TOSSランド

コンテンツ登録数
(2019/09/21 現在)

21653
TOSS子どもランド TOSSオリジナル教材 TOSS動画ランド TOSSメディア TOSS-SNS TOSS公式(オフィシャル)サイト
TOSS子どもランド
TOSSランドアーカイブ
TOSSランドNo: 2320668 更新:2013年01月01日

問題行動の原因を探る


1.友達と遊びたい

 2年生のT男の母親が夜の6時過ぎに職員室にやってきた。
 「先生、T男がまだ家に帰ってこないんです。どこにいったのでしょうか」と入ってくるなり言った。
 どこへ行ったと言われても私にも分からない。T男は時々家に帰らないことがある。時間がたつと結局帰るのだが、母親はそれがまちきれないで学校に来る。
 9時前に電話すると母親が出て「帰ってきました」という返事があった。
 「どこへ行っていましたか」
 「友達のM君の家に行って、今日は家に誰もいないので泊めてほしいと言ってご飯まで食べたそうです。学級連絡網で一件一件かけていったところ、M君の家にいることが分かりました」
 すぐに母親が迎えに行き、連れ帰ったという。電話で様子を聞き安心した。無断で友達の家に泊まるというのは異常である。
 次の日に母親と子供を呼んで事情を聞いた。T男は神妙にしていた。家に帰らないのは悪いというのは、百も承知である。それでも帰らないのである。
 よほど母親への不信が強いのであろう。帰らない時には、母親との間に何かトラブルがあった。
 なぜ問題行動は繰り返されるのか。
 子供の不満が解消されないからである。子供は自由に遊びたいのである。母親は病弱なことを理由に、家に帰ると遊びに出さなかった。
 友達と遊びたいT男は、何度怒られても母親との約束を破り、学校から帰らないで遊びに行ってしまった。

2.スイミングスクールに行きたくない

 5時過ぎ、4年生の母親から電話があった。子供が帰ってこないとよく電話をかけてくる母親である。
 「まだ子供が家に帰ってこないんです。祖父が家で待っているのですが、まだ帰っていないと職場に電話がありました。学校にはいないでしょうか」
 「担任の先生に連絡してみましょう」といって聞いてみたが、教室には誰もいないという返事であった。
 すぐに家の近くの商店街に行った。
 「A男君が家に帰って来ないと言うんですが、誰か見た人はいますか」
 「私は知りません。見ていません」という声がした。
 1年生のKちゃんが「銀行の近くの草原でバッタ取りをしていたA君を見ました」と言ってくれた。
 「そこに案内してくれる?」
 自転車に乗ってさっそく行ってみたが、人影はなかった。近くを自転車で回ってみたが手がかりが全然ない。
 「Kちゃん、A男君のお家知っている?」
 「知っています。そこを上がっていった3階です」
 「そう、案内してくれるかな」
 Kちゃんは走りながら階段を上がっていった。3階に行くとおじいさんが顔を出してくれた。帰って来ないということでおろおろとしている。
 ちょうど担任の先生から電話が入っているところであった。こちらの事情を話して、友達の家に電話をすることにした。
 連絡網で分担して一人一人かけていった。最後に別れたF君に詳しく聞いたが家の前で別れたと言う。
 6時10分前、母親が帰ってきた。
 「お母さん、心あたりはありませんか?」
 「はい、ありません」
 「そうですか。心当たりはありませんか」
 「そういえば今日はプールに行く日でした。電話をしてみます」
 近くにスイミングスクールがあるという。母親が電話をすると来ていないという。
 「お母さん、A男君が帰ってこないのは何曜日ですか」
 「そう言えば、水曜日が多いですね」
 「今日も水曜日ですね。A君はスイミングスクールが嫌いなのではありませんか。行くのがいやなので、遅くなるのではありませんか」
 「そうかもしれません」
 問題行動が繰り返されたのは、子供の欲求不満のためである。
 行きたくないという不満が、家に帰らないという問題行動を引き起こしていたのである。
 運動の得意でないA男にとって、スイミングスクールは苦痛だったのである。遅く帰るということで、無言の抵抗をしていたのである。

