導法には、脳を鍛えるパーツが山のように盛り込まれていることがわかる。
林成之教授「脳を鍛える10の方法」 酒井式描画指導法「長い長いへび」との関係
①物事に興味を持ち、好きになる力をつける。 ・失敗しても「よしとする」
②人の話を感動して聞く。 ・友達や先生が「○○なところがいいね」と言った時に、「すごいなぁ。自分もやってみよう」と感動して取り組む。
③損得を抜きにして、全力投球する素直な性格を育む。 ・「かたつむりの線」と言われたら、最初から最後まで「かたつむりの線」でがんばった子はほめられる。
④「無理」「大変」「できない」など否定的なことを言わない。 ・「できない」→「よしとする」
 失敗を模様に生かす。
⑤目標に向かって一気に駆け上がる。 ・頭としっぽを先に描くことで、ゴールが明確になる。だから、ゴール(=目標)に向かって一気に描くことができる。
⑥「だいたいわかった」などと物事を中途半端にしない。 ・しっぽを最初に描いておくことで、途中で諦めることなく、体をしっぽまでつなげることができる。
⑦重要なことは復習し、繰り返し考える。 ・何度も繰り返し体をループさせるうちに、違うまき方ができないかを考えるようになる。
⑧自分のミスや失敗を認める。 ・失敗しても「よしとする」
 失敗を模様に変える。
⑨人を尊敬する力をつける。 ・いい作品を見て「すごい」
 →「自分もやってみよう」
 誰でも尊敬される可能性がある。人と違うことが良いと認められる。
⑩‘類似問題’で判断を磨く。 ・局面限定の中での工夫

4.前頭葉を鍛える方法
 向山洋一氏は「前頭葉を鍛える教科が、学校教育にはない」(文責:和田)と主張している。唯一あるならば、「向山型パーティー」であると考えられる。
さらに前頭葉を鍛える方法がないかと調べた結果を以下にまとめる。
①お手玉
同時に複数の事を行うのは前頭葉の働きで、お手玉は数を多くしてやればやるほど効果がある。また、右利きの人は普通右周りでやるのだが、慣れてきたら左周りにも挑戦する事でさらに鍛える効果がある。
②けん玉 空間認識力を鍛える効果がある。またいろんな技があるので、これだけでかなり前頭葉トレーニングになる。
③音読 一番手軽に前頭葉を鍛える方法として期待されている。なるべく速く読むほうが効果的である。
④簡単な計算問題を解く 脳派の計測で科学的に難しい問題に取り組むより、簡単な計算問題を解いている時の方が前頭葉や脳全体をより活発に使っている事が証明されたようだ。おそらくは集中して速く問題を解くというのが鍵ではないかと予想する。無計画に計算問題を解くのではなく速く計算問題を解く事で効果があるといわれている。
⑤新しいことに挑戦する 前頭葉は新しい環境、新しい物事に挑戦するときによく使用される。ただし、慣れてくると前頭葉は段々使われなくなってしまうので、継続的に前頭葉を鍛えるなら頻繁に新しい事に挑戦する必要がある。
 とりわけ【⑤新しいことに挑戦する】の部分が、酒井式描画指導と強くリンクしていると考えられる。常に作品を作る時には、子どもたちは新しいこととの出会いを繰り返す。その時に、「だめだ」「できない」と否定的な言葉を使うのではなく、「よしとする」「ふんぎる」「生かす」の前向きな言葉の元、作品を作ることで、脳も活性化されると考える。
 このような点から、脳科学的に酒井式描画指導法は良い指導法であると考える。

6.認知と創造力の関係について
(1)前頭葉のはたらき
右のマッチ棒を一本だけ動かして、正しい数式にするという問題がある。「カルロ・レヴェルベリの魔法のマッチ」と呼ばれているものだ。
 ほとんどの人は、3問のうちレベルⅢよりレベルⅠとレベルⅡの問題の方が上手く解けるはずである。しかし、前頭葉にケガをしたり病気による損傷を受けた患者さんは、正反対のことがあてはまる。つまり、レベルⅠとレベルⅡは、正常な前頭葉の人に後れを取るが、レベルⅢの問題では、常に上回っている。
 実験結果では、レベルⅢの問題を解くことができたのは、

であった。前頭葉外側が、自分の一番よく知っている側面によせる機能を持っているからである。健康な前頭葉は、+-=の変更よりも、数字の方により一層注意を向ける特徴がある。

(2)人間の行為による脳の成長の関係
人間の行為 脳のきたえられる場所
①計画を立てる。
②シュミレーションする。
③決定する。
④評価する。 前頭葉
①ジョークを聞いているとき。
②導入のおしゃべりと最後のオチを相関させた瞬間。
③物語を読む。
④特有の事件や一連の出来事を言葉で描写しようと考える。
⑤突然のひらめき。 前側頭葉
①なぞなぞを最初に読んで思案する間。 外側前頭前
後部頭頂
帯状
前側頭葉