3.問題行動の原因を発見する

 T男もA男も何度も問題行動を起こしている。子供は家に帰らないことで、不満を表明していた。
 家に帰らないという行動で、親にサインを送っていたのである。
 だから、きつく叱ると逆効果である。理屈で悪いことは承知なのである。悪いことだいうことは、親からも担任からも何度も言われている。
 それでも繰り返すのである。理屈ではない。子供の情動が問題行動に駆り立てていたのである。
 親の論理で理屈を話しても子供は変わらない。子供の情に訴えて行かなければ子供は動かない。
 子供がどうしてほしいのかを理解してあげるのである。
 「T男君、君は友達と遊びたいんだね」と聞くと「うん」とうなづいた。
 子供の気持ちを察し、「遊びたいんだね」と言った瞬間、子供の表情が変わり、信頼の目つきになった。
 子供は誰かに切ない気持ちを理解して欲しかったのである。誰でもいい。自分の気持ちを理解してもらえたかったのである。
 「お母さん、遊ばせてあげましょう。帰る時刻を決めて、友達と遊ばせてあげてください」
 母親は渋々承知した。問題行動を起こしていた理由が分かったのである。
 それ以来、T男は家に帰るようになった。A男のは親にも同じように話した。子供の不満を取り除かない限り、問題行動は続く。
 教師はそれに気づき、対処していくことが必要である。

4.励まし続けることが教師の仕事

 作家協会員の芝修一氏にお会いし、話を聞く機会があった。聞くところによると、すでに1200本程の脚本を書かれていると言う。
 代表的な作品には、「若者たち」「これが青春だ」「水戸黄門」「中学生日記」などがあり、NHKの仕事も多数されているとのことである。
 「根本先生、教師はどんなにつらいことがあっても、人生は素晴らしいと元気づけていかなければいけません」と話された。
 「私はたくさんの脚本を書いてきましたが、その根底には全て、人生は生きるに価するということを述べてきました」と言って、生活ヒントマガジン『プロセデ』19号を手渡してくれた。
 芝修一氏は『プロセデ』の編集長である。巻頭提言で「勇気と指針を示してくれる“師”の大切さ」について書かれていた。
 読み始めると思わず引き込まれた。師の大切さを述べられている。芝氏の師は作家の森敦氏であるという。
 「一流芸術の根底を成す『励ます力』」という小見出しで森氏の言葉を紹介している。

 「芝君、小説というのは人間の苦悩やら惨状やらを書きながらも、読む人にたえず生きる力というか活力を与えるところがそなわっていなくては良い小説とは言えないのです」と言った。そして「君はドラマを書く時、根底におくものはなんです」と聞いた。
 「そうですねえ、どんな悲しい話でもその根底には絶えず、それでもこの社会は人が生きてゆく価値のあるところだという考えを見る人に伝えたい気持ちはありますねえ。
 例えば“男というものは死ぬことはあっても絶対に負けないんだ”という台詞はいつか言わせてみたいと思っていますね」と、答えると、「そうでしょう。良いドラマだの良い小説だのというのは人を一生懸命元気づけることがその根底となっているんですよ」

 私はこの言葉を読んで感銘した。即座に「良い教育だの良い教師だのというのは子供を一生懸命元気づけることがその根底となっているんですよ」と言い換えた。
 T男やA男の問題行動を解決するのはさほど難しくない。
 しかし、簡単に解決できないこともある。教師や学校の力ではどうしようもない時がある。
 そんな時、芝氏の「人生は生きるに価する」ことを話し、励まし続けることである。
 誰かが自分を見つめていてくれる、心配してくれていることを実感出来れば、立ち直れる。
 問題行動の繰り返される原因を探り、それに対応していくことが大切である。


0回すごい!ボタンが押されました

コメント

※コメントを書き込むためには、ログインをお願いします。
New TOSSランド