(3)アンビグラム(さかさま文字)による脳への影響
「NOON」「SWIMS」という英単語をさかさまにしても対称で、同じように読むことができる。これをアンビグラムという。
 アンビグラムを自分でデザインする時の脳の成長は以下と考えられる。
前頭葉
①計画を立てる。
②シュミレーションする。
③決定する。
前側頭葉
⑤突然のひらめき。
 右図は、子どもたちの作品の一部である。
子どもたちは何度も何度も紙を回しながら、
上下さかさまにしても同じように読めるかど
うか、デザインが完璧に対称になっているか
どうかを確かめながら作品作りを進めていた。
この時、脳が活性化していると推定できる。

5.脳科学と水川勝利氏について
 NPOTOSSの水川勝利氏が、小学校時代に総理大臣賞を何度も取ったという話はあまりにも有名な話だ。向山洋一氏も水川氏の才能を高く評価している。彼は、東京芸術大学に現役で合格した。その根本は、幼少期からの彼の作品への取り組み方にあると考えられる。
 右の作品は、水川氏が小学校時代に制作した「五重塔」である。注目すべきは、左側の五重塔である。通常、10個の飾りがあるのだが、左側は17個もある。水川氏は、飾りの数を見間違えたのだろうか?それとも、何らかの意図があって数を変えたのだろうか?
 正解は後者である。向山氏は言う。「水川に聞いたら、わざとだって。10個にしたら、バランスが悪いんだって。」(文責:和田)
水川氏の作品は、林成之教授の
【⑤目標に向かって一気に駆け上がる。】
【⑥「だいたいわかった」などと物事を中途半端にしない。】
という部分を大きく満たしていると考えられる。
 水川氏の子育ては、脳科学を強く意識していると感じられる部分が多数ある。ほめてほめてほめること。決して水川氏は子どもを叱らない。やりたいことをやりたいようにさせている。否定することがない。水川氏の子どもさんは、伸び伸びと育っている。自分の人生の中で培ってきた上達論を、今度は自分の子どもさんに伝承しているのだろう。今後、水川氏の子育てについてもさらに深く検証したい。

6.単元構成(全3時間)
第1・2時 「長い長いへび」を描く
第3時   アンビグラム―さかさま文字―を書く
第4時   アート作品と脳の関係について知る(本時)

7.本時の学習内容
(1)対象 小学4年生
(2)授業の流れ
発問 どちらの写真が男の人に見えますか?
発問 どちらのモナリザが笑っているように見えますか?
発問 どの富士山が本物に近い形ですか?
説明 脳は、半分しか見ていないのです。
   私たちが見たものを判断するのは、左側の視野なのです。
説明 富士山を描きなさいと言われたら、ほとんどの人が1番か2番を描きます。
   脳の中で「日本一高い山」ということを誇張されているのです。
説明 脳をきたえるお勉強をします。
指示 さかさから見ても「USA」になるようにデザインしなさい。
指示 おとなり近所で見せ合いなさい。
説明 「計画を立てる」「シュミレーションする」「決定する」
   前頭葉がきたえられます。
説明 「突然のひらめき」
   前側頭葉がきたえられます。
説明 「長い長いへび」のお勉強をしました。
説明 アートで脳をきたえましょう。

8.参考引用文献
「脳科学の知見」に基づく酒井式描画法の進め方/柏木英樹・山川直樹編著/明治図書
子どもの才能は3歳、7歳、10歳で決まる!/林成之/幻冬舎新書
脳に悪い7つの習慣/林成之/幻冬舎新書
脳の力大研究 人生を豊かにする脳活用法/林成之/産経新聞社の本
別冊宝島 林成之教授の子どもの才能が決まる!0歳から10歳までの脳づくり/林成之/宝島社
遊ぶ脳みそ/リチャード・レスタック スコット・キム/日本経済新聞出版社
単純な脳、複雑な「私」/池谷裕二/毎日出版社
酒井式描画指導法入門/酒井臣吾著/明治図書
シナリオ 酒井式描画指導法/酒井臣吾著/明治図書
第11期教育技術の法則化113誰でもできる酒井式描画指導・分析批評/編集代表向山洋一/明治図書
‘活動主義の授業’はなぜダメか/酒井臣吾・野口芳宏・庭野三省編著/明治図書
脳は美をいかに感じるか―ピカソやモネが感じた世界/セミール ゼキ著/日本経済新聞社
私の中の自由な美術 鑑賞教育で育む力/上野行一/光村図書
脳にいいこと、悪いこと/生田哲/Softbank Creative
ゆらぐ脳/池谷裕二 木村俊介/文藝春秋
海馬/池谷裕二 糸井重里著/新潮文庫


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